- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396317980
作品紹介・あらすじ
現代日本が見習うべき政策の数々
●ドイツを蘇らせた「第一次4カ年計画」
●中小企業の貸し渋り対策
●大企業に増税し労働者には大減税
●有給休暇、健康診断、いたれりつくせりの労働環境
●労働者のためのリゾートビーチ
●メタボリック対策と食の安全……
教科書では教えてくれない、ヒトラーの意外な側面
ヒトラーが政権を取るや否や、経済は見る間に回復し、2年後には先進国のどこよりも早く失業問題を解消していたのである。
ヒトラーの経済政策は失業解消だけにとどまらない。
労働者の環境が整えられ、医療、厚生、娯楽などは、当時の先進国の水準をはるかに超えていた。国民には定期的にがん検診が行なわれ、一定規模の企業には、医者の常駐が義務づけられた。
冷静に客観的に「ヒトラー、ナチスとはなんだったのか、経済政策的な側面から探っていく」というのがこの本の趣旨である。 (「まえがき」より)
感想・レビュー・書評
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学校教育で学ぶ第二次世界大戦以前のドイツ=“悪の枢軸”なのだが、実際には多くの人が普通に暮らし、経済活動をしていたはずだ。
本書はヒトラー政権下の経済政策に焦点を当てた1冊。
アウトバーン、サービスエリア、信用保証制度、聖火リレー、オリンピックの記録映画、人口減対策としての結婚資金貸付、8時間労働、源泉徴収制度……。
ヒトラー政権下で行われた公共投資や政策は、現代にもつながる斬新なものも多かった。
プロの書き手によるだけに、読みやすく、超速で読了した。戦前のドイツを学校教育とは別の角度から知りたい人にはうってつけ。参考文献も充実。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ナチス政権下の経済対策の賛美本。
ナチス侵略行為やユダヤ人迫害について肯定するつもりはまったくない、としながら、負の面は無視し、正の面ばかりを賛美する(素晴らしい〜〜などの文体)ので、結果的にかなりのナチス賛美の本になっている。
例えば、小規模事業主や労働者に税金を軽くし、大規模法人の税金を下げたことを正しい、日本も見習うべし、という書かれ方をしているが、現在、それでは国際競争力は下がる(むしろ日本はそのような政策を平成の世で続けていたからGDPの伸びが鈍化した)と言われている。
何か行えばメリットとともにデメリットも発生する。
それを本書ではメリットだけを並べるだけ。だから賛美本になっている。
メリットとデメリットその両面をかかなければ中立ではない。例えばユダヤ人から奪った資産の金額がどのようにドイツ経済に影響したか、数字的に論拠を示し書くべきであった。
本書にはほぼ数字的な根拠がなく、経済政策の利点にしか焦点を当てていない。それはとても残念である。
ただし、一方で「ヒトラーは悪人だった」片付けるのはどうか、という点は一理ある。ドイツ人が経済的になにをなしたか、とても平易な文章でわかりやすくかかれている面では評価できる。 -
フリーライターが、ナチスの経済政策について書いた本。ヒトラーの経済政策というより、シャハトの経済政策について書かれている。戦後、ナチスの政策は典型的な全体主義国家の行いということで、ありとあらゆる出来事に悪の烙印が押されているが、一次大戦から二次大戦にかけての戦間期に行われたシャハトの経済政策は、ハイパーインフレのどん底からドイツを復活させた驚くべき功績といえる。政策の細部が書かれており勉強になった。ただし、二次大戦に至る開戦経緯を経済の面から書いているが、あまりに一面的な記述で内容が薄い。安全保障の知識には欠如が見られ、残念。
「ヒトラーが政権を取るや否や、経済は見る間に回復し、2年後には先進国のどこよりも早く失業問題を解消していたのである。そればかりか、ナチスドイツでは、労働者も環境が整えられ、医療、厚生、娯楽などは、当時の先進国の水準をはるかに超えていた」p4
「思想的な是非はともかく、経済政策面だけに焦点を当てた場合、ヒトラーは類まれなる手腕の持ち主ということになるだろう」p4
「ヒトラーというと、独断的な政策運営をしていたと見られがちである。しかし、実際のヒトラーは、有能な人材を見つけ、大仕事を任せるということも多いのだ。シャハトなどはその典型的なケースである」p36
「公共投資においては、投資した金が、貯金に回される額が少なければ少ないほど、景気への効果は高い」p40
「地域の利権が網の目のように張り巡らされている日本では、公共事業を行っても地方の金持ちを潤すだけで終わるので、そうそう経済効果を上げられるものではないということである」p42
「ナチスは、それ以前の政権に比べて格段に統制が厳しくなったにもかかわらず、デモやストライキなど、市民の不満を伴った社会運動はあまり起きなかった」p44
「自由に競争して、市場の支持を得られた方が勝つ、それが自由主義、資本主義の原則である」p48
「(ベルリンオリンピックについて、米ジャーナリスト マクガヴァン)私たちは、ドイツ国民が親切で公平、寛大なホスト役をみごとに果たしたのを見た」p62
「実際のところ、市民はナチスに対してそれほど悪い印象は持っていなかったのだ。ナチスの時代は、景気も良く、治安も目に見えてよくなっていた。娯楽や福祉制度も発達し、決して住みにくい国ではなかったようだ」p70
「外国人で、ナチスから勲章をもらった有名人には、アメリカ最大の自動車メーカーの創業者フォードがいる。彼は熱烈なナチス贔屓だったのである」p76
「ドイツは、かのマルクスを生んだ国であり、労働運動、社会主義運動のメッカでもあるのだ」p80
「ナチスの時代、労働者に不満が起きなかったのは、労使の調停の妙もあるが、大もとの労働基準を大幅に改善した、ということが大きな理由である。ナチスは世界に先駆けて8時間労働を法的に実施している。休暇も大幅に増えている」p85
「ポルシェは、国の全面支援でフォルクス・ワーゲン社を設立して、画期的な大衆車の政策にあたった」p103
「「2児の父親が出征した場合の残された家族への支援金」アメリカ:(夫の収入の)36%、イギリス:38%、ドイツ:75〜78%」p122
「第一次大戦が終わってから、ヒトラー政権が誕生する1933年までのドイツは「ハイパーインフレ」「大不況」「財政破綻」「通貨危機」「大量失業」など資本主義経済で起こりうるありとあらゆる問題を経験していた」p128
「ヒトラー政権の誕生は、選挙と法律による合法的な手続きによるものなのである」p146
「世界大恐慌、通貨危機のような緊急時に、政策決定に手間取っていれば、有効な景気対策など施せるわけがない。ナチスの場合、国家全体の利益を考えた政策を打ち出し、それを迅速に実行できた。それが、失業率の急速な改善につながったのである」p152
「(レンテンマルク)レンテンマルクというのは、ドイツの土地によって保証されるという珍しいタイプの通貨だった。つまり土地を担保にして発行された通貨ということである」p166