無実の君が裁かれる理由

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635749

作品紹介・あらすじ

なぜ冤罪は生まれるのか?
曖昧な記憶 自白強要 作為 悪意……
人間心理の深奥を暴く!
青春&新社会派ミステリー!

私が疑いを晴らしてあげる――突然、同級生へのストーカー行為を告発された大学生の牟田幸司。身に覚えはないが、“証拠”を盾に周囲は犯人扱いだ。追い詰められた幸司を救ったのは、冤罪を研究する先輩・紗雪の一言だった。幸司を陥れた“証拠”とは何なのか? 調べを進めると、目撃証言や記憶など人間の認知が驚くほど曖昧なものだったことが判明。幸司の疑いは晴れた。真犯人は別にいる、それは誰だ? 謎を追う二人の前に、さらなる事件が待ち受けていた!――「無意識は別の顔」

感想・レビュー・書評

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  • 初めて読む作家さん。
    タイトルから重苦しい話なのかとドキドキしていたが、意外と爽やかな結末だった。

    ストーカー行為、ドローン破壊、電車内での痴漢行為。
    冤罪を晴らすために奔走する裁判官の息子・牟田、父親が殺人容疑で裁判中に自殺した紗雪、紗雪の父親に母親を殺されたと信じて憎んでいる美兎(みと)。

    被害者や真犯人と繋がりがあるならともかく、ただ通りかかっただけ、たまたまそこに居合わせたというだけで罪を着せられては堪らない。
    どう防げば良いと言うのか。
    今の時代、人の口だけではない、SNSであっという間に不確かな情報がさも真実のように駆け巡る。
    現実にそうしたデマに苦しみ被害を訴える事件もよく見聞きする。
    決して他人事ではない、いつ自分に降りかかるか分からない。
    有罪を立証する以上に無実を証明することの何と難しいことか。

    この作品では紗雪や美兎の優秀さや人脈の広さで都合よく聞き込みや調査が進むが、現実には警察や弁護士、探偵などのプロでもこう上手く行くかは疑問。
    また冤罪が晴れたところで、罪を着せられた人の生活が元に戻ることはかなり難しいだろうことも想像出来る。
    この作品では犯人扱いされた人々を信じてくれる人々がいたり、冤罪が晴れた後に謝って元の関係に戻れたりしているが、そう上手く行く例は少ないだろう。

    犯人扱いした人々は自らの勝手な正義感で犯人扱いした人を中傷し、距離を置き、時には暴力に訴えたりもする。
    そうやって追い詰められた人は、中には心が折れ紗雪の父親のように命を断つ人もいるかも知れない。

    この作品では犯人扱いした当人たちが謝罪し吹聴した人々に対して誤認だったことを伝えているだけ救いがある。
    でも現実世界ではここまですることはなかなかないのではないか。ましてや一度広まったSNS情報や噂はなかなか消えない。
    冤罪が晴れたところで犯人扱いした人々が謝ってくれ元の関係に戻ることも難しいだろうし、職場や学校に戻れるかも分からない。
    それを考えると一つの罪が巻き起こす影響や被害は恐ろしい。

    牟田が割りと地味なキャラクターながら、裁判官の父親の苦悩や葛藤、激務により追い詰められていく姿を絡ませることで、また第一話で冤罪の当事者になることで冤罪事件に大いなる興味を持ち冤罪に苦しむ人々を助けたいと考える過程は説得力があった。
    また犯人扱いされた側だけでなく事件の被害者をきちんと思いやるところも好感が持てた。
    また紗雪と美兎を対立させてきた事件の真相やその結末も気になって一気に読めた。

    先に書いたように都合良く出来た部分もあるが、せめて小説の世界くらいこういう結末があっても良いと思えた。
    現実世界もこういう救いがあれば良いのだが。

  • 主人公の牟田は、突然、身に覚えのないストーカーの容疑をかけられてしまう。しかし、彼のアルバイト先のイタリアンレストランの常連客である紗雪は、大学で冤罪の研究をしており、彼の冤罪を晴らしてくれる。そこから、2人が様々な冤罪を暴いていくお話。

