ニセ科学を見抜くセンス

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  • 新日本出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784406059374

作品紹介・あらすじ

それって科学的根拠あるの!?EM、マイナスイオン、食品添加物…世間に氾濫する「効果」「安全」「危険」の真実とは。

感想・レビュー・書評

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  • 食品や、医療、薬の世界(市場)は、何が危険かよくわからない。例えば私自身、乳酸菌や味噌は身体にいいと思い込んでいるが、摂取量が適切か否かとなると分からない。マイナスイオン、水素水、各種サプリメントなど、??と感じるものは毒かも知れないので安易に信用しないようにしている。「○○は健康増進に良い」と言って何となくイメージ的に納得させられるような宣伝やTV番組が多いが、根拠とした納得できるデータは示されない。誰もが、自分に都合の良い情報ばかり見つけて、自分の判断を正当化しようとしがちだが、反対意見も知った上でどちらが正しそうかを考えることが重要であることを再確認した。

  • ※ネタバレあり&途中から口調崩壊してます。

    第1章:EM菌をめぐって
    EM菌の大統領とも言える比嘉照夫氏。EM菌(”有用微生物群”)は国内に信者が100万人いるとされる、ある新興宗教が開発したものであり、その効能については疑問視されているものの政治活動(2018年にある大臣の発言が話題になった)によって学校・農業分野などで着々と勢力を拡大している。研究開発を行っている比嘉は、EM菌は神様で万能であり、須らく人類はEM菌の恩恵を受けるべきという考えであるが対立意見が噴出している。しかし、その対立意見もどこ吹く風のようだ(2012年講演)。EM菌が効能をもたらすのはその波動によるものらしい。
    閑話:EM菌を作っているのは比嘉照夫氏が所属している研究所と、もともとEMの種菌を作っていた「サン興産業」とがあるが、後者の会社はかなりまともな対応をしているように思える。
    閑話休題して、EM菌入りの飲み物は健康に良いと言われる。しかしそもそも、「EM菌はサルモネラを殺す!」と言われて撒いていたのに逆に増えていた例を考えると、健康を害するだけのような気もする。ただ、この「健康を害している時期」はデトックスしている「好転反応」と言われている(この理論の段階でホメちゃんとかEMくんの信用性がアレだが。もっというと薬事法違反)。このドリンク、500mLで4500円ってパねえなおい。飲むといろいろとよくなるらしいっすよ。え?それってどうやって確かめたかって?波動だよ当たり前だろ。
    とまあ、ツッコミどころ満載なのだが、個人的に爆笑したのは、「ニセ科学の理論武装にトンデモ論使うよね」ってことで、「質量保存やエネルギーの保存等々を含め伝統的な物理学が根底からくつがえされるという科学教という宗教の崩壊」という文。ググっても出てこないので真偽はわからないが、これを証明できたらノーベル賞もらえますよ。

    第2章:マイナスイオン商品
    「マイナスイオン」と「陰イオン(negative ion)」は違う。マイナスイオンは1910年頃、Physical Scientistのフィリップ・レナルトが発見したもので、水滴が分割されるときに大きい方の水滴はプラスの電気を帯びて、小さい方はマイナスの電気を帯びるので漂っている滝の飛沫の微小な水滴がマイナスに帯電していることをさしている(レナード効果)。
    さて、マイナスイオンブームの火付け役は?それは納豆ダイエットで問題となった某番組が1999~2002年にかけて特集し、健康に良い、としたことが発端であると考えられる。その結果、たくさんのマイナスイオン商品が出現した。ゲルマニウムやチタンのアクセはマイナスイオンが出るから健康に良いとうたわれた。しかしなんやかんやあって法改正もされ、2006年には健康に良いブームは消え去ったのであった。
    あとトルマリンとゲルマニウムも根拠がないものとして挙げられている。いわしの頭みたいなものと考えてよいと思われる。
    教訓:テレビとかの健康情報や科学情報は信じすぎないように!どうせ視聴率とか放送時間重視で大切なことカットされてるぞ!

