運転、見合わせ中

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536491

作品紹介・あらすじ

朝のラッシュ時に、電車が停止!そのとき学生、フリーター、引きこもり、駅員は…。彼らの"イマこの瞬間"を切り取る私鉄沿線・恋愛青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 電車に乗る誰もが経験したことがある『運転見合わせ中』
    それが朝の通勤・通学時間帯に当たれば
    乗客のイライラや不安はMAXになり
    不明瞭な放送に怒りは溜まる一方で…。

    同じ路線に居合わせた、6人6様の6つの物語。

    面白かったです。
    特に『フリーターは、ホームにいた』の会話ったら。
    吹き出して笑っちゃいました。

    軽く何気なく書かれていますが、
    結構はっと気付かされる言葉が多い畑野さんの文章。
    なぜ電車が止まってしまったのか
    原因がわかっていくにつれ、巡りあわせの不思議を感じました。

    大きく変化するきっかけなんて、後から考えれば
    こんな些細なものなのですね。
    でも裏を返せば小さなことでも変化があれば
    大きく自分を変えることができるということじゃないでしょうか。

    私たちってやはり神様の手のひらの上で
    転がされているだけなんじゃないかと…。
    転がっても、何かを掴んで起き上がりたいと
    思わせる一冊です。

  • 電車に乗る機会が多いもので、「運転見合わせ中」な状況にはよく遭遇するのだが、当然、嫌いです。足止めくらって嬉しい人なんてめったにいないでしょうが。ホームにいても、車両内にいても、もう尋常じゃなくイライラする。だから、その状況に置かれた乗客にスポットを当てた連作短編という着眼点は面白いなと思った。
    男子学生、フリーター、デザイナー、OL、引きこもり、駅員…それぞれが、改札の手前で、ホームで、乗車中の車両内で、それ以外の場所で「運転見合わせ中」のアクシデントに遭遇し、その日のスタートが狂わされていくところからあぶりだされていく彼・彼女の人生。ただ、良くも悪くも誰にも共感できず。これは敢えてなのかな、それぞれのキャラクターがじわっと不快。アクシデントにおかれた際の他人への冷たさとか、自己中で回りを見下しがちな独りよがりな思考回路とか、方向性の間違った上昇志向の強さとか、ちゃんとできないルーズさとか。そこを畑野さんらしい軽くユーモアを感じさせる描写で浮上させているが、たまに「笑っていいのか…」と思うところもあり。挿画も好みではなく、全体的に☆3寄りではあるのだが、何だかんだ言いつつも先が気になり一気読みしちゃったのと、タイトルと設定はうまいと思ったので☆4。でも好き嫌いくっきり分かれるだろうね。
    今度「運転見合わせ中」な状況になったら、この本のことを思い出そう。ふとしたきっかけで人生の風向きが変わることもあるのだと、そしてそれぞれの人に人生のドラマがあるのだと思いながら、その状況を俯瞰で見ることが出来れば、運転再開までのじれったい待ち時間をやり過ごすことができる…かな。

  • 冒頭───

    久しぶりに一限目の授業に出ようと張り切ってみたら、電車が動いていなかった。
    駅に着いたら、人だかりができていて、駅員が何か叫んでいた。文句を言う人の声が重なり、何を叫んでいるか聞こえない。改札の上にある電光掲示板にオレンジ色の文字が流れる。
    『飛来物により運転を見合わせています』
    ------飛来物ってなんだよ?

    朝のラッシュ時に起きた、謎の理由による電車の運転見合わせ。
    電車に乗るはずだった、或いは運転見合わせによって線路で止まってしまった電車に乗っていた人たちの物語。
    電車が動かなくなったという些細なアクシデントが起こした人生の転機。
    様々なシチュエーションの中で生きる人々がどう変わってしまったのか?
    新しい出会いや別れ、旅立ち。
    大学生、フリーター、デザイナー、OL、引きこもり、駅員とその出来事に関わった人たちの立場でストーリーは展開される。
    『飛来物』と出てきたので、一瞬SFものか? と思ったが、それは『フリーターは------』の章で明らかにされる。
    なるほどね、とこの章を読んで納得。

