菊と刀: 定訳 (現代教養文庫 A 501)

  • 社会思想社
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784390105002

感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦終戦のアメリカ政府が対日戦争をどのように終結させるべきかを検討するべく、1944年に文化人類学者である作者に日本文化研究を依頼した研究内容。

    1.「物事は比較でしかその輪郭を正しく捉えることができない」
    戦時中の為研究対象への接触が難しい状況にあったにも関わらず、これ程の深い分析が出来た作者の研究能力が素晴らしい。
    日本軍捕虜や在米日本人という限られた情報や彼らの反応をもとに、歴史的文化的経緯から中国や西洋各国と比較することで、日本人である自分でも言語化できなかった気付かなかった習性や思考についてまで、より深い分析が可能になっている。
    この本を通して最も学んだことは、「物事はその中だけ知るのではなく、外も含めて他と比較することで始めて、その輪郭を正しく捉え正しく評価することができる」ということに尽きる。

    2.作者の一貫したニュートラルな視点
    当時日本は、アメリカからすれば戦争敵国であり文化的に劣っている国で、見下したり馬鹿にするような思考があって然るべき時代である。
    にも関わらず、作者の文章を見る限り、徹底して日本文化に尊重を置きつつニュートラルな視点で分析している。
    見下したニュアンスを少しも感じないのである。これはすごいことだと思う。
    このことから、何かを適切に評価し対処法を検討するには、常にその対象に対して誠実に、そしてフラットな視点で臨むべきである、ということを痛感した。

  • 留学中に読んだ、日本人として日本を客観視できる本。

  • 所々、間違った方向へ展開していっている部分もあるけれど、おおむね興味深い内容だった。
    戦後すぐぐらいまでの日本人的思考が良く考察されていると思う。恩や義理について、そこまで深く追求してみたことは無かったけれど、言われてみれば確かにそうだ、と首肯する内容だった。
    日本人として日本で生きていると、日本人的思考を当たり前のものとしてしまう傾向があるけれど、世界を見渡せば、日本人的思考は奇異でしかない文化もあるわけで、それは逆に、日本人にとって奇異に映る文化もあり、その差異を確認して、言葉で理解するよう努めることは大切なことだと思った。

  • 久しぶりに長い、とにかく長い、果てしなく長い本であった。

    文庫本サイズで400ページだからまあすぐ読めるだろと思って手にとってみたのだが内容が非常に濃かったためになかなかの文量に感じてしまった。

    元々、第二次世界大戦中にアメリカが「終戦後の日本統治の方法を考える」ということで文化人類学者に日本人・日本研究をさせたことが発端となって生まれた本書。俺個人の印象だが、天皇の戦争責任を問わなかったという歴史上実はものすごい出来事に対して大いにこの研究が参考にされたのではないかと思う。

    以下、読んでいて面白かったところ

    ・アメリカが物質の国であるのに対し、日本は精神の国である。アメリカとの圧倒的な物量差があったのに、戦争しかけてきたことに対する日本人一般の考えは「物量差が凄いのは前からわかってたこと。そんなの言い訳にならん。日本男子たる者、気合と根性があれば物量差なんてどうにでもなるでしょ?」筆者いわく「こんなことを割りとマジで日本人が本気で考えていたってことが凄い」

    ・自らの命を賭してまでアメリカと戦ったのに、終戦後は普通に笑顔でアメリカ人を迎えるという変わり身の速さ。基本天皇の言うことなら何でも聞くというスタンスで良くも悪くも主体性皆無。アメリカ兵いわく「歓迎されすぎてなんか逆に怖い」

    ・恩とか義理とか義務とかめっちゃ尊重する。恩に対する義理のために死ぬとかアメリカじゃ考えられん。

    ・日本人どいつもこいつも手淫し過ぎ。マジ、こいつら週平均何回手淫してんだよってくらい手淫してる。日本人の手淫のレパートリーと手淫専用道具の豊富さは西洋諸国とは比較にならない。

    ・アメリカは子供の頃のしつけが厳しくて、大人になるにつれて自由度が増していき、また老人になると若人にその座を譲らなくちゃいけないという社会だが、日本では子供時代と老人時代が人生における自由さが最高に達し、青年・中年時代が恩・義理・義務にがんじがらめにされて全く自由がないという珍しい社会。

    これに対する学者(日本人)の解説文
    第二次世界大戦中、日本は自国にとって都合の良い情報だけを流し、「鬼畜米英」なんて小学生並みの悪口言いながらアメリカと戦っていたのと同時期に、アメリカでは「対日戦はまあ勝つとして、どうやって統治するのが日本人気質・日本文化を考えた時に有効か」ということをここまで深く研究して考えていた。この圧倒的な考え方の差について日本人はもっと自分たちの言動を見つめなおさなくてはならない(戒め)

