- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408110509
作品紹介・あらすじ
シャドーバンキングの経営破綻で中国の中小企業300万社が倒産の危機。2億人の失業者発生の可能性。矛盾が噴きだし、ついに内部崩壊へ進んだ中国。
感想・レビュー・書評
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毎年数冊の本を書かれている長谷川慶太郎氏の最新作(2014.2現在)で、中国の現状が書かれています。今までの中国の強みが弱みに変わってきている状況、シャドーバンキングの不良債権処理をどのように行っていくかという解説は興味あるものでした。
数年前までレアアースで世界の需要をまかなっていた中国の企業の殆どが倒産してしまっていたという事実は衝撃でしたね。
日本のエネルギー戦略である、メタンハイドレードに関する記述も参考になりました、私の生きている間に、日本もエネルギー大国になって欲しいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・習近平は、北朝鮮の勝手な行動をさせないために、瀋陽軍区の幹部が経営しているシャドーバンキング救済を武器にして、瀋陽軍区の支配に成功したので、北朝鮮の金正恩の叔父で後見人とされた「張成沢」=北朝鮮側の窓口が不要になり粛清された(p13)
・米国最大級の空母のニミッツには艦載機が80機搭載、それに対して約三倍のパイロットがいる。それが中国空母の遼寧にはパイロットが5人しかいない(p21)
・米国の原子力空母は、原子力を積んでいて非常に頑丈につくられているので3年間はドックに入らずに行動可能、一方ガスタービンは高熱・高圧で部品が摩耗する(p22)
・1991年の湾岸戦争でT80(ソ連製)とM1が各々400両ずつが戦ったが30分で決着がついた、T80は全滅、M1の被害はなし、5層鋼鈑の複合鋼鈑であったため(p26)
・ソ連が20年前に冷戦で負けたのは、シリア軍(ミグ)とイスラエル軍(クフィル)が戦ったとき、100機ずつが戦って10分間で決着がついた、電子攻撃装置(ECM)がなかったので(p29)
・米国最新戦闘機F22(1機)と、現在の主力戦闘機F15(50機)が模擬空中戦をしたところ、F15は全滅した、照準装置の差による。自衛隊はそれと同等の性能をもつF35を購入する(p29)
・中国全土にある約3万社のシャドーバンキングは、2.7万社が倒産、残りは普通銀行に衣替えして生き残った、人民銀行から融資が受けられるので、2013.11の3中全会(第18期中央委員会第3回全体会議)で民間企業が普通銀行になれるようにお墨付きを与えた(p35)
・中国は経済破綻をきっかけに7つの軍区に分裂して戦争する、そのときに日本はなにも援助せず静観するしかない(p47)
・癌を放射線で治す「重粒子加速装置」は、千葉・群馬・鹿児島・佐賀の4箇所にしかない、周辺機器を含めると1セット:1000億円する(p50)
・17回共産党大会(2007)で、共産党は革命政党をやめて国民政党になった、経営者・富裕資産家も認めた、それにより革命を標榜する人民解放軍の存在意義がなくなった(p57)
・2013.10に上海の短期金利が4ヶ月ぶりに5%台となった、1ヶ月間に銀行預金が4000億元(6.5兆円)流出して資金不足となったため(p71)
・中国の理財商品の残高は13兆元(210兆円)とか360兆円といわれる、2012.12に上海市の華夏銀行が販売した理財商品の元利金が期日までに返済されず騒動があった(p73)
・中国全土にゴーストタウンは200以上あるとされるが、この建設を可能にしたのがシャドーバンキングの存在(p77)
・中国の戸籍には2種類ある、農民戸籍は国から耕作権を与えられる、都市戸籍は医療・年金制度の恩恵がある(p78)
・ソ連が分裂しなかったのは、連邦国家だったから、連邦国家としてそれぞれが看板を取り替えればよかった、中国はそれができないので、軍区ごとに分裂する可能性が高い(p84)
・中国の不動産バブルがはじけると、約18.6兆元(297兆円)に達する、日本のバブル時の不良債権は100兆円、ゴールドマンサックス、バンクオブアメリカは中国の銀行の株を売却した(p85)
