他人の家

  • 祥伝社
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本棚登録 : 361
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636388

作品紹介・あらすじ

『アーモンド』の著者が贈る、極上の短編集! 
ミステリー、近未来SFから、心震える『アーモンド』の番外編まで、珠玉の8編を収録

彼氏に振られ、職場をクビになり、賃料の値上げによって、今住んでいる部屋からの退去を余儀なくされた、踏んだり蹴ったりのシヨン。部屋探しのアプリで、格安の超優良物件に出会った彼女は即、入居を決める。格安なのには、理由があった――本来二人で暮らすはずの部屋を、四人で違法にルームシェアしていたからだ。
優雅な独り暮らしには程遠いものの、そこそこ不自由のない生活を送っていたシヨンだが、ある日、オーナーが急遽、部屋を訪れる。慌てた四人は共同生活の痕跡を消すべく、その場しのぎの模様替えをし、借主の親族のふりをするが……(『他人の家』)。表題作ほか、人間心理の深淵をまっすぐに見つめた、傑作揃いの短編集!

感想・レビュー・書評

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  • 8編の短編集。
    どれも人間心理を掴んでいるなあと…。

    zip〜家庭を築いた女の後悔ばかりのようで、身動きすることなく流されていく生活は膿んでしまっている。「家」から抜け出そうとしながらずっと出ることができない。これからも…。
    「このお話の終着点が、おまえだからだよ。」と孫娘に言ったのがこわい。

    アリアドネの庭園〜予測したくない未来。
    たぶんこれに近い未来かも…と思うとモヤモヤ。

    他人の家〜ルームシェアで暮らす部屋の不自由なところと値段に折り合うところ。だがそれも期限がある。どうする、どうなる…。

    箱の中の男〜アーモンドの番外編。途轍もない経験をすると他人の存在を行動を過剰に意識してしまうのに気づく。

    上記4作が特に心に残った。
    深くて濃い、短編なのにずっしりと感じた。

  • 低温で湿度の高い内容と文章に惹き込まれてしまうが、やはり短編集なのでアーモンドほどの衝撃は少ない。でも、癖になる文体。

  • 「アーモンド」が面白すぎて、それから、ソンウォンピョンさんの本を読むのが好き。
    「四月の雪」じんわりする話だった。結局、どういうことになったのか?離婚しないで戻れるなら、その方がいいなぁ。辛いことあったけど乗り越えてほしいと思った。
    「他人の家」
    駅近、スタバとシネコンが徒歩圏内の、最高に優良物件のマンション。
    だけれど、ちょっとありえない設定。ツッコミどころ満載で面白い。
    その広いマンションを借りている男の人が、部屋を又貸ししてシェアハウスに。
    でも本物のオーナーが、やってきて大変な状況に。
    まず、自分の大切な荷物は、ごみ置き場に置いてはいけない。持って行かれることを想定していなかったのか?浅はかすぎる。悲しい結末。
    「箱の中の男」
    これがいちばん心に残った。
    難しい問題。
    困った人を見たら助ける。
    正義感。これは当たり前のようだけれど、人を助けたことによって自分を犠牲にできるのか?
    トラックにひかれそうになった子供を助けて、一生寝たきりになってしまった兄。
    弟は、その兄の苦しい日々を見て、もう何事にも関わらない方が正解だと思ってしまうのは理解できる。
    加害者の気持ち、犠牲者の気持ち。
    両方を理解できた時に、誰かは喜び、誰かは辛い思いをすると、わかってしまった。
    そんな悶々とする中で突然、目の前に倒れている女性が。
    その場に居合わせてしまったことに後悔して硬直して何もできなくてただ立ちつくす弟。
    そこに現れた女の子は、学校で習ったと、心肺蘇生を始める。「AEDを持ってきて、救急車を呼んで!」と的確な指示も出してくれた。
    呼吸の止まってしまった女性を夢中で、蘇生した。2人で協力して。
    やはり人助けは、するべきなのだと思い直す弟。
    弟の知りたかった答えは見つからないままだけれど、心の中に吹く風は爽やかなものに変わったのだと思う。いい話だった。
    後書きで知ったが、「アーモンド」の少年が出てくる。弟が目撃した殺人事件が「アーモンド」のユンジェが経験した事件だった。その時の忘れられない表情というのが、なるほど!と納得してしまう。
    短編集だが、どれも印象的で、丸ごと良い本だった。

  • 本屋大賞翻訳小説部門にて
    『アーモンド』『三十の反撃』で二冠達成した
    ソン・ウォンピョンさんの新刊は、短編集♪

    人間心理と心の中枢温度がなめらかに混合し
    私たちの生きる世界そのものを描き出す。

    人間の裏側の様々な感情が
    重くくすんだ色を成しても
    そこから立ち昇るかすかな光が
    たしかな希望として胸に届く。

    この才能を、8つもの短編で味わえるのは至福。
    多彩な作風で描く、心織り成す短編集。

    あの韓国文学の傑作
    『アーモンド』のスピンオフは必見⸝⋆

  • 人間心理のおかしみを悲喜さまざま、細やかに、ジャンルを問わずに描き上げた短編集でした。人の心に踏み込む心理表現の巧みさがほかの作品同様卓越していて、文章を追うだけでしみじみと感じ入るものがありました。

    表題作では他人がエゴを滲ませながら厳しい日々をやり過ごさなければならない現実をビターに描き、「四月の雪」ではつかの間触れ合った外国人との交流により仄かな未来がそっと浮かび上がるさまを、「箱の中の男」では「アーモンド」作中の出来事と被らせながら辛い日々を送る青年のささやかな救いを与える。

    どれもが単純ではない人の心情を繊細に描き上げ、また、明快ではないけれどそっと未来を指差すような温かさを滲ませていて、そのやさしい著者の眼差しがとても素敵だと思いました。

    「アリアドネの楽園」は、超高齢社会を迎えた日本においても充分にリアルに差し迫った。SFの体裁ながらも近い現実を見透かしたような作品に感じました。

    どれもが少し毛色が違う趣を持ちながら、どの人物の心情にも寄りそえる。そんな、派手でもインパクトがあるわけでもないけれど、身近に携えたくなる作品集でした。とても良かったです。

  • 『アーモンド』の著者の短編集
    読みやすいが印象も薄い作品が多い
    そんなにもソウルに住まなくてはならないのか?と不安になるくらいだ
    息苦しいほどだった
    最後の『開いてない本屋』だけがファンタジーで好みだった

  • "たぶん僕は、相変わらず箱の中に潜んで安全な人生を夢見るだろう。すでに凝り固まってしまった大人の心はそう簡単に変わるものじゃないから。それでも、誰かに向かって遠く手を伸ばすことはできなくても、握りしめた手を開き、誰かと握手するくらいの勇気なら、ときどき出せたりするんだろうか。"(p.206)

  • 「箱の中の男」
    やっぱりそうだった。
    『アーモンド』のスピンオフ。
    ひとつの葛藤が止むことはない。
    「勇気」がその代償を負ったとき、
    その代償は誰が払うのだろう。
    そして、その代償と贖罪は
    いつまで続くのだろう。
    何もしないことが
    唯一の救いだとしたら
    それは何ともやるせないことだ。

  • 「箱の中の男」が特に好きだったのですが、番外編なのでしたか!また読み直したい。

  • 短編集ですが、どの物語も面白かった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。2016年、長編小説『アーモンド』で第十回チャンビ青少年文学賞を受賞。短編集に『他人の家』、長編小説に『三十の反撃』『プリズム』がある。現在、映画監督、シナリオ作家としても活躍している。

「2021年 『私のおばあちゃんへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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