    第3章:水はありがとう、ばかやろうで結晶を変える
    『水からの伝言』という、水は↑みたいな性質あるんだぞ~っていうのを謳った本の目的は、波動カウンセリングの宣伝や波動測定器の販売のためである。こーんな馬鹿げてると思われていることでも、実験は容易であったので教育現場でバカ売れした。現在では結晶の形が変わった理由もわかっており、要は「撮影する時間が違ったから」。
    ちなみに波動測定器は、ちょっと高級なウソ発見器みたいなものである。

    第4章:水と健康とニセ科学
    水道水の基準に比べたらミネラルウォーターなんて甘すぎる。ヒ素でいうと、水道水は0.01未満に対してミネラルウォーターは0.05未満。あと検査項目が少ない。だからもっと水道水飲もう!
    「水のクラスターが小さいと健康に良い」とされているが、その発端は「うっかり口に出しちゃったから」的なことである。それが常識のように広まるとは怖い。
    水素水に関しては、きちんとした科学的評価が出るまではスルー推奨ということである。

    第5章:サプリメントの効果
    健康食品なんかはプラセボでよくなってるかもしれないし、意図的に良くなった人だけを抽出している可能性がある。本も当てになるものではない。
    食品と癌との関係も実際に調べてみると難しい。βカロテンが癌を抑制すると思われて調べられたが、実際は肺癌の罹患率を上げただけであった。あと、焦げを食べることによって癌になるには20000匹のサンマを食べて10~15年待たないといけない。「焦げを食べて癌になる」のはマウスの実験での話であり、人の場合は極端な量を食べないとならないのである。今は厚労省のページに「がん予防法」が載ってる。
    とまあ、健康と食品の因果関係というのを調べるのは難しいなあということであった。

    第6章:なんかもうすごい
    ホメオパシー→好転反応はお決まりパターンらしい
    血液サラサラ→実験レベルの話だし、そもそもあのキットだと赤血球が通り抜けられない。毛細血管の詰まりと大血管の詰まりの因果は不明
    経皮毒→毒手かな?
    足裏デトックス→そんなんもあるんだねぇ・・・。

    第7章:食品添加物
    第5章と同じ感じ

    第8章:デタラメ脳科学
    ゲーム脳って流行ったけど、あれを発表したのはずぶの素人だったんですねぇ。
    脳トレの場合、「脳トレ」そのものよりも、研究の際の説明でのコミュニケーションがいい影響をもたらしたと考えられている。外国で1万人調査したところ、「脳トレ」は何らトレーニングに寄与しないという結果となった。

