伝統の逆襲: 日本の技が世界ブランドになる日

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396612900

感想・レビュー・書評

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  • 日本、イタリア、ドイツ、アメリカなど国々ごとの「ものづくり」にその国の成り立ちや国民性が表れていてそれぞれ異なるのは興味深い。日本の「ものづくり」の良さと課題の考察もなるほどと考えさせられるものが多い。

  • [ 内容 ]
    世界をきわめたデザイナーが実践する「職人技の復権」と「ブランド戦略」のすべて。

    [ 目次 ]
    1章 カロッツェリアの時代―日本の「職人のポテンシャル」を生かすために(なぜ私は世界最高のデザインチームを離れたのか;イタリアの「ものづくり」を日本に持ち込む ほか)
    2章 世界の「ものづくり」の現場から―アメリカとヨーロッパでの体験から日本を見る(ゼネラルモータースからの奨学金;三年連続の社内評価第一位 ほか)
    3章 「もの」に宿る「いのち」―「匠の技」と「日本文化」が大切にしてきたこと(イタリア式の「ものづくり」は日本が「本家」だった;ブルーカラーの国、日本 ほか)
    4章 地場産業は再生する―日本に持ち込んだイタリアの「ものづくり」の概念(イタリアの中心企業群、その強さの秘密;有名無実と化した「地方の時代」 ほか)
    5章 「日本の技」を世界ブランドに―国際化の時代にこそ求められる伝統文化(日本文化を切り口にしたからファッション・デザイナーは海外で成功した;「山形工房」がパリの見本市で賞賛された理由 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 資料番号:010999555
    請求記号:502.1/オ

  • 奥山氏の他著作に比べると画が少ない。
    だが、著者の強いデザインへの意識は一貫しており、非常に刺激を受ける。

  • 日本の技が世界ブランドになる日

    ・シンプルで使いやすい「もの」をつくるには
     強力なコアになる部分があって初めて他を「切り捨てる」価値が出てくるのだ。

    ・アメリカはビジネスの可能性をかぎ分ける感覚が鋭い反面、
     味覚という感覚には鈍感。なぜ、その料理がおいしいか、説明が必要になる。
     美に関しても、なぜこれが美しいか、説明が必要。
     主張が強い経営者の中には、本当はものすごく味覚音痴なのにもかかわらず、
     味がわかると思っている人がいる。
     「自分はこれが好きなんだ」と大声で主張していると、
     間違っていても会社全体が、うまいうまいといってしまう面もあるのがアメリカ。
     微妙な違いを説明して成立するのが最近の世界の「ものづくり」ともいえる。

    ・「想像力」と「犠牲心」は日本人の非常に大きな特徴。
     「想像力」=思いやり。
      アメリカのマーケティングは属性からお客を捉える。
      日本では、それに加えて、まだ見ぬお客を想定し、いろいろな解決案をつくりだしていく。
     「犠牲心」
      全体を見て、何が大切なことかを知る。
      そして自分はどういうポジショニングかを見きわめる。
      自分が何かを我慢し、犠牲になることで、「大切なこと」をつくりだす。

    ・アメリカは即物的な「もの」をつくってしまうので深みが無い。
     最初だけちょっとおいしくてだんだん味が薄まり、
     味がなくなったところで終わる「チューインガム・プロダクト」。

    ・どうやって消費者に買ってもらうか、販売に高い戦略性と実行力が伴わなければ、
     世界で評価されるようなレベルの高い製品を作ってもヒット商品にはならない。

    ・日本ではデザイナーと称さず、「コンセプター」という言葉を使っている。
     「デザイン・プロデューサー」という呼び方を提案している人もいるが。

    ・日本人の問題解決能力は非常に高い。反面、問題を「生み出す人」がいない。
     平たく言えば、質問する人。
      作り手の理屈をあえて無視して、未来の顧客にとってどういう疑問が存在するかを考える。
      問題も不満も事件も生じず大過なく過ごしているうちに、
      気がつけばいつの間にか低空飛行ということが増えてきた。
      問題点を洗い出すことで解決策はほとんど見えてくる。
      だから質問し続けることが大きな意味を持つ。

    ・ブランドとは、消費者からのある程度の期待感があって、
     それに対してつくりてが応えるだけでなく、予想以上のものがある商品。
     つまり消費者とつくり手の間の「契約」。

    ・フェラーリの顧客の多くは一代で成功した人たち。犠牲にしてきた自分の過去を否定したがる。
     代償のように「他人の過去」が欲しくなる。
     フェラーリの過去を、その神話性を買おうとするのである。

    ・ヨーロッパでは主体的な価値観で買うが、日本では相対的な価値観でものを買う。
     だから流行に左右される。

    ・「狩猟的ものづくり」の限界に来た。
     「農耕的ものづくり」を真っ先にしなければならない。
      このような商品、このような『もの』を作りたいというビジョンをまず描くこと。
     「ピンポイントの開発」をしていかないと、深さにしても時間にしても間に合わない。
     「夢」をもつ。
      一生懸命想像する。与えられた企画書以上の「もの」が生まれてくる。
      日本の文化的背景と哲学を持ちながら、現代の生活に適合した製品は常に求められる。