    畑野智美独特の平易な表現と相まって、全体的に読みやすく楽しめる。
    特に『デザイナーは電車の中』で、電車に一時間以上閉じ込められ、尿意と戦う姿は爆笑ものだ。
    私も電車ではないが同じような過去があるだけに、腹を抱えて笑った。
    あれはつらい。
    冷汗がたらたらと流れ出てくる。
    いっそ、冷汗と一緒に尿も蒸発してくれればいいのにと思うのにそうもいかない。
    まさに地獄の苦しみだ。
    あの苦しみから解放された時の爽快感は、体験した人間でなければわかるまい。

    ま、それはともかく、畑野智美の作品、最近面白いのが多いです。
    タイトル通りの『運転、見合わせ中』の物語。
    ネーミングに座布団三枚あげたい。

  • 小説っていろんな所から発生できますよね。
    こういった電車が突然止まっちゃって、それに巻き込まれた人達は大勢いて、その1人1人にいろんな事情が起こっていって・・・
    どんだけでも広がりそう。
    だけど、やっぱり凡人には出来ないもので、作家さんって面白いなって思います。

  • 停止した電車のトラブルに巻き込まれた6人が登場する連作短編集。大学生、フリーター、デザイナー、OL、引きこもり、女性駅員。みんな若くて恋に進路に悩んでいる様子がみずみずしい。特に後半の有名付属高に進学できたけど内部生にいじられて登校拒否になった引きこもりと女性駅員の話が好きでした。早くに母を亡くして父娘で暮らす25歳のヒロインは運転士になるという父の夢を叶えるべく電車会社に就職するがあたたかい家庭も作りたくて悩みます。この切ない感じが素敵でした。

  • 日常よくある電車の遅延、そんなシチュエーションでのお話ということで楽しみにして読んだ。
    残念ながら、全く面白くなかった。
    各章の主人公のほとんどが自意識過剰。
    微妙に各章の登場人物同士が絡んでいるという、よくある設定も、本書においては面白味が無い。

  • タイトル通り、電車の運転見合わせのトラブルに巻き込まれた、または巻き起こした人たちの群像劇。それぞれちょっとずつ繋がってたりして、上手いなぁと思いました。
    結構ライトですが、畑野智美さんが書くテンポの良い会話とか好きなので、楽しく読めました。
    好印象な登場人物たちではないと思いますが、あまりにもちゃんとし過ぎてる人しか出て来ないのもつまらないですし、人のダメな部分とか描いてある方が人間味あるって良いと私は思います。

  • 朝の通勤時間帯(ちょっと遅め)に突然の運休。そんな私鉄電車に乗り合わせた6人と駅員のその日をつづる短編集。
    なんて言われて飛びついたんだけど、すっごく残念!
    一人ひとりのコンセプトは面白いのに、ストーリーはちっとも面白くない。おまけに、みんな軽い。ぜんぜん軽くなるような状況じゃなくても軽い。というか、軽いとしか感じさせられない。軽い気持ちでセックスしちゃうし。
    期待感大きかった分、不完全燃焼でした。

  • ああ、「運転、見合わせ中」ってそういう意味なのか。
    ひと通り読んだときには気が付かなかった。ただ、どうしてこんなにふわふわした人たちばっかり出てくるんだろう、と思っていた。みんなそこそこいい加減で、甘ったれてて、利己的で。
    畑野さんの描く人物には、どこかいつも、すっと刷毛でなでたような灰色の部分がある。等身大とでもいうのだろうか、誰にでもある、リアルな欠点。あまりにもリアルすぎて、目を背けたくなる部分が、さらっと当たり前のように書かれている。
    それでも、大学生、フリーター、OLくらいまではかろうじて共感できる部分があった。
    しかし、運転見合わせの原因になった引きこもりと、彼に振り回された駅員の話は、壮大な肩透かしをくらったような気持ちになった。
    もう私にはこういう若い人の気持ちがわからなくなってしまったのかなあ。
    いや、わかりたくない、と思ったのだ。こんな甘ったれて自分勝手な人にはなりたくない、と思ってしまったのだ。
    一つの出来事がいろんな人に影響を与える、というお話は面白いのだが。

  • 自分にはあまり合わなかった。。。それぞれの物語、特に神田くんについてはもう少し先について描いて欲しいという物足りなさがあった。あと、全てのエピソードにセックスを入れてくるのは何故なのか気になるし、なんだか無理やり入れてない?っていうところもありもやもやした。普段どこで起こっててもおかしくない電車の遅延で人生が変わる人もいるんだというお話ですね。でも、普通に過ごしている身からすると、それ大丈夫?って思うような方が多くてあまり共感できるものではなかったかな?と思う。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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