同じ高校の文芸部出身のふたりの作家。
冴理は心の壊れた母に追い詰められながら暮らしていたが、火事で母が亡くなり自由になる。新人賞をとって作家デビューし前途洋々だったものの、数年後に容姿端麗で抜きんでた才能をもつ天音が現れ、その圧倒的なきらびやかさに自分がくすんでいることを感じる。天音は冴理が卒業した後に文芸部に入り活躍した母校の後輩だった。出版社から共作を持ちかけられ、冴理も久々に自信作を仕上げたが、ベストセラーとなったのは天音の作品だけだった。「共作の意味がない」と陰で吐き捨てる天音の姿をみて冴理は絶望する。
自信喪失した冴理は以前から好意をもっていた先輩作家シャープとの不倫に逃避する。
しかし数年後シャープは妻と離婚し天音と結婚すると冴理に告げる。
天音は娘を産むが体調を崩し数年後に自死した。
ここまでが冴理が語った物語。
最終章「神に愛されたかった」は天音の視点で物語が語りなおされる。
高校生の時からずっと天音の絶対的な神は冴理だった。
冴理のために火事を起こし、共作で冴理の作品が売れなかったことに憤り、執筆の邪魔となるシャープを誘惑して排除し、最後には冴理の最大の敵である自分を抹殺したのだ。
天音は神である冴理に愛されたかった。
冴理は神である天音に愛されていた。