    ・「クリエイティブクラス」とは自分で考え、想像し、創造できる人材。

  • デザイナーとは
    必要ないけど欲しいもの
    職人

  • かつてはイタリアのデザイン会社ピニンファリーナに属し、イタリア人以外ではじめてフェラーリをデザインしたのが著者の奥山氏。

    彼は本書の中で、日本は職人の国イタリアに負けないくらいの技術を有しながら、技術がブランドに結びつかずブランドの域まで育たないことに疑問を持ち、技術をブランドに発展させていくにはどうすればいいのか、精神面・ビジネス戦略面・社会構造などのあらゆる角度から考察して、提言をしています。

    印象に残っているフレーズの一部を紹介します。

    日本人はもっとコミュニケーションを重視すべきである。特に上司と部下の関係においては、「上司だから」命令するのでなく、「自分は相手より経験を積んでいて正しい判断ができるから自分個人として言っているんだ」ということをコミュニケーションで理解させなければならない。

    いくらいい商品をつくっても、販売力が伴わなければビジネスにならない。世界に通用する商品にもならない。

    販売が日本の「ものづくり」の弱点だと私は指摘したが、こうした主体性のない価値観をめぐる国民性も、弱点を克服できない背景のひとつである。産むのは「ものづくり」に関わる人間でも、ブランドはあくまで顧客が育て上げるのだ。

    このほかにもありますがこれくらいにとどめておきます。

    フェラーリをデザインするという一生の中での大仕事をやり遂げながらも、また新たな挑戦に挑んでいく姿がカッコいいです。

    常に前を向き挑戦し続ける人生。そんな人生を僕も送りたいです。

  • 職人(ZUKでは現場の作業者か?)に不足しているのは、コミュニケーション能力なのか?彼らが既に持っている答えを引き出すような質問をすることが、世界に通用するブランド品(Crの品質の向上)につながるのだろうか?そうかもしれないと思う反面、そこまで考えて仕事をしているのかなとも思ってしまう。

  • 奥山清行
    GM、ポルシェなどでカーデザイナーを手がけ、現在は日本の地場産業の再生目指し、メガネや木工家具や鋳物の製造販売を手がけている。

    本の中で、日本企業、ひいては日本人がこれからどうあるべきかについて、一つの解答を示している。

    日本とイタリアはある意味で似ている。
    それは、伝統工芸に勤しむ職人が多いことだ。
    イタリアはそれゆえに、企業の80%が中小企業で社員数十人といった会社が多い。
    それらの会社は、フェラーリの一部品を担当していたり、その会社ンお職人にしかできない技術も多々ある。
    フェラーリという車は、イタリアの職人たちの技術の結集であり、イタリアという国がわかる商品になっている。
    当然、技術を持った職人たちは尊敬され、それに相当する給料をもらっている。

    では日本はどうだろうか。
    日本における職人は、「生産労働者」つまり、ブルーカラーの人間と捉えられがちである。
    かつてはメイドインジャパンとして信頼を勝ち得た商品たちは、これら生産労働者の方々の努力の賜物であった。
    しかし、物は大量に生産され、コスト競争に至る。
    日本の技術は高い、ただ、消費者が求めるのはコストであり、本質的な能力が備わっていれば、韓国製でも中国製でもよい。
    判断基準に、日本の技術力の高さがそこまで反映されないのだ。
    つまり、日本の製品には、「日本という顔(日本の文化、企業の文化、地方の文化)」がないのである。

    日本の「ものづくり」が抱える3つの問題を指摘する
    ①狩猟型ものづくりから農耕型ものづくりへ
    ②クリエイティビティのインフラが企業内にのみ抱え込まれている
    ③技術継承の問題

    ・今ある技術でどうするか、ではなく、何を作りたいか、から始めること
    ・ものづくりに日本の文化、地方の文化をもたせること。それが一番の差別化である(三宅一生氏などのファッションデザイナー成功者はみな、日本文化を切り口にしている)
    ・生産労働と知識労働という分け方を、クリエイティブな業務に関わる人達、と、そうでない人たちに分ける
    ・ブルーカラーといわれる生産労働者から知識の抽出を行う。つまり、日本人は生産労働者と言われる人ほどクリエイティブな面をもつ(伝統職人、トヨタの"カイゼン"など)

    まとまらん

  • 欧米の経営マネージャーには自分がいなくても成り立つような組織を作ろうとするにんげんはまずいない。

    ミリが分からないアメリカ人。1インチは2.54センチ。

    日本人は想像する能力に長けている。

    Japan =漆器の意

    日本人は物に対する尊敬がある。

    需要より1台少なく作れ。顧客情報が集まりブランドに相応しい349人を選んだ。

    深澤直人 吉岡徳仁

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著者プロフィール

Ken Okuyama Design代表

「2013年 『100年の価値をデザインする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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