ジャンヌ Jeanne, the Bystander(祥伝社文庫か31‐3) (祥伝社文庫 か 31-3)

著者 :
  • 祥伝社
4.15
  • (7)
  • (9)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 97
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396348434

作品紹介・あらすじ

なぜ、お前は人を殺すんだ?
誰が俺たちを襲うのか?
ロボットによる殺人事件の真相は?
襲い来る謎の組織!
機械嫌いの刑事が“存在すべからざる”女性型ロボットとの逃避行の末に辿り着いた、衝撃の真実とは。

警視庁第一機動捜査隊の相崎按人は、ありえない殺人現場に遭遇した。ジャンヌという女性型ロボットが主人を殺害、死体を洗浄していたのだ。尋問では犯行を認めたが、動機は守秘義務を盾に黙秘。そして人間に危害を加えてはならない「ロボット三原則」には抵触しないと主張する。製造元への移送を命じられた相崎だったが、武装集団に襲撃され……。衝撃の近未来SF×ミステリ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 女性型ロボットの異常行動に駆けつけた警視庁の相崎按人(あいざきあんと、通称AA)。彼が見たのは、ジャンヌというロボットが主人を殺害し、死体を洗浄している光景だった!動機を問うも、ジャンヌは守秘義務を盾に黙秘し──。

    人間に危害を加えてはならない「ロボット三原則」が前提にあるはずだった。しかし、ジャンヌは自分の犯行が抵触していないと主張する。ジャンヌが主人をなぜ殺したかは早々に察しがつくはず。そこからが本番。プログラムが正常なロボットが三原則に抵触せずに殺人を行えるのだろうか?

    未来の日本が舞台。人口減少が進み、労働をロボットへと任せる国策が進む社会。もしこの犯罪が発覚すれば、その歩みがひっくり返ってしまう。そんな緊張感も絡めつつ、ミステリとしてどうなるかと思ったら、武装集団の襲撃で一転!AAとジャンヌの逃避行&サバイバル&哲学対話が始まる意外な展開へ!ぼくはてっきり取調室で刑事VSロボットの頭脳戦が繰り広げられるのかなと考えてたら全然違ったという(笑) SFなのに森でサバイバルしてたり、ロボットと涙や人間のことを対話していたり、そういうミスマッチ感が面白いし、テーマとも深く関わっている。

    ジャンヌの導き出した人間という存在の答え。善と悪。「善きサマリア人の法」。AIだからこそ、徹底的に論理的な答えを導き出してしまう。その結論はどうしようもないほど正しくて、人間にはどうしようもないことだった。人間は火を使えるように進化したが、その火を扱えるのが人間だけではなくなるとしたら──火刑に処されるのは誰か。

  • 河合莞爾『ジャンヌ Jeanne, the Bystander』祥伝社文庫。

    感動の近未来SFミステリー小説。

    非常に面白い。アイザック・アシモフが提唱した『ロボット三原則』への挑戦が1つのテーマになっている。AIにより自ら考えて行動するロボットは自らの思考により『ロボット工学三原則』の壁を乗り越えて行動する。

    ロボットが殺人を犯した理由は……

    殺人現場に呼び出された警視庁第一機動捜査隊の相崎按人は、ジャンヌという名前の女性型ロボットが主人を殺害し、風呂場で死体を洗浄する現場に遭遇する。

    相崎がジャンヌを尋問すると犯行を認めたものの、動機については守秘義務を盾に黙秘した。その上で、ジャンヌは人間に危害を加えてはならない『ロボット工学三原則』には抵触しないと主張する。

    製造元の仙台市の工場へジャンヌの移送を命じられた相崎だったが、高速道路で武装集団に襲撃され、ジャンヌと共に逃走する。

    ロボット開発を巡る陰謀と感動のラスト……

    本体価格900円
    ★★★★★

  • 人型ロボットは未来の象徴!
    21世紀も23年目を迎え、車の自動運転は目前で、化石燃料からの脱却や、遺伝子治療や遺伝子改良の技術も日進月歩の如く着実に前に向かって進んでいる!
    しかし、コロナやAIDSと癌などは克服できず、第二次世界大戦以降の冷戦は平和と民主主義を守ると称して民主主義の押し付けを勧めながら戦争を進めている!
    色んな国の軍事予算が科学技術の発展に使えたら、地球の温暖化への解決策や、来るべき食糧水不足に何らかの打開策が打てるのではと思ってしまう・・・


    本作品は2060年代の人口減少に歯止めがかからない日本が舞台となっており、人口減少の打開策として産業用ロボットが産み出されていた!

