それでも、「木密」に住み続けたい!: 路地裏で安全に暮らすための防災まちづくりの極意

著者 :
  • 彰国社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784395012138

作品紹介・あらすじ

現代でも使える半鐘、レストランの予約もできるロンドンの火災報知システム、あらゆる隙間を避難に使おう、いざとなったら川の水で初期消火、自主防災組織は女性が鍵、まち全体を舞台にした防災訓練、「わがまちの避難路マップ」をつくろう、ほか。全国の密集市街地から集めた「木密」への処方箋。

感想・レビュー・書評

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  • 修論を「木密改善をテーマにした、行政の地域介入アプローチのあり方」とするにあたり、関連書として。

    木造密集地域という日本の課題に対して、
    “木密はとにかく危険で、一刻も早くクリアランスすべきだ”と、
    “魅力ある木密はそのまま残していくべきだ”という2つの相反する立場があります。
    そのあいだにうまく立ち、
    木密の魅力を考察しながら、その危険性に対しても厳しい指摘がされているのが前半です。
    データや事例の丁寧な紹介で、説得力があります。

    後半では地域防災性を高める多くのツールの紹介。終章は自発的な活動のススメで結んでいます。

    おそらく対象読者として想定されているのは、地域で防災まちづくりをしようと考えている人。
    彼らを啓蒙し、正しいリテラシーをつけてもらうことで、
    「魅力を残しながら地域防災性を高める」防災まちづくりが広まっていくことが狙いなのだと思いますが、
    書籍として少し厚いので、彼らが手にとるのかということだけ疑問でした。普通の書店で置いていないような…

    でも内容としては平易で、一般の方にもとてもわかりやすい説明で書かれているので、そのうち新書のような形で出ることを期待します。

  •  木密=木造密集市街地は、阪神・淡路でも倒壊による道路閉そく、火災が発生していることから、防災上の課題。

     その一方で、ごりごり都市計画街路を通したり、土地区画整理事業をして街並みを一新してしまうと、昔ながらの情緒がなくなったり、自動車の交通量が多くなったりして危険。

     さらにいうと、全国の木造密集市街地を全面的に安全にするような公共事業の予算が今後確保できるとも思えない。

     この現状の下では、現実の建物の防火性能、耐震性能を一部の建て替えと、大部分の改修によって改善しつつ、地域ぐるみんでの、防火対策、地震時の防災対策を講じることが必要。

     その意味では、一つは、伝統的建造物群保存地区と建築基準法の緩和といった、面的な規制と構造規制の緩和のリンクがありえると思う。

     必ずしも伝統的建造物群保存地区までいかなくても、地域として保存した建物群を市町村が地区計画で定めることによって、接道、構造などの緩和をする、それと同時に、防火壁となるような構造物、避難路の確保、さらには、防災訓練などの義務づけなどの、地区マネジメントをきちんと制度化する、そういう、ハードとソフトの組み合わせが必要だろう。

     まず、国土交通省の中で、都市計画と建築との連携、それに続いて、消防庁との連携といった気の長い努力が必要。

     目立たないが大事な課題だと思う。

  • 木造密集市街地のよさって、どう言えば良いんだろう。
    いつも困る…。
    というか、どう言えば良さを評価しない人に伝わるのだろう、というべきでしょーか。
    でもそういいながら私も、木密に住みたいかといわれると正直微妙な部分もある。

    「再開発されて人々が身近な危険や防災に関心をもたないまちよりも、人々がキケンを認知しながら防災に関心をもってくらしたり呑んだりしている木密のまちのほうが、いざというときに困ることはないように思います。」(P.24)

    そうかー。


    防災への取り組みはいろいろあるっていうのが紹介されているんだけど、敷地を切り隅して作った防災公園とか、周りの景観に合わせたうろこ壁の防災センターとか。

    やっぱり防災って面倒くさくてかっこ悪くて、厄介、だと思ってしまうんです。正直なところ。

    その上残念ながら、この本の防災の部分を読んでいると、やっぱり木造密集市街地は危ないなーと思ってしまう。住み続けるの難しいなと思ってしまう。
    ここまでして木密に住み続ける理由は、現在住んでいる人にはあるかもしれないけど、それが下の世代まで伝わっていくのは難しいのかもしれない。

    あと不思議なのは、なんで最近建つマンションや戸建のミニ開発って、そういった保護の対象になれないようなザンネンなものなのだろう。30年したら、団地マニアならぬ、ミニ開発マニアとか現れるんだろうか?
    なんで今の技術で作るといけてないモノになってしまうのだろう。
    そういうのってもう生み出せないのかなー。

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著者プロフィール

1930年6月、北海道岩見沢町(現在の岩見沢市)鉄道診療所官舎で生まれる.1943年3月、岐阜市郊外の村立厚見国民学校初等科を卒業後、同年4月、市立岐阜加納国民学校高等科に入学、1944年4月、市立大垣工業学校電気通信科に入学.戦後、大垣市立工業学校は岐阜県立大垣工業学校に統合。1949年3月、県立大垣工業学校電気通信科卒業したが就職口が全くなく、同年4月にそのまま新制工業高校3年生に移行、1950年3月、県立大垣工業高等学校電気通信科を卒業。同年二月、岐阜電話局に就職1952年6月、同局を退職。1953年4月、北海道大学(理類)に入学、1957年3月、理学部地球物理学科卒.1957年4月、北海道立浦河高等学校に就職(教諭)、1962年4月、道立美唄南高等学校に転勤。ここで音楽教師の高橋和子と出会う。1963年4月、道立札幌南高等学校に転勤。1964年4月結婚。1968年4月、道立札幌西高等学校に転勤。1983年4月、道立室蘭清水丘高等学校に転勤.
この間、愛知学院大学の図書館司書講習を受講、図書館法による司書資格を取得。1988年3月、同校退職(57歳)。同年4月、札幌にある障害児のための民間の図書館“ふきのとう文庫”に司書として、半分ボランティアで勤務。1991年9月、病を得て退職。1994年3月、“終の住処”を探して小樽市郊外のマンションを購入、転居して現在に至る。

「2002年 『和子 アルツハイマー病の妻と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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