- Amazon.co.jp ・本 (664ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396343170
感想・レビュー・書評
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少年のころ『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』というモノクロ映画を観た。下山国鉄総裁の血痕がルミノール反応で点々と夜光塗料のように浮かび上がった怖いシーンを思いだした。
戦後間もないGHQの支配下にある日本の社会がリアルに感じられ、人と組織は利権や政治的的思想が絡むとこうなるのだと思った。GHQはCTSとG2で争い、日本は右翼系元軍属や左翼があり、警視庁も捜査1課と慶應大学は自殺説、捜査2課と東大は他殺説で分かれる。(東大教授は他殺とは言及してない)
状況証拠では他殺と推測するのが自然だが、政治的圧力で迷宮入りとなった事件。
この本の冒頭「この物語はフィクションである」で始まるけど、実名も多く内容も辻褄が合うので本当にそうなんだと思ってしまった。ページ数も多かったけど、夢中で読めてしまう力作だった。
松本清張の「日本の黒い霧」も興味あり。
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柴田哲孝『下山事件 暗殺者たちの夏』祥伝社文庫。
柴田哲孝のノンフィクション作品『下山事件 最後の証言』の小説版。
『下山事件 最後の証言』に描かれた事実と事実の間を創作でつなぎ、事件そのものにフォーカスしたことでストーリーがスッキリし、登場する人物像もより明確になり、長編にも関わらず非常に面白く、読み易くなっている。
ノンフィクション作品の『下山事件 最後の証言』を振り返ると、下山事件に著者の祖父が関与したのではないかという親族の証言を発端に謀略の真実に迫るといった内容だった。つまり、本作を描く上で、既に材料と答えは出揃っており、全くストーリーにブレは無く、結末も明確になっていることが面白さと読み易さにつながっているようだ。
敗戦後、GHQ占領下の昭和24年7月5日、初代国鉄総裁の下山定則が失踪し、翌日、線路上で礫死体となって発見される。 事件の背後にあった謀略の真実は…
本編の最後には登場人物たちのその後が紹介されている。解説は池上冬樹。-
いつもレビュー楽しみにしています。
下山事件 最後の証言が面白かったので、小説版も読んでみようと思います。いつもレビュー楽しみにしています。
下山事件 最後の証言が面白かったので、小説版も読んでみようと思います。2017/06/20
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作者は実行犯と思われる男の孫。
小説になっているからこそ、迫力あり。一般人が知りようのない『闇』は深く、今も日本社会を裏で支配しているのかもしれない。。。 -
完成度が高くおかしなところを感じない。
フィクションということで細かいところまでしっかりと書けたのだと思う。 -
すごかった。
知識は全然なかったけど、あくまでも本作はフィクションなのだけど、これが「下山事件」の真相なのでは思ってしまう。
星が3つなのは、戦後の不安定で不透明な時代に自分たちの利権の為に、暗殺を企てる、簡単に消してしまえばいいと思う人達に吐き気を覚えたせい。
犯人がわからないこその事件なのだけど
つい、裁きを受けてほしいと思ってしまう -
読み応えあり。600ページ超の作品だか、内容に引き込まれて読み続けてしまう。あくまでフィクションという形で書かれているが、国鉄三大ミステリーの下山事件の実録なのではと思ってしまう。
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「下山事件 暗殺者たちの夏/柴田哲孝」10年前に出た「下山事件 最後の証言」を出来る限り実名(白洲次郎はNGっぽい)で戦後のあの事件を切り取り描く。
漫画BILLYBATでも描かれた下山事件をリアルに、本当にリアルに描いてます。お陰で頻繁に描写される喫煙シーン!これが実に美味そうに、辛そうに、ジリジリとした焦燥感を煙草で表してます。禁煙予定がある方にはオススメできない。非喫煙者の感想聞きたい。 -
この時代の知識が全くないのでとても興味深かった。一応小説ではあるがほとんどノンフィクションに近い。作者は登場人物の1人の親族であり、とても細かく事件の事を調べている。戦後日本を占領していたアメリカ軍にも覇権争いがあり、日本の政財界で暗躍し利権を牛耳る者たちもそれを利用して、その結果の一つが「下山事件」なのだろう。満州で暗躍した諜報部の工作員たちが、そのまま戦後の日本で同じように陰謀を企み暗殺等を引き起こしていたことが恐ろしい。
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前著『下山事件 最後の証言 完全版』はノンフィクションであったが、ノンフィクション故に書ききれなかった背景をフィクションで埋めてゆく。
昭和史最大の謎、下山定則国鉄総裁暗殺事件。
600ページ一気読み。
久しぶりの☆5だな。読み応えが半端ない。
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戦後昭和史最大の謎と言われる未解決事件、下山国鉄総裁死亡事件を小説化。著者はすでにノンフィクションとして下山事件を取り上げており、そこで書ききれなかった想像、推理をフィクションという形で世に問いたかったのだろう。
下山総裁が行動し、犯人たちが殺害計画を練り、実行する。小説ならではのリアルな情景が描かれる。特に事件発生日、下山が刻一刻と死に近づいていく様子は生々しい。これぞ、フィクションの醍醐味。
本書では下山事件の背景、動機、真犯人などが解き明かされるが、これはあくまでもフィクション。将来も下山事件の真相が解き明かされることはないだろう。が、戦後の混乱期にGHQ、共産党、労働問題、警察組織、法医学などが複雑に絡み合うこの事件のエンタメ性は抜群だ。エンタメ小説の第一人者であり昭和の文豪、松本清張が注目したのも納得の事件。