    家事用のロボットのジャンヌが自分の主人を殺してしまう?
    しかし、ロボットは『人間に危害を加えてはいけない』というプログラム、所謂ロボット三原則に基づき起動できるようになっており、人間を殺すことはおろか怪我をさせる事すらできない仕様となっている?
    主人公の警視庁第一機動捜査隊の相崎は人を殺してしまったロボットのジャンヌを護送することになるのだが・・・

  • エンタメ成分を多分に含んだ娯楽小説。
    本屋で見かけた時に「ほほう」と思ってあまり深く考えずにレジへ持って行ったのだけれども、なんだろうなー。400ページ強、あっという間に読めるのはいいんだけど、Amazonのレビューにあるような「ページを繰る手が止まらない!」みたいな感覚は私には起こらず、全体的に薄っぺらい感が否めず残念な印象。
    おお、大規模アクション始まる?あれ、もう終わり?みたいな。
    ついにアンドロイドが人を殺した理由を突き止めた!!え、それ?みたいな。
    ネタバレは避けるけど、いや、殺すに足る十分な理由があったんだけどさ、わざわざアシモフのロボット三原則を仰々しく持ち出してきた割には、そこまで哲学してないかなー、もうちょい考えさせてくれていいんじゃないかなーっていう感想。
    あとは文体が平成初期の娯楽大衆小説のような感じで、その若干の時代遅れ感というかやめろよいまさらそういう文体恥ずかしいよっていうところも残念ポイント。
    いや、面白いんだと思う。面白いんだと思うんだけど、なんだろう。うん、思ってたんと違った。

  • ロボット三原則があるにも関わらず殺人を行ったロボットの犯行理由、原則の回避方法を巡るお話

    以下、公式のあらすじ
    ---------------
    彼女は、なぜヒトを殺せたか?
    改変不能の「自律行動ロボット三原則」を埋め込まれ、バグもなく正常な家事ロボット〈ジャンヌ〉。
    “不可能な殺人”を犯した彼女に対峙した刑事が、衝撃の事件の先に見たものとは――
    まさに今読むべき、大興奮のSF×ミステリ・エンターテインメント!

    「私は、自律行動ロボット三原則に逆らう行動はできません」
    人口が5000万人まで減少した2060年代、ロボットの存在は珍しいものではなくなっていた。
    ある日、警視庁の刑事・相崎按人は“ありえない”現場を目撃する。
    政府主導で開発された家事用人間型ロボットが主人を殺害し、風呂場でその死体を洗っていたのだ。
    〈ジャンヌ〉と名付けられたそのロボットにも、人間に危害を加えることを禁じる「自律行動ロボット三原則」が組み込まれ、絶対に人を殺せないはずだった。
    バグが疑われたが、科捜研での検査では異常なし。
    急遽、製造元のJE社への護送を命じられた相崎は、道中、謎の武装集団の襲撃に遭う。
    その絶体絶命のピンチから相崎を救ったのは、なんとジャンヌだった……。
    ---------------


    犯行の現場の状況から、物語の定番の展開が推測できてしまう
    それを基に原則が回避できた理由も容易に想像がつく
    終盤のあのセリフまんまを序盤に思いついてしまう自分の物語摂取量が嫌になっちゃうね

    でもまぁ「どうやってそこに至ったのか?」という予測はちょっと外れたかな
    シェリーの神格化めいた展開ではなかったですねぇ
    聖書での殺した人数の最多は神という余計な知識がある故か……

    襲撃者達の背後の存在も、殺人ができるロボットを欲していて、それなりの権力を持っているという条件なら大まかな該当組織は一つでしょうよ

    なのでストーリーとしてはまったく意外な点がなかったけれども
    読み終えるとまるで哲学書を読まされたような読後感


    襲撃者を撃退した際にジャンヌが語ったフレーム問題回避の説明
    思考プロセスがを有限に設定されているからというけど、5段階というのはプロセス数が少なすぎないか?
    もしくは、副次的な事象を細かく分ければいくらでも人間を害せるように思える

    このセリフ自体がフェイクの可能性もあるんだけど、ここで敢えてジャンヌが「嘘」をつく必然性が思い浮かばない
    という事は、正規の思考ルーチンなんでしょうねぇ
    ってか、本当に危ういな


    リアルにAIの法整備が行われるケースを考えると、かなり難易度が高いのを実感する

    今更ロボット三原則なんて単純なものは採用しないだろうけど
    今作のような大原則があったとして、附則や細則の文言や言葉の定義が難しい

    何をもって対象を判別するのか?という問いの絶対的な正解はない
    世の中にあふれる他のSF作品でも、アンドロイド、サイボーグ、ヒューマノイドの人権に関する議論がされてあったりするし
    明確な定義ってその時代や社会背景によって如何様にも変化しうる


    リアリティという観点では杜撰な設定だけど、思考実験としては面白い題材でした

  • めちゃくちゃ面白かった。
    こうなってもおかしくないなと思う未来で起きる、人間に危害を加えられないはずのロボットの殺人。
    哲学的だし、色んなことについての理解だったり、考え方だったりがすごく深くて、読んでよかった。

  • 素晴らしいストーリーだった。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

河合莞爾
熊本県生まれ。早稲田大学法学部卒。出版社勤務。
二〇一二年に第32回横溝正史ミステリ大賞を受賞し『デッドマン』でデビュー。他の作品に『豪球復活』(講談社)、『デビル・イン・ヘブン』『スノウ・エンジェル 』『ジャンヌ』(祥伝社)、「カンブリア」シリーズ(中央公論新社)などがある。

「2023年 『カンブリアⅢ 無化の章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

河合莞爾の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×