妻の終活

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 466
感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635763

感想・レビュー・書評

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  • フォロワーさんがいいねをされていて気になった一冊。

    昭和世代。私の両親くらいの世代かな。
    男尊女卑甚だしい時代の夫婦。
    夫は日々仕事に明け暮れ、家庭には見向きもせず、妻は家のことを隅から隅まで請け負う。

    まもなく70歳になろうという一之瀬廉太郎は定年まで勤めあげた製菓会社で嘱託として働いていた。家のことは専業主婦である杏子に任せきりになっていた。

    ある日妻から病院の付き添いを頼まれるがにべもなく断ってしまう。
    帰宅後、妻は末期がんで余命一年と宣告されたと告げる。呆然とする廉太郎に長女の美智子は「お願い、もうお母さんを解放してあげて」と泣きながら訴えるのだった――。


    廉太郎には二人の娘さんがいるのだが、どちらの娘も大人でかっこいい。
    特に長女の美智子は、言いたいことをちゃんと言い、母親や子供をしっかり守れる。

    最初は最低最悪親父だった廉太郎が、次第に変わっていく。

    この物語は物語でなく、多くの場合現実なのではないのか?と思ってしまった。

    家のこと全てを女性に任せっきりにしている男性には是非とも読んで頂きたい一冊。

    • bmakiさん
      さてさてさん

      週に3冊読めるのも凄いのですが、さてさてさんの感想は、それだけで一つの小説になりそうな文章量で(^◇^;)

      図書館...
      さてさてさん

      週に3冊読めるのも凄いのですが、さてさてさんの感想は、それだけで一つの小説になりそうな文章量で(^◇^;)

      図書館にでもお勤めなのかと思うくらい、いや実は小作家!?
      とにかく凄い熱量で。いつも圧倒されます。
      それをずーっと続けてられていて、本当に尊敬してしまいます。凄い!(*^▽^*)

      さてさてさんはこのお父さんとは対極の方なのですね(^^)
      文章に優しさを感じられます(^^)

      夏休みはお出かけでしたか?
      私も本来なら旅行の予定でしたが、台風の所為で縮小せざるを得なくなりました。。。間の悪い台風めーーーー( *`ω´)
      2023/08/14
    • さてさてさん
      bmakiさん、「優しさを感じられ」とおっしゃっていただいてありがたい限りです。パターンで読書&レビューを繰り返していると煮詰まる時もありま...
      bmakiさん、「優しさを感じられ」とおっしゃっていただいてありがたい限りです。パターンで読書&レビューを繰り返していると煮詰まる時もあります。マンネリ感を覚えると、そこまでだと思いますし。それでもここ三年ほどのコロナ禍は、そうせざるを得ない日々でしたので、私の読書&レビューは最適なタイミングだったとつくづく思います。
      台風は嫌なタイミングでやってきましたよね。なんだかおかしな天候が当たり前の日常になってしまってなんだかなあと思います。今年も秋なく冬になってしまうのか、まあもうしばらく夏の賑わいを楽しみたいと思います。
      2023/08/15
    • bmakiさん
      さてさてさん

      はい(^^)
      いつも穏やかなレビューでしたので、さてさてさんのレビューを読み始めた頃は、さてさてさんは女性だと信じて疑...
      さてさてさん

      はい(^^)
      いつも穏やかなレビューでしたので、さてさてさんのレビューを読み始めた頃は、さてさてさんは女性だと信じて疑ったことがありませんでした(^o^)
      とても文章が柔らかいイメージです(*^▽^*)

      コロナ禍でテレワークが主流になって、自分ももしテレワークなら、パソコンを横に置いて読書に明け暮れていそうですが、悲しいことに私の職場は基本的にテレワーク禁止で(-。-;
      ちっとも読書量を増やすことができませんでした。。。

      しかしこの台風のおかげで、今だけ家でじっとしている時間をとることができ、いつもより読書できています(*^▽^*)

      台風は大嫌いですが、この読書出来る時間はとてもありがたいです(^^)
      2023/08/15
  • 余命宣告を受けたのは42年間連れ添った妻の杏子68歳…気がつけば夫の廉太郎は70歳、定年退職後も仕事を続けており、家庭を顧みることは全くしてこなかった…。夫婦に遺された時間は1年間、限られた時間を精一杯生きた妻と、妻のために奔走してるようで実は遺される夫のためのかけがえのない期間を描くストーリー。

