- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408108858
感想・レビュー・書評
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ミステリー仕立てで解き明かしていく世界経済、という本書は、その七つ道具として「ドラマ」「人」「数字」「座標軸」「反対」「歴史」「言葉」というキーワードを使っていきます。お時間があればどうぞ。
のっけからこういうこと言うのは何ですけれど、彼女は作家の岩井志麻子さんに似ていませんか?それはさておき、本書は経済の動向をミステリー仕立てで解説したものでございます。その謎解きのための七つ道具として紹介されているキーワードが、「ドラマ」「人」「数字」「座標軸」「反対」「歴史」「言葉」です。これを基にして世界経済を解説していくと面白いように型にはまっていくんですね。
僕が面白いなと思ったのはエリートの弁論術で『うそを言わずに本当のことを言わない』という高等テクニックを紹介しているところで、これを最初に見たのはマイケル・サンデル教授の出演している番組でしたが、その実際の用法について実例を用いて説明されていたので『あ、こういう風にして使っていくんだ』という新鮮な発見があって実際にこれを使おうとは思いませんが、参考にはなりました。
目次をざっとここにあげると
第1章
【道具1】初めに「ドラマ」ありき~経済は人間のリアルな営みそのもの
◆しょせんは二日酔い男の物語
◆シェークスピア劇にみる「貿易と金融入門」
第2章
【道具2】「人」をして語らしむる~そのまま受け止めるとともに裏を読め
◆“達人”は嘘をつかずに本当のことをいわない
◆ノワイエ発言後の信用不安と財政危機
◆「ファンダメンタルズは健全」は崩壊の予兆
第3章
【道具3】「数字」をして語らしむる~数字が語りかける言葉を読み取れ
◆数字の中に浮かび上がる様々な人間ドラマ
◆変装道具としてのGDPとGNP
◆物価と失業率のシンプルな関係/ リアルな関係
◆エコノミストの予測では前提条件を要チェック
第4章
【道具4】「座標軸」を考える~問題点の在りかを整理する
◆縦軸と横軸を設けて状況を整理する
◆「グローバル・ジャングル」を座標軸で謎解く
アメリカ/ イギリス/ 日本/ 中国/ ドイツ/ フランス
第5章
【道具5】これまでと「反対」を考える~推理が行き詰まったときの突破法
【例題1】日本の「これから」を考える
◆思考ステップ1:日本の「これまで」~それは集権的管理の世界
◆思考ステップ2:日本の「これから」への第一次接近~答えは競争的分権?
◆思考ステップ3:日本の「これから」への第二次接近~答えは協調的分権!
【例題2】通貨の未来を考える
◆思考ステップ1:まずは歴史認識から
◆思考ステップ2:そして次に来るものは?~集約から分散へ
第6章
【道具6】「歴史」を振り返る~遠い未来を見通すためには遠い過去を振り返る
◆過去との違いからみたリーマン・ショック
◆出発点からみたリーマン・ショック
◆歴史が教えてくれる「次に起こること」
第7章
【道具7】終わりに「言葉」ありき~独り歩きする用語に注意
◆言葉は初めであり、終わりでもある
◆言葉の魔力に注意せよ
第2章の『ファンダメンタルズという言葉に気をつけろ』と筆者が言うのは言葉のレトリックで思考停止にならないようにですとか、第7章の『終わりに「言葉」ありき』というあまりにも有名なヨハネ黙示録を引き合いに出して本来、光にもなる言葉によって闇の世界にも引きずり込まれることがある、というくだりには空恐ろしさも感じました。これを読んでいれば日々のニュースにも見ていて面白いな、とは感じますが、お時間のあればどうぞ、という表現にとどめておこうと、今回は思っております。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
I recommend who like the drama or the opera. And childish wordplay favorite one.