    第9章:地震雲
    いま日本には「地震雲ウォッチャー」なるものが、毎日何十枚も写真を上げている。地震が起きたときに後出しで「ほらね?」とやるもうなものだ。

    第10章:だまされないために
    認知バイアスと確証バイアスというものがあることをまず知っておく。そして自分の考えを多面的に考察することが重要である。

  • ・前提として,「多くの人がニセ科学を信じてしまうのは,科学知識が不足していたり,理科教育が弱かったりするからだ」というのはある.
    ・EM菌やら,水への伝言やら,聞いたことのあった怪しい諸々を一通り,いかにデタラメかがわかった.デタラメだけなら良いのだけど,教育現場や行政・政府の活動に関与しているので,既に実害(トンデモ科学を子供に教えてしまうこと・税金をドブに捨てること)が出ているので,見過ごしてはならない,ということも認識できた.
    ・トンデモ科学は科学的ワードでそれっぽく説明したり,専門の実験装置を使ったりする科学的手法もどきをとる(∵無批判な人を説得できるから).しかし,科学的ワード自体が,常識的なものとは全く異なる(ex. 波動というワードは良く出るが,物理学等々の波動とは別物)し,その観測は科学的手法もどき(ex. それっぽい実験装置をあつらえて,中身は適当.嘘発見器レベル.)で裏付けしたり,確証バイアス盛り盛りの写真データを載せる(水への伝言が最たる例.結晶が崩れているときに写真をとるか,綺麗な状態で写真を撮るかの違い.).
    ・では,「(まともな)科学」,はどう定義できるだろうか?注目する事柄や仮説に対して,①先行研究を,あらゆる説について調べ,それが明らかにしていることと,明らかにしていないことを明確にする.②仮説を,客観的に論理的である道筋(それは,つまり既存の学問であるとも言える.新しい道筋で説明するならば,その道筋自体の妥当性を緻密に組み立てて,客観的に正しいことを保証しないといけない.)で説明し,必要に応じて実験的に裏付けを,客観的に信頼のおける手法(つまり,どんな素人であっても,必要な知識を揃えていくことで納得できる手法)によって行う.③同じ分野の研究者によって精査される(∵その正しさを判断できるのは,大抵の場合その分野に精通している人なので.素人にわかるように書いていたら,全ての研究発表が広辞苑のようになってしまって,科学が進展しない.).というステップを踏んでいるのが科学なのではないかと.
    ・一方で,そのステップは素人の付け入る隙がないので,まともな科学は敬遠されて,わかりやすくそれっぽいトンデモ科学が一般に受け入れられてしまう.だから,まともな科学をしている人は,素人にも分かるような情報発信も行う必要はあるのだと思う.(けれど,本書にも記載があるが,それは業績にならないので大抵の人はやらない.ならば,業績になるようにすれば良いのでは...?)
    ・認知バイアスとは,認知の中にある思考の偏りである.
    ・ニセ科学を受け入れてしまう心理的要因として指摘されているのが,①社会的な情報の(無批判な)受容(テレビで専門家が言っていたから) ②人の基本的な動機付け(環境を良くしたい,とか) ③見かけの実用性(科学的に間違ってても実用上利益のあるもの.血液型性格診断とか) ④具体的な体験(体験から,考えにあったもののみ切り出して,不都合なものは切り捨てる)
    ・ニセ科学は誰を狙うか,というと,先覚者(2% )・素直な人(20% 先覚者の言うことを素直にきく)・普通の人(約70%).残る10%の「抵抗者」は切り捨てる.
    ・認知バイアスの中でも,確証バイアス(自分の説を裏付ける都合の良いものを信じる)傾向は強くある(常に働いていると思った方が良い).自分では合理的にしっかりと考えていると思っていても,我々の思考は完璧ではないので,自分の説への批判的な意見も意識的に探して,必要なら自分の考えも修正したりする必要がある.
    ・『人には,今までの体験や知らないうちに学習して身につけた素朴理論を持っている.自分が気に入ったものは受け入れるが,気に入らない情報は欠点を見つけ出したりしてそれを排除した結果,「自分が正しい」となりやすい.』 =確証バイアス
    ・『途方もない主張には,途方もない証拠が必要である』
    ・『体験談はあてにならない.本当に効くかどうかは,人の集団を使って,ダブルブラインド法(試薬とプラセボを不明にして投与した上で検証を行う)などで科学的に調べなければならない.』
    ・つまり,地震雲ウォッチャーたちは毎日毎日,もうすぐ大地震が起こるかも,と警告し続けている...その警告はいつか必ず現実になる(地震は頻繁に起こっているので.).しかし,そんなものを予知とか予測とは言わない.
    ・例えば,地震雲については,日本地震学会が,地震雲については地震との因果関係は皆無とは断言できないものの,指摘の前に,他の気象条件からの検証が必要であることを指摘している.また,地震雲のメカニズムを十分に説明した学説はなく,帰納的に地震雲を定義づけるにしても,報告されている地震雲の定義や根拠が不明瞭・不十分であることも指摘している.
    ・「ジャーナリストと一般大衆は,満杯の餌箱に向かう豚のように地震予知の考え方に群がる.素人,変わり者,および公然と有名になりたがる詐欺師に,幸福な狩場が提供されている.」(リヒター.マグニチュード考案者の40年前のコメント.)