    1つ、介護保険は申請すれば末期癌なら認定交付前でも使えます。もっと家族の負担にならない在宅での看取りができたのかもしれない…杏子はどっちがよかったのだろう?家族に排泄の介護をしてもらうより、仕事で入るヘルパーさんの方がよかったのか?それとも家族にそこは関わってもらえて満足だったのか…そう思うと、エンディングノートにはどんなことを記載したのか気になりますね…。

    最初は夫の廉太郎に対しての怒り、こんな時代錯誤的な夫によくも42年も連れ添えたなぁ…と、思わす杏子に同情しました!でも、杏子はすごいっ…自分が先立っても困らないだけの生活能力を廉太郎に遺して逝けたのだから…遺された家族同士が悔いのない看取りを一緒にできたことで、家族の絆も強く出来たんだと感じました。杏子が弱っていく姿や弱音を吐く場面には涙しましたが、「妻の終活」はうまくいったのだと思えました。妻が自分なら…思わず考えてしまいました。

  • 坂井希久子さんの現代小説、初めて読みました。

    泣いてしまった(ノ_<)

    余命一年、仕事以外何もできない夫。
    「仕事して家族を食べさせてやっている」
    「文句があるなら出て行け」
    定年退職後も嘱託として働き、会社には自分が必要だと…まるっと昭和の父親です。

    そんな夫が妻の死を受け入れていく…
    家事を覚え、庭の手入れをし、妻の介護をする。
    今までの自分を叱りながら…

    いゃ〜他人事じゃないわ(>人<;)

    感動の一冊でした!


  • 初読みの作家さんかと思いきや、アンソロジー2冊含めて本書で4冊目だということがブクログの自分の本棚内検索でわかった。
    本当にありがたいシステム。

    幸い私は病気ではないし、実父(昭和一桁生まれ・故人)>本書主人公廉太郎>夫、と程度の差こそあれ、本書は私にとって「あるある」感満載。
    終始、廉太郎に頭にきて、心の中で廉太郎を罵りながら読んだ。
    廉太郎よりも横暴だった実父に、私は本書の美智子や恵子(廉太郎の娘達)のような言動をすることは許されなかっただけに、美智子のセリフひとつひとつに共感しきりだった。
    一方、廉太郎と同じくらい家のことが何一つできない・やらない夫には、骨折した私も丁度最近美智子ばりにブチ切れたところ。
    本当に「あるある」、こういう夫「いるいる」。

    美智子、万歳!

    個人的にそういう風にしか感情移入できなかったので、本書が本当は「できた妻の終活」の話で感動的であるということは、他の方のレビューの方が正しいので、そちらを参考にしていただきたいところ。

  • 仕事人間で定年まで過ごしてきた夫。家のことは何一つ知らない、できない。何かあれば全て妻のせい。よくいる昭和の頑固親父。
    しかし、妻が不治の病にかかってしまい動揺する。
    妻も心配で一人になってもちゃんと生きていけるようにさりげなく教育する。
    威張っていても結局は妻の手のひらの上でぬくぬくしていたんだね。頑張れ頑固親父!

  • 内容紹介 (Amazonより)
    私が死んだら、この人は生きていけるでしょうか。
    余命一年を宣告された妻が、夫に遺す“最期のしごと"とは――。

    結婚四十二年、仕事一筋の男と家を守ってきた女。
    二人の間には積み上げられた「ズレ」があった。
    残された時間をどう生きるべきか……。
    別れを前にした夫婦の姿を描く傑作長編小説。

    「お前、死ぬのか」「ええ、そのようです」
    まもなく七十歳になる一之瀬廉太郎は定年まで勤めあげた製菓会社で嘱託として働いている。
    家事や子育ては二歳下の妻杏子に任せきり、仕事一筋で生きてきた。
    ある日、妻から病院の付き添いを頼まれるがにべもなく断ってしまう。
    妻の頼みごとなど、四十二年の結婚生活で初めてに等しかったのに。
    帰宅後、妻は末期がんで余命一年と宣告されたと告げる。
    呆然とする廉太郎に長女は「お願い、もうお母さんを解放してあげて」と泣きながら訴えるのだった――。