    冤罪って結構簡単に起きてしまうんだな、怖いなと思った。ドラマ化したら楽しそうだと思った。

    余談だけれど、このイタリアンレストランの料理がどれも美味しそうで、終始よだれが止まりませんでした…

  • 冤罪をテーマにした連作ミステリ。些細なことで疑いをかけられた人たちが失うもののあまりの多さと、苦悩や絶望が痛々しくて、だからこそ冤罪は起こしてはいけないものなのだけれど。それでも人間だから間違うことはあるよね……そして、冤罪をかけられた人を救うと同時に、被害者も救わなければならない、というのはなかなかにハードルが高いことなのですが。そうか、そっちも重要だよね、と気づかされました。
    お気に入りは「無意識は別の顔」。個人的には人の顔を覚えるのがかなり苦手なので、仮に目撃しても「絶対にこの人です!」だなんて断言できる勇気はないのですが。なるほど、こうして目撃証言勘違いのメカニズムが形作られるんだな、ってのは勉強になりました。本当に人の記憶ほど当てにならないものってないのかもしれない。

  • "冤罪"がテーマのストーリーで、いくつかの短篇が繋がって、最後にまとまるタイプの展開。
    一つ一つの話もおもしろかったし、最後は一筋縄ではいかない展開もあって、一気に読めた。
    ただちょっと説明が粗い…、「素晴らしい推理で解決した」みたいな、適応な説明とか、事実の後出しみたいなところがけっこうあるのが、ちょっとばかり残念でした。

  • その後…どうなるのかな?

  • +++
    私が疑いを晴らしてあげる―突然、同級生へのストーカー行為を告発された大学生の牟田幸司。身に覚えはないが、“証拠”を盾に周囲は犯人扱いだ。追い詰められた幸司を救ったのは、冤罪を研究する先輩・紗雪の一言だった。幸司を陥れた“証拠”とは何なのか?調べを進めると、目撃証言や記憶など人間の認知が驚くほど曖昧なものだったことが判明。幸司の疑いは晴れた。真犯人は別にいる、それは誰だ?謎を追う二人の前に、さらなる事件が待ち受けていた!(「無意識は別の顔」)。なぜ冤罪は生まれるのか?人間心理の深奥を暴く!青春&新社会派ミステリー!!
    +++

    冤罪事件は、身近なところでも案外起こっているのだな、というのがまず初めの印象である。そんな、身の回りで起こる冤罪から、実際に裁かれて刑が確定してしまった冤罪まで、大学生の主人公・牟田が巻きこまれながら、先輩・紗雪のアシスタント的な立ち位置で解き明かしつつ、彼女の抱える屈託をもほぐしていくことになる。人の記憶の不確かさや、思い込みの恐ろしさにも、改めて気づかされる。興味深い一冊だった。

  • 目次もなにも見ずに読み始めたので、最初は主人公が冤罪でずっと苦しい思いをする話なのかと思ったら、短編で良かった。思ったより読みやすく、冤罪が起きる周囲の人間の心理など描かれていて興味深く読めた。

  • もっとドロドロなのを期待してたが、何だか軽い青春ミステリーでした。冤罪を証明するのはほんと時間と手間がかかるよね。特に痴漢冤罪は。

  • 冤罪がテーマの連作短編集。

    たまたま主人公が出会った事件の容疑者は冤罪ばかりで疑いを晴らすこともできましたが、現実ではこうはいかないでしょうね。
    全ての事件が正しく処断されるのを、もっと言えば悲しい事件など起こらないことを祈るばかりですが。

  • なぜ冤罪が生まれるのか、4つの連作短編集。曖昧な記憶、作為や悪意、人間心理の深淵にあるものは。冤罪という深みに抗いきれない怖さがあった。誰も無実を信じてくれないって本当に怖い。

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著者プロフィール

2011年、『僕はお父さんを訴えます』で第10回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞してデビュー。14年、『ボランティアバスで行こう!』が名門ミステリファンクラブ「SRの会」13年ベストミステリー国内第1位に選ばれる。著書に“スープ屋しずくの謎解き朝ごはん”“さえこ照ラス”“レシピで謎解きを”の各シリーズ、『映画化決定』など。

「2023年 『無実の君が裁かれる理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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