- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784394903710
作品紹介・あらすじ
北海道新聞文化面での連載(16年8月~20年2月)に加筆修正し、単行本化しました。
笑ったり
考えたり
思い出したり
忘れたり
奇妙な星(地球)、おかしな街(東京)でのほのぼのとした癒されるエッセイ集です。
ベスト・エッセイ(日本文芸家協会)にも毎年選出。
感想・レビュー・書評
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"地球" という奇妙な星の、"東京" というおかしな街で、「よく考えてみると、何か変だぞ」という26のお話。
毎晩眠る前に一話ずつ読むために、枕元にさり気なく置いているのが似合いそうな、オシャレな感じの本です。
最初のエッセイ「遠いところ」から、吉田篤弘さんの世界にスッと引き込まれます。
普段は気にもとめていないけど、「よ~く考えてみると」なるほどそうだな(そうかもね)と共感することばかり。
毎日代り映えなく同じ作業を黙々と繰り返しているような日常では考えないことを「よく考えてみる」ことができました。
(ネタバレになりますが)吉田篤弘さんに導かれながら考えたり共感したことの一部を紹介しておきます。
自分へのご褒美という考え方は、自分が常日頃実践していることに近いかもしれない。自分が2人いて自分Bが自分Aを励まし優しく見守っている。
なつかしさとは、どれくらいの時間がたったときに芽生えるのか。時間の隔たりのほかに距離の隔たりも加味されているのか。
「猫の手も借りたい」という言葉は300年ほど前に登場するが、300年経っても猫の手を借りて忙しさを解消する方法は確立されていない。
鳥は鳴き、犬は吠える、口編に人の㕥という字は使われていない。人は泣くが鳥は泣かない。
「騙されたと思って」は変な言葉だ。過去形を仮定している。
失敗を恐れず、あまり期待をせずに、ダメで元々、イチかバチか、私を信じて、のような意味をもっている。
旅先で読む本は自分の部屋で読むのとは明らかに違う、同じ本でも自分が日常の外に出ていることが大きい。
外で読むとゆっくり読める。ゆっくり読むと同じ本でも別の本のように読める。
本をゆっくり読むために旅をするとは、なんと贅沢なことかと思う。
星の王子さまが「本当に大切なものは目に見えない」と教えてくれた。
例えば、愛情、友情、信頼、誠実といったもの。
「心」は「見えないもの」の象徴で、真がついた「真心」はひときわ尊い。
では「見えないもの」の頂点に立つのは「真心」なのかと問われれば、やはり誰もが認めるのは「命」なのではと思い至る。
「本当に大切なものは目に見えない」というセリフは王子のものと思い込んでいたが、星の王子さまを読み直してみたらそうではなかった。
「見えるもの」を把握せずに「見えないもの」を探求するのはおこがましいことだと反省する。
そこで今思うこと。
未知のウイルスという「(本質が)見えないもの」と共存していくためには「(観測データという)見えるもの」をより注意深く凝視する必要がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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2024/05/07
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2024/05/07
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はい、これからの楽しみにします。
ぐっちょんさんの言われる通り、吉田さんの作品はコーヒーが飲みたくなりますね(^.^)はい、これからの楽しみにします。
ぐっちょんさんの言われる通り、吉田さんの作品はコーヒーが飲みたくなりますね(^.^)2024/05/07
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うん…
好きだなぁ…
それしか出てこん。
好きな作家の言葉、頭の中と同調しようとする行為
が
読書の醍醐味のひとつだと思った。
ひとつ5,6ページのエッセイ集。ページごとの文字数も少ないので、サクサクと読める。
著者の想像力の羽が自然と伸びていく様がいい。
小説でも出てきたフレーズが垣間見れるのもいい。夜のカバンとか。
引用
カバンの中には闇があるのだ。
カバンの中は基本的に、静かで、ほの暗くて、ひんやりとしている。つまり、自分が考える「夜」の条件をすべて充たしている。
そう思うと、なんだか愉快になってくる。
電車に乗ってごらんなさい。乗客のほとんどがカバンを持っていて、そのいちいちに「夜」が仕舞われている。
