神の涙

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 266
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537122

感想・レビュー・書評

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  • アイヌという自分のルーツによって各々が悩み苦しみ生きていく中、最後は一つの家族として強いアイヌの血で結ばれていく感動の物語でした。

  • もう、読んでいる途中、ずっと身体中の血が滾るのを感じていた。そして読み終わった瞬間、魂の震えを止められなかった。
    自然の偉大さ、それに抗おうとする人の愚かさや無力さ。私たちはその存在さえ神に赦されなければならないほど、小さい。そんな小さく無力な私たちは、誰かと支え合い信じあう事でやっと生きている。
    あぁ、もうどんな言葉もこの物語の前では軽くて薄い。何も言い表せない。この魂の震えをどうやって伝えたらいいのかわからない。
    アイヌの血を引く人々の、それぞれの人生と歴史、そして今を思う。

  • 今でも北海道では、アイヌの子孫の方が息づいているんですね。北海道好きにとって「はんかくさい」だとか方言が読んでいて心地良く響いていました。熊との死闘のシーンなどは手に汗握ってもう興奮してしまいました。涙あり感動あり大自然を感じながら読む手が止まらず400ページあまりがあっという間でした。本文中に出てくる摩周湖の滝霧が見てみたい。

  • この作品を読み終えた瞬間は、著者である馳星周さんに興味があったのが、ファンになった瞬間だった。
    北海道の、屈斜路湖や摩周湖を抱く大自然の中でおりなされる、家族の、今を生きる物語。それに殺人事件が絡んでいて、でもサスペンスではなくヒューマンドラマで、ストーリーや展開が、私が求めていたのと一致したような感覚だった。この物語の世界に入り込んで、読み終えた後、興奮して寝れなかった(笑)。それぐらい、ワクワクする、夢中になるものでした。

  • アイヌの血を引く人々の物語。
    この作家さんの作品は2作目。「不夜城」のイメージが強く、もっとハードボイルドな作品を書く人だと勝手に思っていたが、帯にある通り、ラストでは涙が溢れる。
    雄大な北海道の自然とその中で生きる人々の様子が丁寧に描かれる。東京である事件を起こして、自分のルーツを探るために川湯を訪れた尾崎、その尾崎がどうしても弟子になりたいと頼った木彫り作家・敬蔵とその孫の悠の3人を中心に物語は進む。犯罪者であるはずの尾崎は過去を引きずりつつも、明るく優しく、心を閉ざしていたはずの敬蔵と悠の心を徐々に開いていく。徐々に打ち解けた3人に別れの時が迫り、3人はそれぞれある決断をする…
    人を思いやる気持ちが溢れている作品。頭の中では昨年の9月に旅したばかりの道東の景色が溢れて来て、ラストまで一気読み。純粋にいい作品だった。

  • アイヌ人として生きる木彫り作家と、アイヌであることを嫌悪する孫、自分のルーツを求めてきた青年。北海道の自然とアイヌの思想を体感し、一つの家族になっていく。大自然の一部として存在していることを改めて思い出させて貰えました。

  • 藤戸竹喜の「木彫りの熊の申し子 アイヌであればこそ」を観てきた。圧倒的な熊や野生動物の彫刻のリアリティと存在感について友人に熱く語ったところ、この本を教えてもらった。読みながら、ああこの彫刻はアレのことかーと思いながら読むほど、世界がリンクしていた。
    「人の罪を罰するのは神様の仕事。人にできるのは許すことだけ。」
    「ウェン・アペの熱にやられたんだな。悪い火という意味の言葉だ。焚き火で熾す火も、原発の火も、アペフチカムイの恵だ。アペフチカムイとは火の神のことだ。アイヌにとってもっとも大切な神がアペフチカムイだ。」
    「だれのせいでもない。原発事故による未曾有の災いは日本人の責任なのだ。人類の責任なのだ。」
    震災、原発事故、差別。現代の複雑な事情が絡み合う。だれも、悪くない。人にできるのは、許すこと、なんだ。

  • 良かった。最高!

  • 泣いた。おじいちゃんの孫を思う気持ちも、悠の外に出たいと願う気持ちも、尾崎のルーツ探しも、みんな丸く収まってよかった。
    ウポポイ行って、アイヌのこともっと知りたいな。

    「はんかくさい」って言葉がいっぱい出てきたけど、意味がわかったようなわからなかったような。
    北海道出身者にこんど解説してもらおう。

  • アイヌの血を持つことに誇りを持っている祖父。
    アイヌの血を嫌う孫。
    福島県出身の青年。
    主にこの3人からなる話。

    北海道の壮大なる風景描写がとても良かった。
    木彫りのシーンも、まるで自分がその場に居るような感覚でページをめくり、思わず息を潜めてしまった。

    しかし、青年の事件は必要あったのかなぁ。
    あの部分だけ妙にチープな感じがしてしまって、少し残念。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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