    結構難しい部分も多々あったが、上記に書いてあるとおり、戦後すぐに出版したとは思えないくらい(確か『菊と刀』が出たのは1947年)、日本社会・日本文化・日本人というものを鋭く捉えていて、今の日本人にもほぼほぼ当てはまるという凄さ。

    ちなみに筆者ベネディクトは生涯で一度も日本を訪れたことはない(驚愕)

  •  文化人類学の大家ルース・ベネディクトが戦争直後にそれまでの日本人のメンタリティについてまとめあげた超有名作。彼女の日本人観はGHQ日本政策にも大きな影響を与えたと言われている。
     
     そこかしらに微妙な誤訳や勘違いもあるものの、恩や義理、人情など、概念の日本人の特異性を的確に述べていく。現代の日本人の自分から見ると、自分の中になんとなくある常識、(普通そう考えるものという意識)のいくつかが世界的には特異で、日本人固有のメンタリティから来ているということに気づき驚く。
     そういった日本人のメンタリティが近代日本史や現代の日本の中に根づいている。太平洋戦争の前後で日本人の態度は確かに一変した。しかし、ベネディクトは戦争によって価値観が変わったのではなく、如何に世界に誇れる民族であるかという価値観は変わらず、戦中は戦争に勝つことでそれを果たそうとし、戦後はよき復興者であることでそれを果たそうとしたに過ぎないと考える。

     現代の日本を考える上で、その土台となるメンタリティを探る上で必読の書。ベネディクトが実は日本を訪れたことがなかったというのが、またこの本、そして人類学のすごさを表している。
     ちょっと長くて読みづらいのが難点。ポイントをまとめた本なんかがあるとすごく助かるのだが。。。

  • 戦争中の日本人研究における本書は、日本人の忠と孝、義理と義務、恥の文化など日本人のことについて研究する。本書が客観性たらしめているのは、作者が日本に来たことが無いという事実である。

    戦前の日本人の生活態度が描かれており、戦前と戦後で日本人が何を得て何を失ったのか、ということを考えさせられる。

    この戦前と戦後においての日本人の変化について、戦時中にもかかわらず筆者はこのように記している

    「もし学校においても軍隊においても、年上の少年が年下の少年に、犬のように尻尾を振らせたり、蝉のまねをさせたり、他のものが食事をしている間中逆立ちをさせたりすれば、必ず処罰するということにすれば、それは天皇の神性の否定や、教科書から国家主義的な内容を除去することよりも、日本の再教育という点で、さらに一層効率のある変化となるだろう」

     作者は、教育こそが日本人たらしめる思想を変えることになると予言し、事実そのようになったということに筆者の洞察力を見ることができる。

  • 昭和23年11月23日...
    一度も日本に来た事の無い筆者が...日本人の生活を通して日本人たるものを「事細かく」書いている...
    笑えるようで笑えない...
    ギクリとして、冷や汗が出る様な...場面も

    かなりクールに的確に?
    昭和の時代までは何処にでもあった「日本の姿」でもある様な気がする...

    でもでも...団塊の世代の子育てには...?
    無くなっているかなぁ〜とも思う...

  • 190ページでキブアップ!!
    しかし、アメリカ人と日本人の文化の違いが様々な場面を想定しながら解りやすく描かれていた。時代を経ても、なお当て嵌まる部分が多い。よく、実際来日することなくここまで的確に書けたものだと感心した。 そして自分自身がいかに日本人かということが分かった。

  • 2008年夏手前に読んだ一冊。

    珍しく購入せずに図書館で借りて読んだ本。
    結構分厚くて外人が書いたのを翻訳してるせいか
    回りくどい書き方されててさ・・・
    最初の方は読むのが苦痛だった(笑)

    読むに至ったキッカケは・・・
    オレの嫌いな先生が薦めて下さったから・・・なんだけど。


    この本を薦めてくれた●●さんは、
    ウチの頭の固い法学部の糞つまらねー先生方の中で
    一番センスが良いと思えた。嫌い⇒好きへ(笑)


    この本は、日本人の考え方・行動・・・
    ありとあらゆる処を
    回りくどく皮肉ってる作品。
    でもコレがまたウケル位素晴らしい出来なわけ!


    この本、古〜ぃ本なんだけど、
    今もその日本人のダメッぷりは
    色褪せていないんだから・・・
    流石、大日本人。

  • 日本人を恥の文化という洞察は鋭いと思います。

著者プロフィール

Ruth Benedict 1887―1948。アメリカの文化人類学者。ニューヨークに生まれ、コロンビア大学大学院でフランツ・ボアズに師事し、第二次世界大戦中は、合衆国政府の戦時情報局に勤務し、日本文化についての研究を深める。晩年にコロンビア大学の正教授に任じられる。主な著書に、『文化の型』『菊と刀―日本文化の型』など。


「2020年 『レイシズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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