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少々物騒なタイトルは、人を苦しめるものとなっているグローバル経済を告発するという趣旨ではない。
推理小説のタイトルに似せて、現代の経済混迷という謎解きのスキルを伝授しようとするもの。
真相を解明するための7つ道具として、「ドラマ」、「人」、「数字」、「座標軸」、「反対」、「歴史」、「言葉」のキーワードから、わかりやすく解説している。
①「ドラマ」では、経済が難しいものではなく、日常的な生活レベルから見えてくるものであることを、よく知られた小説や映画も援用しつつ、興味を持てるように説いている。
②「人」では、財政をつかさどる政治家の発言から、裏を読む必要性を教えている。
③「数字」では、経済指標を示す数字から、どんな意味がくみ取れるのかを示している。
事例では、GNPとGDPを取り上げ、注目する点が「誰が」なのか、「どこで」なのかで、その意味するものの違いを明らかにしている。
④「座標軸」では、複雑な要因を持つ経済現象を読み解くために、座標軸で考えることの利点を説く。
事例では、著者が現代の経済状況を表現する「グローバル・ジャングル」という言葉をもとに、「グローバル度」と「ジャングル度」の座標軸から、各国の特徴を分析している。
⑤「反対」では、推理が行き詰った時の突破法として、「これまで」と逆方向の「これから」の発想で考えよと教える。
事例では、日本が高度経済成長を果たしてきた時期の、「集権・管理」的な経済メカニズムは、GDP世界第二位になった時点でその役割を終えていて、正反対のものを考えるなら、「分権・競争」的な経済メカニズムとなっていると分析している。しかし、それも暗礁に乗り上げている今、これからを考えるなら、「競争」のさらに反対である「協調」、そして、「管理」の反対である「自律」に行くべきではないのかと問いかける。
⑥「歴史」では、チャーチルの言葉を引用しつつ、過去を振り返ることで未来を見ることの重要性を教える。
事例では、米国の金融行政が、放任から規制、さらに放任へと歩んできた道をたどり、放任(ギャンブル金融)は必ず暴走するという、歴史の事実を示している。
⑦「言葉」では、わかりにくい経済の専門用語に惑わされず、「名目GDP」は「カネ」に着目し、「実質GDP」は「モノ」に着目しているといった本質や、また、それらが経済実態をどのように反映しているかは、インフレ期とデフレ期でちがうといった注意点を促している。
以上、混迷する現代経済の謎を解き、次なる経済モデルや社会のあり方を模索するために、どのような思考法が必要かを、わかりやすい事例とともに示してくれているので有益だった。
「これから」のイメージとして伝わってきたのは、「資本主義」という言葉が、その定義からして成り立たなくなっていたり(資本階級はもはや生産手段をもっておらず、労働階級は、正規非正規などと多様化し、決して一律ではない)、日本経済が成長経済から成熟経済になり、集権管理型、分権競争型から、自律協調型があるべき姿なのではないか、といったことが読み取れた。 -
経済を観る視点がわかりやすく書かれている。
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パタリロ、シェークスピア、シャーロックホームズと何をふざけているのか。思いっきりおちゃらけた展開。今回は少しおふざけがすぎるの感甚だしく冒頭は辟易気味であった。後半からようやくまともに。機知に富んだメタファーが炸裂しだす。相変わらず問題の指摘のみで処方箋はないが、ファンダメンタルズ、プライマリーバランスなど、思考停止用語の解説は非常に良かった
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過激な題名に期待しすぎたところもあるが、
経済を推理小説風に説明するのは、
どうも話が軽くなりすぎて、面白くなかった。
もっと、今経済に起こっている事の、著者なりの解釈を知りたかった。 -
実は、TV番組で見た筆者の浜矩子氏は、現実の事業からは遊離した評論家的なイメージを受けたのであまり好きでなかった。しかし、本書を読み印象がガラリと変わった。「地球経済」を殺す(ダメにする)犯人を探し出す探偵七つ道具「ドラマ」、「人」、「数字」、「座標軸」、「反対」、「歴史」、「言葉」を使い、判りやすい切り口で述べられている。これらは、地球経済だけでなく、我々が日頃営んでいる事業活動でも通用する探偵七つ道具であるとも感じた。また、ユーモラスな「二日酔い男」の登場が、遠い存在の「地球経済」を身近に感じさせてくれる。
正直言って、私自身の日頃の生活や仕事をしていく上で、世界の経済動向へ影響を及ぼす原因を理解すると、仕事や生活が直接影響を受けるわけではない。しかし、一方で、我々は世界経済、その中の日本経済の中で仕事をし、生活し、その中で大きく影響を受けて、我々や子供達の運命が決まっていく。
古代の人は雷や台風が来ると神の怒りと考え恐れていたかもしれないが、現代の我々は静電気現象や熱帯低気圧により引き起こされる気象現象と理解しているので、適切な対応がとれる。私も、世界経済を激しく変化させている犯人や仕組みを多少なりとも理解し、ただ運命に流されるのではなく自分や子供達に冷静に行動し、自分達の未来を切り拓いていければと思った。 -
『どんなバカでも質問に答える事はできる。重要な事は質問を発することだ』ジョーン・ロビンソン