三角館の恐怖 新装 (江戸川乱歩文庫)

著者 :
  • 春陽堂書店
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本棚登録 : 127
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784394301035

感想・レビュー・書評

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  • 「エンジェル家の殺人」という本の翻訳だそうですが、舞台は日本にアレンジされていて、しっかり乱歩の作品になっていたのがすごい。読み終わってから、ああそういえばこれ翻訳なんだった、と思い出しました。
    トリックや犯人やその動機はシンプルで特に驚きはなかったけど、このレトロさがたまらないのです。読者への挑戦も入っていて、楽しめました。館好きとしては、1つの家を三角に区切った奇妙な館という舞台設定だけでわくわくしてしまいます。扉を手で開くタイプのレトロなエレベーターっていいなぁ…。機会があれば「エンジェル家の殺人」の方も読んでみたい。

  • 翻案を満たす愛情!


     押しも押されぬ日本推理界の暗黒星(巨星)、それは江戸川に尽きるのです★
     が、長編作家としての乱歩を追っていくと、読書好きの人ほど「あれ?」と思う時が来るのでは。オリジナルの本格長編推理物では案外ぱっとしたものが見当たらず、「これなら」という長編には「翻案」の文字が★ 乱歩は自分が創作するよりも、おのれの血肉と化すほど愛した小説を、自分の言葉で組み立て直して語るお手並みが鮮やかだったと言えましょう。

     中でも『三角館の恐怖』は、思い入れたっぷりに、とても丁寧に書き起こされた逸品です。ロジャー・スカーレット作『エンジェル家の殺人』の翻案で、奇妙な岸辺の洋館「三角館」で巨額の遺産をめぐって起きる事件を描いたもの。
    「長生きしたほうが全財産を相続する」という遺言が発端で、双子の兄弟は険悪な仲に。一つの建築物だった「三角館」を二つに分け、別々に暮らすようになっていたのでした。歳月が流れ、自らの寿命を悟った片割れは、どちらが先立っても公平な条件になるよう持ちこもうとするも、その晩、片方が殺されて状況は一変!

     不思議な館、双子の運命、奇形の怪人物……と、いかにも乱歩好みの設定です。率直に言えば、第一印象は「地味で年寄りくさいな★」でしたが。双子はもはや歳で弱々しく、季節も薄暗い。ポプラ社のジュニア版でさえ陰気で「どちらかが死ぬまでは退屈かも……」と不謹慎なため息をついた私だったのです。
     かように地味ではあるけれども、いつしか癖になるレトロ感。また、乱歩が元ネタ『エンジェル館』をよほど気に入ってたんだなという熱が伝わってきます。探偵小説への尽きせぬ想い、作品への偏愛。好きだからと言って、自分でもう一回書いちゃう! そこまでの愛情を抱くことが既に稀有な才能でしょう☆
     そうだ、私も『エンジェル館』を読んでみよう。こんなに年寄りくさくて陰鬱な話なのか、すごく知りたくなってきました。

  • 長編推理小説。ロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」を翻案したもの。設定は戦後間もない時期の東京。

    蛭峰家の双子の老人には、長く生き延びた方がすべての財産を得られるという取り決めがあった。両家にはこのためわだかまりが生じ、一つの館を真二つに区切って生活していた。三角館と呼ばれる所以である。本作のワトソン役を務めることになる森川弁護士が、双子の兄、健作氏に呼ばれて三角館を訪れることから事件の幕が上がる。

    読者への挑戦もある典型的な推理小説だが、犯人当てとしては初級的。

  • 翻案ということは念頭に置いて…。
    雰囲気は確かに海外のミステリっぽかった。で、多分ちゃんと犯人は誰だか推理しながら読む人には読み応えのある内容だったのだと思う。
    私は単に読み進めていくだけのタイプなので、動機もろもろが分かったあとは「ふーんそうなのか」くらいにしか思えなかった…。
    でもすべてが分かった上でもう一度読むとまた違った方面から楽しめる、はず!

  • 小学生の頃にジュヴナイル版の明智が出てくる『三角館~』を読んで、館&見取り図の虜になりました。
    『エンジェル家~』も既読でしたが、乱歩の翻案小説のこちらは初めて読みました。乱歩らしい変態・怪奇趣味などは皆無ですが、推理小説として普通に楽しめます。
    見取り図もふんだんで、第一の殺人、第二の殺人と事件が展開し、蛭峰一家の愛憎溢れる人間関係、そしてラストの篠警部が犯人に仕掛ける大きな罠と、ベタな展開ではありますがそこが面白いのです! そしてなんと読者への挑戦状まで入ってますw

  • 乱歩の中でも比較的正統派推理モノ。とっつきやすいな。

  • (メモ:高等部3年のときに読了。)

  • 隅田川近辺の川岸に建つ奇妙な洋館を舞台に、
    二つの蛭田家の巨万の遺産を巡って展開される
    二重殺人事件。
    その謎に挑んだ名警部の推理は・・・!?


    薄っすらとしか内容は覚えてナイです(´ω`;)
    出てくる登場人物がミンナ怪しい。
    ピストルが出てきたコトが、
    何だか乱歩っぽくない感じのしたお話しでした。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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