街を歩けば、あちらにもこちらにもカバンを手にしたり背負ったりしている人がいて、そのすべてに「夜」が宿されている。
持ち運びのできる「夜」というのは、いかにも未来的なものであろうと思ったのだが、じつのところ、何百年も前から誰もが手軽に持ち運んでいるのだった。
カバンの中に夜が仕舞われている…
カバンから物を出す時に、静かな夜から物を出すんだって想像すると、何ともいえない気持ちになる。
薄明るい夜のカバンもあると思うけど…
それもいい
特に最後の2つが、特に、良い余韻を感じた。
「旅先で読む本」
引用
自分の経験からすると、旅先で読んだ本は、ときに香ばしい山椒のようである。決して大きな変化をもたらすわけではないけれど、ピリリとした印象的な影響をその後の人生に与えうる。どうしてなのか、理由はいくつも考えられるが、おそらく、自分が日常の外へ出ていることが大きい。本はいつもどおりの本なのだが、自分が外へ出ていることで、一冊の本のその佇まいからして、いつもと違って見える。
仮に、その本が何度目かの再読であったとしても、それまで、さして感じ入ることのなかった文章が、いちいち抜き書きをしてしまうほどになる。なにより、いつもより、ずっとゆっくり読んでいることに気づく。
本も、時にいろんな場所で読むのがいいよなぁ
と思った。
家での読書と、喫茶店、旅先での読書…
確かに違う
作家の役割として、新しい感じ方の提示
があると思う。
吉田篤弘さんは
確実に
幸福感を伴う、温かく「新しい」視点を感じさせてくれる作家さんです
うん
コーヒー飲もうっと -
吉田篤弘さんのエッセイ。
想像力の方向がチャーミングで素敵だなと思った。「月とコーヒー」のような素朴で可愛らしい世界観の物語はこの想像力から生まれたんだなーと納得。
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穏やかな気持ちで読めるほのぼのエッセイ。
私の好きなポイントはなんと言っても装丁。
原稿用紙調なのがとてもいい…!
使われている色もイラストもとても好みだし、可愛らしいカバーを外すとシックなブラウンの装丁になっているのも素敵。
個人的にはインテリア感覚で、所有欲を満たしてくれる本。 -
現実から3cmくらい浮いているような、
5度くらい見える世界がズレているような世界を物語る人が、
目を向けるところをちょっと教えてくれるようなエッセイ。
「自分にご褒美」→幸福な時限爆弾
台所の時計→ある人にとっての標準時刻
なんて感じ -
積読崩すときとか書評書くときは、なんとなく連想ゲームみたいに繋がるものを選んでしまう。何故ならそうしないと選べないほど溜まっているから…。
サイン本エッセイつながりで、こちらはおなじみ吉田さん。でもエッセイ読むのは久しぶりか。吉田さんのエッセイは、なんとなく短編小説と同じリズムなので、気づくとエッセイほど楽に読めてないことが多いのだけど、今回はちゃんとエッセイ的な軽さで読めた。内容というよりは、本文が原稿用紙みたいなデザインの中に書かれていて、その行間の余裕が、少し余裕のなくなっている今の自分にはちょうどよかったのかもしれない。この本のイラストも吉田さんで、これがまた悔しいかないい感じのゆるさでずるい(笑)。
クラフト夫妻の好きなところの1つとして、さぞ自然体でお洒落で満ち足りた暮らしをしているのだろうと思わせつつも、よくある「ふらっと海外に行く」「毎年どこぞの国でリセットする」というようなお洒落海外ネタがないところ(笑)。別にそれが絶対に嫌いだとかではないし、自分も行きたい国はたくさんある。でも東京を敬遠する人も少なくない中「飛行機は苦手。生まれてこの方東京からあまり遠くには行ったことがない」というのが好感度が高い。確かに見知らぬ土地や、ましてや海外に行くだけで視野は広がるのだけど「海外で視野を広げなさい」とか海外に行かないと話にならない的に話されると「まず自分の周りの土地のどれだけのことを見ているのだ」と反発したくなるので(苦笑)。
そんな冒頭からはじまり、ちらほら今後の作品になりうるカケラのようなものも見えながら、日常のごく身近な身の回りで起こったことを、いつも以上に飾ったりオブラートに包んだりせず、比較的そのまま感じたことを書いているような文章は「わかる」「そう思ったことある」といつも以上に共感が強く、ノーストレスでスルスル読めた。
ところで最近『星の王子さま』ネタをよく目にするのは、そろそろちゃんと読み直せってことだろうか。
あとこの本の絶妙なやわらかさ(たぶん表紙本体の紙によるところが大きい)が、とっても開きやすくて読みやすい。 -
この方のモノの見方(見え方?)、表現力、ほんとに面白いです。『天国の探偵』が読める日を楽しみにしています(^^)