- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396335335
感想・レビュー・書評
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京都の森見登美彦は博学多才、平成時、若くして名を小説界に連ねたが、性、変態、自ら恃む所頗る厚く、有名に甘んずるを潔しとしなかつた。
「祥伝社編集者に誘われたる古典換骨奪胎」
「さようでございます。寺町通の地下のある喫茶にて、あの企画を提案したのは、わたしに違いございません」(渡辺某の証言)
森見登美彦は躊躇った。必ずこの様な古典的名作の改変を怒る輩が出現すると確信した。しかし引き受けた。渡辺某の提案に抗えなかった。孤高の腐れ大学生を主人公に「山月記」を書くという魅力的な話に抗えなかった。
森見登美彦というと、人々が酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれた物語(はなし)ばかり書くと思われているが、それは嘘です。コレはかなり恐ろしい小説なのです。
勿論生れて始ての事であったが、これから後も先ずそんな事は無さそうだから、生涯に只一度の出来事に出くわしたのだと云って好かろう。それは森見登美彦が「新釈 走れメロス」を書き終えた時である。
小説に説明をしてはならないのだそうだが、間違いは誰にもあるもので、この話でも万一ヨオロッパのどの国かの語に翻訳せられて、世界の文学の仲間入をするような事があった時、余所の読者に分からないだろうかと、作者は途方もない考を出して、行きなり「走れメロス逃走図」を以てこの本の表紙開きに挟み込んでいる。結果、とてもオモチロイものになった。
さて、非常に分かりにくいと思うが、順番に「山月記(中島敦)」「藪の中(芥川龍之介)」「走れメロス(太宰治)」「桜の森の満開の下(坂口安吾)」「百物語(森鴎外)」の冒頭部を改変して、本書の紹介に代えてみた。
やって見てわかったが、そういう安易な方法だと、つまらないモノしか書けない。森見登美彦は、文体は全体的に真似てはいるが、有名文章を無理矢理挿入したりはしない。でも構造は紛うこと無きかの名作なのである。でも紛う事無き内容は森見登美彦なのである。しかもラストの「百物語」で、主要登場人物総出という力技もやってのけ、他作品にも出演している詭弁論部や韋駄天コタツや図書館警察長官まで出てくるのである。正に唯一無二の作家と言えよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
H30.3.19 読了。
・「走れメロス」と「桜の森の満開の下」が面白かった。 -
元の作品を知っていても知らなくても面白く読めた。桜の森の満開の下があたいは好き。
ブリーフの話も面白かったけど。 -
近代文学5編をモチーフに、舞台を現代の京都に置き換えて、阿呆だけど憎めないダメ男子大生たちの姿を、面白おかしく、そして、しんみりと愛おしむ風情や感傷を交えて描いた、森見登美彦さんによる連作短編集。
ベースとなった近代文学は以下のとおり。
山月記(中島敦、1942)
藪の中(芥川龍之介、1922)
走れメロス(太宰治、1940)
桜の森の満開の下(坂口安吾、1947)
百物語(森鴎外、1911)
森見アレンジ版は、どれも面白かったですが、特に、偏屈な大学生のどうにも斜め上に捻れた珍奇な友情をノリノリで描いた「走れメロス」には、文字通り、抱腹絶倒してしまいました。
これぞ森見さんの真骨頂といった感じの作品です。
また、桜の怪しい美しさと、謎めいた女に惑わされながら、人生に侘しさと戸惑いを感じる小説家の男を描いた「桜の森の満開の下」は、感傷と怪しい魅力が溶け合って風情があり、こちらは「メロス」とは好対照の良さがありました。オリジナルのグロテスク要素が綺麗に排除されている点が、グロが苦手な私にはこれまたありがたく。
そして、どの作品も、ちゃっかり「森見ワールド」化してしまっているのに、作者も作風も全く異なるそれぞれの原作が持つ構成や文体、主題といった骨組みは踏襲され、守られている点に、森見さんの技巧を感じます。
「山月記」では、中島敦らしい漢文調の角ばった文体で、挫折し、結果的に世間から隔絶されてしまう男の姿を、原作の悲壮な感じにユーモアをプラスして描いています。
「藪の中」では、同じサークルに所属する男女の三角関係という設定に変更しながらも、登場人物たちの矛盾する独白を並び立てて真相は明らかにならない、まさに「藪の中」な話に仕上がっています。
「百物語」では、鴎外らしい硬質な雰囲気の中でオリジナルと同じ主題の「傍観者論」を巧みに展開しながらも、オリジナルにはない怪談的要素を盛り込んで、タイトルに偽りない作品へとバージョンアップさせています。
本当に、森見さんの頭の良さと、構成力、表現力にはいつも感心してしまいます。
原作を読んでいる方も、読んでいない方も、双方が楽しめる作品となっています。 -
名作を見事に森見ワールドにアレンジした一冊。
森見スパイスで新しく味付けし彩りアレンジされたような有名な名作たち。
どの作品もなぜか先ず最初の一文から笑ってしまう。
そして京都を舞台に繰り広げられるストーリーはやっぱり阿呆な世界なんだけれど、しんみりテイストも忘れずに余韻を残してくれる、そんなさじ加減も絶妙だった。
「桜の森の満開の下」が予想以上にしんみりとざわざわ感を味わえて満足。
坂口安吾の作品を再読したくなるほどの読後感。-
こんばんは(^-^)/
この作品の森見さんなら読めそうだなぁ。
走れメロスとかどんな感じだろう?
「藪の中」持ってるけどまだ読ん...こんばんは(^-^)/
この作品の森見さんなら読めそうだなぁ。
走れメロスとかどんな感じだろう?
「藪の中」持ってるけどまだ読んでいない。
どの作品も元を知っておいた方がいいよね?2019/03/28 -
けいたん♪コメありがとう(≧ω≦)
走れメロスは完全パロディだったかなぁ。
ライトな阿呆の世界って感じ♪
夜は短し…は正直ダメだった私には...けいたん♪コメありがとう(≧ω≦)
走れメロスは完全パロディだったかなぁ。
ライトな阿呆の世界って感じ♪
夜は短し…は正直ダメだった私には、これぐらいならギリギリいけたかな(笑)。
元ネタ知らなくてもオッケーだよん♪
逆に元ネタを読みたくなる人も多いみたい(* ॑꒳ ॑*)2019/03/29
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森見さんの本は、ぜんぶ面白いです。
文章の表現方法や物語の切り取り方など、とても上手くて、本にグイグイ入っていけました。
ぜひぜひ読んでみて下さい。 -
元の話は走れメロスぐらいしか読んだことないので、
新釈については語ることできないけど、
相変わらず癖のあるキャラクターたちがいい味をだしていた。
個人的には、「藪の中」が好き。
最後の終り方にきゅーーーーんと来たっ!!
そして、今回初めて気づいたけど森見さんの小説って作品どうしがリンクしてたりするんだね。
思えばずっと京都の大学を舞台だったし、普通に考えれば気づくのかもしれないけど、、ちょっと感動した出来事でした。 -
5つの物語からなる短編集。
「桜の森の満開の下」は面白かったです。
「山月記」と「走れメロス」しか原作を知らず、しかもその2作もうろ覚えであったため
どこがオリジナルで、どこに元ネタが活かされているのかイマイチ分かりませんでした。
しかしどれも予想がつかない&阿呆の世界という感じ。
文章がとっつきにくいなと感じました。
この作家さんの作品全体にいえることなのでしょうか?
機会があれば「夜は短し〜」も読んでみたいと思います。 -
大好きな一冊。
面白かった。
森見登美彦氏の物書きのセンス、最高。