・リーマンショック時に中国政府は4兆元の資金で経済を立て直したが、そのうち3兆元は地方政府に押し付けた、その資金は「融資平台」というシャドーバンキングを設立して資金調達した、最初は軍事費の流用から始まった、毎年1月に1年分の軍事費が執行されて配分されるため(p88)
・中国経済が崩壊しても、対中輸出額:GDPの2.4%、対中貿易では差し引き440億ドルの赤字(GDP:1%以下)、中国への投資増額は9兆円程度、GDPの578兆と比較してたいしたことない(p93)
・薄煕来の裁判が山東省済南市で行われた理由は、都市(大連、重慶)では彼の影響力が強いので(p97)
・2014年の経済成長を上限7%に決定した、これは経済成長を実質的に放棄したことを意味する、理由は、1)過剰在庫、設備を廃棄してバブル崩壊を未然に防ぐ、2)公害の改善するため(p101)
・中国の香港向け輸出額と、香港の対中国輸入の差額は約680億ドルもあり、中国貿易黒字額の609億ドルにほぼ匹敵する、このように経済統計がインチキ(p103)
・リーズ&ラックス(決済時期をずらして為替リスクをヘッジする)は典型的な国外投機の方法、これが起きるとその国はだいたい1年以内につぶれる、1979年のイランがそうだった(p104)
・中国の粗鋼生産量は10億トン、3億トンが余剰。日本の粗鋼生産(1.3億トン)と比較して大きい(p106)
・中国でのキリスト教信者は数年間には600万人だったのが、今では1億人前後で、中国共産党員(8000万人)を上回る(p115)
・中国政府が発表した2013.1-4の輸出は前年同月比で17.4%増加、広東省は31.1%増加となったが、税関当局が監視を強めた結果、5月には輸出が1.0%増加となった(p125)
・シェルやエクソンが指摘したように、尖閣諸島の周りの海底油田は商業ベースにのらないだろう(p130)
・明治6年までは沖縄には琉球王国があった、廃藩置県時に清国は琉球にその権限は無いとして抗議した、そのときアメリカが間に入って明治6年の天津条約を締結して、清国は沖縄に対して日本の行政権を認めた(p139)
・東アジアに展開している原子力空母は、ワシントン・レーガン・ニミッツ、11隻保有中、第一線で行動している6隻のうち3隻が東アジアにいる(p145)
・日本の中国へのレアアース依存度は3分の1以下、中国のレアアース市場も3分の1になって大手メーカ10社はついに1社になった(p148)
・国際関係で一番大事なのは、一度結んだ条約は、締結相手国の合意がない限り修正できない、それを韓国は変えてしまっている(p155)
・三井物産と出光興産は、アルファオレフィンと呼ばれる化学製品を製造する工場を米国で建設する計画、2016年から年産33万トンが稼動する(p176)
・ダウケミカル、エクソンモービル、シェブロン、シェルが各々年産150万トンのエチレンプラントを2016-17年にかけて稼動する。米国化学メーカは米国に回帰している、日本の化学メーカも米国に進出している(p176)
・シェルールガス採取の環境汚染について、最近では水がなくても採掘できるようになったので、問題はクリアされた。水の代わりにLPガス(プロパンガス)を使用。これはエクソンモービルが開発した「モービル方式」(p177)
・3兆円(300億ドル)のシェールガス探索技術をエクソンモービルに開発させるために、米国司法省は合併を認めた(p179)
・消費税増税の効果(3%で3.9兆円)は、GDPの1%にも満たないのでたいした影響はない(p188)
・メタンハイドレードの開発は、3年でものになる、研究開発の融資枠を1兆円としたので(p198)
・アゼルバイジャンのバクー油田は1930年代に一度枯れたが、ソ連崩壊後の2年後の93年にバクー油田からわずか30キロに膨大な油田が見つかり今も稼動している。それまで見つからなかったのは探査技術がなかったから(p203)
・ソ連邦が崩壊してロシア連邦になった、現在ロシアの一人当たりGDPはタイと同レベルの4000ドル、社会主義がロシア経済をつぶした(p213)
・米国でリースする場合、日本車と米国車は、けた違いに日本車が安い。5年後にリース解除するが、中古車に付ける価格がトヨタセルシオなら65%、GMシボレーは35%なので、リース会社はリース料を安く設定できる。米国裁判所は米国自動車メーカの訴えを却下した(p224)
・安部首相は3年後の衆参同時選挙までまってから、教育改革と憲法改正を具体的に動き出すだろう(p229)
2014年2月11日作成