- Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396312015
感想・レビュー・書評
-
日本の伝統的な文化を見なおし、そこに隠された知恵を解き明かそうとしている本です。
日本食が健康に良いことや、日本の工芸・技術の優れていた点などを指摘し、また、前近代的で封建的だと批判されがちな日本社会が、たがいの信頼によって結ばれた優れた社会であったと論じています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「梅干と日本刀」三部作を1つにまとめた物
日本と日本人の歴史についてその工夫と良さについて、今では気にも止めてもらえない事を掘り下げ紐解き、日本人って凄いなと改めて感じさせてくれる本。
日本刀を刀鍛冶が作る時叩くのは炭素を出す為。日本にはコークスがなく、炭で熱していたから鉄は完全に溶けず、不純物の多い鋼鉄だったが、叩いたり、焼きを入れたり、する事で1つの刀に柔らかさと固さの性質を合せ持たせる事ができた。
日本人は命がけでなんでも食べてみるという恐ろしく勇敢な民族(笑)中国人もかなりだと思うんですが…
西洋人は4味(甘、酸、塩辛、ピリ辛)、中国人は5味(+苦味)、日本人は6味(+旨味)
科学を否定する訳ではないが、人気を常に幸せにしてくれるとは限らない。
日本の人口の適量は米作りと関わっていて大化の改新以降から明治以前の農耕で賄える人口は4千万人前後と変わらない。工業国になり外国の農産物を買えるから1億人が生活できる。全く新しい文化になった。
正月は御節、七草は薬草。桃の節句は桃の種の中の胚乳を食べる行事で杏仁湯を飲む。杏仁湯は血圧低下と、強心健胃作用がある。五月の節句は菖蒲は強壮解毒作用。七夕は堕胎。重陽の節句は鉄分。五節句の飲み物食べ物は全て薬品。稲を育てるという重労働の前に滋養強壮させるのが節句の狙い。
日本で栽培されている植物のほとんどは輸入し、改良し、定着させたもので、在来種のものは極めて少ない。細いものを太くする事に長けていた。独自のものは強いて言えば、山葵と大根。家畜も渡来種。
日本語の日用語は14万語。「大辞典」収容語は72万語。
女尊男卑の痕跡。父母と書いても母(おも)、父(と)と発音。夫婦は夫を先に書くのに(めおと)と女を先に発音する。母が住む方が母屋。里帰り、結納も女系社会であった名残。
単調な食事しかできない民族は味覚が劣る。複雑な食品種類を摂取する民族は味覚が複雑化し、進歩する。
信用組合を世界初で作ったのは二宮尊徳で19世紀初め。ドイツに出来る37年前。 -
"日本の伝統や習慣、日本人がこれまで積み上げてきた誇るべきものを再認識させてくれる本。残念なことだがすでに、今となっては失ってしまったものもあるように感じる。先人が築いてきたいろんな事を大切に伝承していかないといけないね。自分自身の反省なのだが、あまりにも物事をうわべだけで見つめているのではないか?という反省をしている。なぜ、ご飯に梅干しなのか?なんてことは、考えたこともない。それは、考えなくても時は過ぎ、多くの情報が降ってくるから。テレビを普通に見て育った世代には、無理な事なのかもしれないとさえ感じる。でも、この本を読んだ自分は、立ち止まって普段何気なくとっている行動に眼を向けることができるようになったといえる。今時の言葉で言うと、当たり前を(常識を)疑え!とでも言うのかなぁ。
サラリーマンになった今、越後屋や白木屋が作ってきた商習慣を引き継いでいる部分もあるのだと思うと感慨深い。
家族の事でもめたときなど、今一度読み返し、家族とは何かを考えてみるのも、この本の効用かも。" -
日本の優れた点をこれでもか~というくらいに書いて650ページ。
しかも偏狭な見方ではない。
新刊本の書店では品薄な本だと思いますが、見かけたら手に入れるべきだと思います。 -
日本人でよかった!日本人であることを誇りに思う!という気持ちになれる本です。
-
オススメの理由
知恵と独創性にあふれた日本文化の再考とそこから得られるものについてご紹介したい。
推薦者のページ
⇒ -
日本に、そして日本人に生まれて良かったと思える一冊です。
-
すばらしい。読んでて、日本について全然知らなかった事だらけ。日本人の素晴らしさを知って元気がでる。身近なところでは、会社に新入社員が入って飲み会で潰したり、一発芸させたり、っていうことも、古来から理由があって似たようなことがやってたんだということも知って驚き。僕らが普通だと思ってやっていることは、大体昔からの名残かもしれない。由来を知った上で行うのか、そうでないかを分けるのが教養なんだなぁと思った。
また、地震や津波を、テクノロジーで防ぐのではなく、受け流す、という考えを持っていたよう。今こそこういう考えが必要なんだな、と震災後に読んだために強く思う。壁を何M立てました!!って考えは自然は征服できるものだ、という西洋の考え方であり、日本には相容れないんだろうな。(もともと災害多いところだし)
こういうのをテレビでやったら面白いのになぁ。 -
樋口清之氏はおそらく、『和食=健康に良い』という世界の共通認識を作り上げた人物の一人に数えられるだろう。
日本食はなぜ健康に良いのか?
日本人はなぜ、『東洋の奇跡』と呼ばれる復興を果たし得たのか?
日本人はなぜ器用で勤勉なのか?
日本の官僚はなぜ腐敗しやすいのか?
様々な見地から『日本人』を語る逸品。
例えば日本刀は世界で最も『折れず曲がらずよく切れる』を体現した刃物だと言われているが、そもそも日本で製鉄が出来ること自体が驚くべき事なのである。
鉄を融解させるには、コークスなどの高エネルギー燃料でなければ本来不可能らしい。ところが日本ではコークスは取れない。古代の日本人は『たたら』による製鉄によって、世界に類のない『玉鋼』を生み出した。優秀な刃物として知られるドイツの『ゾリンゲンナイフ』は日本刀の製法をモデルにしたと言われている。
梅干しと白米、いわゆる『日の丸弁当』はほとんどデンプンだけ、という一見して非効率、非科学的な食事に見えるが、たった一粒の梅干しがデンプンを吸収しやすくする作用を持つ。梅干しによって白米のデンプンをほぼ完全にエネルギーに変えることが出来る。
日本の品種改良技術には1600年以上の歴史がある。そもそも米の一反当たりの収穫量は小麦の四倍ほどであるが、その中でも日本の米は東南アジアに比べてもさらに倍以上の収穫がある。これは日本の多様な気候に適した米を作り続けた努力のたまものであり、『一所懸命』の精神構造の根底にあるものである。100年足らずで北海道の気候に即した品種を作り出した事にも注目すべし。
などなど、実に興味深い話ではある。
近代歴史観は司馬史観に近いものがあるが、その論拠が主観ではなく過去のデータの蓄積に重きを置いているので、司馬史観よりも理屈に走りがちである。栄養学、生理学、地学、治水学、農学、材料工学等の様々な見地から日本人を解く。
樋口清之氏の『逆・日本史』(1~4)と併せて読みたい本。