    夫はいつも気づくのが遅すぎる。妻は一人、準備を始めていた。





    廉太郎は仕事一筋で家庭を顧みないひと昔前の典型的な夫。
    どのようなストーリーなのか不安に思いながら 読み進めていましたが 廉太郎は思いのほか頭の柔らかい人でした。
    奥さんの最期をここまで思ってくれて 奥さんも幸せだったのではないでしょうか...
    娘2人との関係性も徐々に改善され 最後のひとときを家族で過ごせて 清々しく心の安堵がとてもある読後感でした。

  • 日に日に悪くなる 妻の体調を前に
    死を直視したくない廉太郎も
    現実を受け入れるしかなく
    半ば強制的に成長させられていきます
    気丈な妻が弱音を吐く姿には
    ほろりとさせられます
    廉太郎も 徐々には反省して
    態度が変わっていくので 
    まぁ 許せるかな

  • 余命一年を宣告された本人と家族の一年間。
    まさしく終活。
    死を受け入れた妻が残された家族、特に夫を思い、一人でも生きていけるようにと心を尽くす。
    自分の命があと一年しかないと覚悟した時、やっておきたいことは何だろうと考えさせられる。
    特別な事ではなく、普通の日常生活を穏やかに過ごしたい、なのだろう。

  • あまりに見事で綺麗で愛された最期だった。

    余命を告げられた妻をはじめのうちこそ実感として感じる事が出来ずにいた一ノ瀬廉太郎だった。
    家事が何も出来ない夫を見かねた杏子は、自分がいなくなった後を心配し、夫に家事を教える事を最期の仕事として、それを淡々と進めて行く。廉太郎はご近所付き合いまで教えられ、覚えて行くうちに妻がもう長くいられる訳ではないという事を実感し受け容れて行く。自分がこれほどまでに妻に頼り支えられ、妻を愛しかけがえのない人なのだと感じながら。

    一見すると夫、廉太郎は仕事一筋、自分中心で身勝手で亭主関白。確かにそういうところもあったのだろうけれど、しかしただそれだけの男であったなら、賢くて可愛い杏子が四十二年もの間黙って付いては行かなかっただろう。廉太郎という人の魅力、素直さや優しさや真面目さ、一昔前の男が故の頑なさや人としての可愛さや愛情の深さを感じていたから、ずっとそばにいられたのだと思えてならない。廉太郎自身そういう気持ちは元々、持っていたはずなのに気付かず、妻がいなくなるとわかった時に自分にとっての妻の大きさにやっと気付き、素直にその気持ちを認める事が出来た。ずいぶん遅いけれど。

    七十歳の夫が語る言葉として綴られているので、泣かせようという雰囲気は感じられないのだが、廉太郎がつる薔薇の手入れを習う辺りから、最期が迫っている事を感じ自然と涙が。
    娘の美智子、恵子と廉太郎に愛されながら過ごした最期の日々は、たとえ体は辛くても心は幸せだったのではないかと思う。余命を生きるという事はそんなに甘くはないだろうけれど、それもこれも杏子が大切にした温かい家庭だからこそ出来た事。

  • 余命1年と宣告された妻と夫の物語。
    この作品を読みながら、己の父と母を思った。
    父はこの作品の廉太郎のように、ほぼ何も出来ない。娘である私が同居していなかったら、どうしていたのだろうと思うことはある。

    ただ一年という歳月が残された、この家族が羨ましいと思う。私の母は原因も分からず、救急車で運ばれ、一月も経たずに息を引き取った。話せたのは、入院した日だけ。何度も危篤になり、母の願いを叶えて延命措置をやめてもらい亡くなった。

    これだけ時間がある人は幸せだと思う。羨ましいと思ってしまった。

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著者プロフィール

1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年、「虫のいどころ」(「男と女の腹の蟲」を改題)でオール讀物新人賞を受賞。17年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。著書に、『小説 品川心中』(二見書房)、『花は散っても』(中央公論新社)、『愛と追憶の泥濘』(幻冬舎)、『雨の日は、一回休み』(PHP研究所)など。

「2023年 『セクシャル・ルールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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