日本に足りない軍事力 (青春新書INTELLIGENCE) (青春新書INTELLIGENCE 211)

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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784413042116

感想・レビュー・書評

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  • 軍隊は何も戦争をするだけではなく、特に最近にあっては災害救助等国際貢献で重要な位置を占めるようになってきている
    そういう点で、自衛隊もきちんと貢献できるだけの装備が必要であるし、納税者としては配備は効率よくできていてほしい
    しかし、国内の一部の勢力から「非合理な」批判を受けたり、一部の国に対する政策的な配慮から、使えない配備をしているという現状は不思議でならない

    なお、その一部の勢力は固定燃料ロケット「イプシロン」の成功について何も言っていないが、軍用ミサイルそのものだという認識はないのだろうか(勉強不足?)
    2008年という刊行時期にしてはサイバー戦に関する記載があまりに少なく、がっかりな点ではあるが、おおむね内容として日本の現状がわかる良い本だったと思います。

  • 1.弾道・巡航ミサイル防衛

     弾道ミサイル・・・放物線を描く。高速のため迎撃むずかしい。
     巡航ミサイル・・・水平に飛ぶ。低空からくるため迎撃(探知)むずかしい。

     弾道ミサイルを迎撃ミサイルで無力化するには、高速でぶつけるのが良さそう。ただし人口密集地上空の場合、破片による被害がありえる。第二次大戦時もB-29に届かなかった高射砲の弾による被害があった。

     弾道ミサイルは弾頭だけになるとサイズが小さくなるので、できれば早い段階で迎撃するほうが確実。

     巡航ミサイルの迎撃技術は弾道ミサイルに比べるとまだこれから。

     陸上のパトリオット、海上のイージス艦のほかに、航空機搭載のレーザーやミサイルで迎撃する手もある。

     早期警戒が肝心。衛星、高高度滞在の無人機、哨戒機など。


    2.長距離攻撃能力

    弾道ミサイル発射基地をたたくために必要ではないかとの議論だが、実際問題として有効性が無いよう。
     →ならば、いまの日本が持つべき能力ではなさそう。

     戦闘機からのミサイルで発射直後のミサイルをたたく技術はあるが、敵地に乗り込まなければならないので、目標を探索することまで考えると航続距離的にもギリギリというか厳しい。ステルス機でないと味方に被害も出る。

     液体燃料型は燃料充填に時間がかかるので発射までの時間がかかる(サイロ内での充填は危険も伴う)。固体燃料型のほうがすぐ発射できるので厄介。

     衛星を上げる技術を転用すれば日本でも弾道ミサイルは持てそう。巡航ミサイルも技術的基盤はある。しかし巡航ミサイルを精密誘導しようと思うと、標的の詳細な地図が必要になる。2008年時点では米国に頼らないといけない。あと地下の目標を破壊するには、貫徹弾を使う場合でも地下の様子が分かっていないと難しい。

    3.空対地精密攻撃能力

     航空自衛隊は基本的に対艦攻撃のことしか考えていない。対地攻撃は、精密な誘導のできない申し訳程度の装備しか持っていない。今後は島嶼部の奪還作戦で必要になるのでは
    →そこまでの想定がいるのかやや疑問。現状の思想が適当な気がする。

     精密な対地攻撃には地上の弾着観測員との連携が重要。そこが自衛隊はない。

     最近は爆弾もレーザーや慣性、GPSによる誘導装置を備えて羽で滑空して目標まで飛ぶ。基本型のJDAMで13km、羽根をつけたタイプで最大65kmの射程がある。

     航空機による観測・偵察も大事。偵察機というジャンルではなく、戦闘機・支援戦闘機に高度な偵察能力を持たせるのがトレンド。

    4.パワープロジェクション能力

     定訳なし、空母や揚陸艦、補給艦(機)など。PKOや災害支援などで使うというが。。。自衛隊は全体に控えめな能力しか持っていないが、最近は空母ライクなフォルムの護衛艦(ひゅうが型)も登場。しかし能力は中途半端。

     中国をはじめ、結構これまで空母をもっていない国が整備をしている状況。カタパルトで飛ばす米国式のほか、甲板に反りをつけるスキージャンプ式。

     ロングセラー輸送機C-130Hが自衛隊の主力だが16機しかない。次期輸送機C-Xがどうなるか。

    5.宇宙線・サイバー戦能力

     日本は国会決議で宇宙条約以上の制限を宇宙の軍事利用に関して課している。しかし、偵察衛星などは必要ではないかと。→これは、その通りと思う。

     衛星破壊では中国の実験がデブリをばら撒いたことで悪名高い。艦上からミサイルで攻撃する技術もある。

     サイバー戦はユーゴスラビア爆撃の際にも行われたらしい。あとエストニアの例。
    →2008年時点に比べてもここは状況が急速に変わっていると思われる。どこまで自衛隊が負うべきかは分からんが。

  • 安全保障、軍事関係者の間ではアメリカをはじめとするほかの多くの国の軍隊がその軍事作戦の基盤としてる宇宙システム(衛星)を中国が破壊する能力を持つようになり、同国が得意とするような非対称の戦いの1つとして宇宙船に挑んでくるのではないかという警戒心が急速に高まった。

  • 自衛隊にできること、できないこと。 昨年逝去した江畑謙介の著作。
    現状の自衛隊の軍事力を俯瞰した時、現状の戦力でできることとできないことがある。
    日本の自衛隊は、法的な制約と近隣諸国への配慮から本来あるべき能力を削ってしまった武器が多いようです。
    F-2支援戦闘機は対地攻撃能力は小さいが、理由は支援戦闘機でありながら陸上自衛隊に対する支援を考えてこなかったかららしい。これに限らず日本の軍事力は、個々の兵器の能力がちぐはぐで、防衛戦略のビジョンに見合う能力がない。合理的な武器開発と運用のため、著者は様々なアイデアを提言しています。(主なテーマは、巡航ミサイル防衛、海外への平和維持・人道支援、FX選定問題、宇宙戦・サイバー戦等)
    自衛隊にとっては、内部の事情もあって、このような一軍事評論家の提言はなかなか受け入れ難いものがあるかもしれません。
    自衛隊戦力に興味がある人は、一読の価値があると思います。

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