台湾に生きている「日本」 (祥伝社新書149)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396111496

感想・レビュー・書評

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  • 力作です。著者自ら現地を訪れた日本統治時代の遺構の数々。深い調査に裏付けられた事実と洞察。文章も素晴らしい。台湾を知るための基本書です。著者のご努力に敬服致します。
    ★5つでは到底足りません。★★★★★★★です。

  • 予想外の良書だった。明日からの年末年始台湾一周旅の材料探し為に紐解いたのである。スケジュールの関係から、ここに紹介されている所のほとんどを訪れることは出来ないが、この本には台湾と日本の関係を、日本遺構の取材を通してひとつの特徴を上手く描いていると思った。それこそが、今回の旅で私の掴みたいもののひとつなのである。

    日本統治時代の遺構は国民党政府時代に移ってほとんど破壊されている。それでも幾つかは残る。貴重なのは、古代の遺跡とは違って、それらの遺跡の生き証人がまだ少しだけ生き残っていて、調査をすると、まるで必然のように彼らに出会っていることである。

    例えば、日本の食肉加工場があった隅には、屠殺した獣の魂を鎮める日本らしい「獣魂碑」だけは壊されずに残っていた。今はもう屠殺も行われない別の風景になっている。ところが「現在も月に二度、関係者が集まって祈祷が行われている」と、スーパーの若い兄ちゃんが告げて石碑に手を合わせて持ち場へ去っていったというのである。統治時代に日本がいいことばかりをしたとは決して著者は書かない。私も前回の旅で霧社事件の場所へ旅したのだから、良く知っている。それでも日本人の美しい心は、台湾の人たちは残そうとしてくれた。韓国との違いは、国民党政府への反発心で復古への想いがあったという事情もあったかもしれない。それ以外の事情もあったかもしれない。それはこれから究めて行きたいが、ともかくこの本には、そういう日本人の美しい心と台湾人の美しい心のコラボレーションが至るところで読めるのである。

    宜蘭の飛行場跡で出会った老人、嘉義県東石郷に祀られている日本人巡査が「義愛公」として神様になってゆく過程なども、とっても興味深いものだった。

    今回行くのが確定している唯一の日本遺構は、台南駅である。1936年竣工。赤煉瓦の西洋風ではなく、機能性や耐震性を重視したモダニズム建築風らしい。元は二階部分がホテルとして利用されていたらしい(台南鉄道ホテル)。レストランさえ併設されていた。今はどうなっているのか、この本は7年前に書かれているので確かめてみたい。一番線ホームは、古レールを用いて設けられた曲線屋根になって広く感じられるらしい。設計は宇敷赳夫。

    2016年12月28日読了

  • 台湾は好きで何度か行っていますが、本書に書かれている場所は殆ど知らない所ばかり。それぞれの場所に歴史や人の思いがあり、次に台湾語へ行くときはそれらを感じながら旅をしようと思いまし。
    勉強になりました。

  • ふむ

  • 2021年 59冊目

    定期的に台湾の本を読み漁る。
    私の趣味ですな。

    初めて台湾に行ったのは1991年と言う年季のはいった台湾好きな著者でした。
    30年も台湾に魅せられて研究しているなんて凄いなぁ。

    内容は、日本統治時代の建築物、石碑等建造物、日本と台湾の人達とのエピソード、台湾で生きている日本語等、多岐に渡って日本と台湾の繋がりを紹介してくれてます。

  • 日本統治時代に建てられた建物を紹介しつつ、その建物の歴史的背景や建築の知識、人々のインタビューまでも盛り込んだ、著者力作の一冊。タイトルから予想した内容とは若干違ったが、建物が好き、歴史が好き、そしてこれから台湾に行く人にはぜひ薦めたいと思う。

  • 新書文庫

  • Fri, 17 Jul 2009

    台湾に行きたくなった一冊
    考えていたのと,内容はちょっと違ったけど, おもしろかった.

    台湾全土に渡って,日本の息吹が感じられる場所や建物,石碑などを紹介している. 現地をまわって,直接人々の言葉をひろっていく筆者の心が感じられる一冊.

    台湾は今の日本に於いて,どのように捉えられているのか. 私を含め多くの日本人にとって台湾の存在は 世界地図の中でかすかなものかもしれない.

    しかし,日本は日清戦争以降,大戦敗戦まで台湾を支配し, 学校を作り,大学をつくり,博物館をつくり,鉄道をひいた.
    その中で日本人としてのアイデンティティを台湾の人々に植えつけ そして去っていった.

    その記憶は単純に消えていくものでは無く,未だに,その痕跡は多く残るという. 老人は日本語を話せるし,紅白歌合戦などは好んでみられるという 街の老人が 「一度,NHKのど自慢が台湾にきてくれることはないんかねぇ?」 という.のが印象的だった.

    日本は戦後,欧米ばかりをみて,戦時戦前から目を背けた. 戦争の罪の意識か,なんなのか.変に東アジアをアンタッチャブルなものとする 意識があるようにもおもう.

    台湾は自転車生産もすごいし,マザーボード,NETBOOKでまた,世界を席巻しているようにおもう.
    (李登輝の力が大きかったのかもしれないが)

    日本と歴史的にも文化的にも関わりが深い国であることは間違い無い. また,日中関係が経済的にも激烈に深化するなかで,関係の調整が難しくなるのかもしれないが,

    とはいえ,私,まだ台湾いったことがないので, また,学会があったら 意識していってみようかとおもう.

    (2015/01/01追記: 台湾にはその後行ったがイロイロいい場所だった.)

  • 八田興一をtweetで知って、鳥頭山ダム建設を知り、明治の台湾総督府辺りが気になって、とりあえず台湾について調べてみよう!ということで。

    読み終わった、というかすっ飛ばして読んだ。
    日本と台湾って凄く関わりが深いのねー、でおわた・・・

  •  台湾に残っている,日本統治時代の史跡や住民の心の中にある「日本」を紹介しています。戦後,台湾にやってきた蒋介石の国民党政府は,日本の統治時代のものをことごとく破壊しようとしたようです。しかし,元々いた住民の中には,「日本」のものを残そうとしてくれた人たちもいたようです。
     日本統治時代,日本人と台湾人とは支配者と被支配者という関係だったはずですが,そういう関係を超えた人々の付き合いがあったのだ…という事例がたくさん紹介されています。
     第3章の「台湾の言葉となった日本語辞典」はおもしろいです。語彙がかわってしまったものもあります。

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著者プロフィール

1969年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。台湾を学ぶ会(臺灣研究倶楽部)代表。台湾に残る日本統治時代の遺構を探し歩き、記録。講演活動も行なっている。妻である真理氏との共著『台湾探見 ちょっぴりディープに台湾体験』『台湾旅人地図帳』も好評。

「2023年 『増補版 台北・歴史建築探訪 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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