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99806644

  • 今までにあったいろんなニセ科学を書き連ねただけ。
    これらのニセ科学集を見たからと言って新しいニセ科学に対応できるとは思えない。
    10章のようななぜ騙されるかを深く掘り下げて欲しかった。
    「なぜ騙されない人がいるのかと考えるほうが適切」という考え方は重要だと思った。

    心理的要因として指摘されているのは
    1社会的な情報の無批判な需要:権威専門家の肩書で信頼してしまう
    2人の基本的な動機づけ:未知に説明をつけたいという気持ち
    3見かけの実用性:科学的正しさよりも実用性に流される
    4具体的な体験:認知バイアスにより体験が強化される

    -ニセ科学は「難しいものを安易に理解したい」という気持ちにつけいる気がする。

  • ◆きっかけ
    『各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと』p187で菊池誠氏がEMの章でおすすめ関連本として挙げていて。レビューを見たところ食品添加物についても触れられているようだったので気になって。2016/11/14

  • 通販の広告の大半は「ニセ科学」であるが、今後どうなのだろう?

  • 2016年4月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
    通常の配架場所: 開架図書(3階)
    請求記号: 404//Sa57

    【選書理由・おすすめコメント】
    まずタイトルにひかれ、食品添加物という当たり前のものからマイナスイオンという普通は体に良いものだと思うものまで切り込んであり、読みやすく斬新で面白い。
    (化学科)

  • エセ科学と聞くと、そんなことに騙されるなんて、どうかしているんじゃないか?という気持ちになるが、水の結晶の話などは、自分も聞いたことがあるし、道徳の教材として学校教育の現場で紹介されてしまう事も、気持ちとしてはわかる。
    実際に顕微鏡で取った写真を紹介する事で信ぴょう性をますので何となく信じてしまう。しかし氷のどこの部分を写すかは意図的に選べることなどトリックを知れば、なんだとなってしまう。

    それ以外に特に医療、美容の世界でエセ科学が幅を利かせる可能性が高い。以前読んだ「代替医療のトリック」と共通点があり、思い出しながら読んだ。

    ニセ科学を受け入れてしまう心理的要因
    1.社会的な情報の受容
    2.人の基本的な動機づけ
    3.見かけ上の実用性
    4.具体的な体験

    またニセ科学に引っかからないセンス
    1.途方もない主張には、途方もない証拠が必要と言う基本原則を思い出し、主張する証拠をネットや本などを読みまともな情報を調べる。
    2.「波動」「共鳴」「抗酸化作用」「クラスター」「エネルギー」「活性」「活性化」「免疫力」「即効性」「万能」「天然」などはエセ科学でだまそうとする商品の説明でよくあるキーワード

  • 巷に溢れるニセ科学。なるほどと思う一方、ニセ科学である解説が少し大雑把で、少し納得感に乏しく思いました。

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著者プロフィール

左巻健男
1949年生まれ。東京大学非常勤講師。元法政大学教授。『RikaTan(理科の探検)』誌編集長。
千葉大学教育学部理科専攻(物理化学研究室)を卒業後、東京学芸大学大学院教育学研究
科理科教育専攻物理化学講座を修了。
専門は理科教育、科学コミュニケーション。
主な著書に、ベストセラー『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤ
モンド社)ほか、『学校に入り込むニセ科学』(平凡社)、『おもしろ理科授業の極意: 未知への探究で好奇心をかき立てる感動の理科授業』(東京書籍)、『面白くて眠れなくなる物理』(PHP研究所)、『中学生にもわかる化学史』(筑摩書房)などがある。

「2022年 『世界が驚く日本のすごい科学と技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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