- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784414400960
感想・レビュー・書評
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・怪しげなヒーリングなどを使う医者を「野の医者」とし、沖縄の臨床心理士である著者が野の医者の研究にトヨタ財団の研究費を使って沖縄の周囲にある怪しげな民間療法を体験していくノンフィクション・ストーリー
・野の医者は自分が元々病者であり、ヒーリングなどの療法で回復した経験から自らが治癒者となる傾向を掴む。
・野の医者とは傷ついた治療者であり、患者でもあり、相手をヒーリングする事で自らを癒している
・心の治療はその時代を写す鏡であり、宗教からセラピー、マーケティングへと流行が移り変わっていく
・心の治療は思い込みであり、それぞれの人生に合った治療法があると言うことを、自らの体験を面白おかしく記しながら著者は結論付けている詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
心の治療における臨床心理学と民間療法
その違いと共通点をフィールドワークして考察した本
身体的疾患を診る内科医の自分たちにも当てはまると思った
患者が医療者を信頼できるかどうかによって治療効果は一部変わるから、民間療法的な要素が実はあるってことだ -
「居るのはつらいよ」の著者・東畑開人さんの以前の本も読んでみました。
「野の医者は笑うー心の診療とはなにか?」
「居るのはつらいよ」は、ケアとセラピーの話でしたが、これはセラピーの話。「学問」としての心の診療と、「野の医者」(巷にあふれる様々なセラピー)の診療との、相違点を探す取り組みの話。
時系列的には、「居るのはつらいよ」のあと、無職?で沖縄に残った東畑先生が、沖縄に溢れている「野の医者」たちを次々に巡って、癒やされたり、研究材料として観察したりした話。
難しかった…。
なんとなく怪しいセラピーと、臨床心理学の、似ているところ、違うところ、「野の医者」たちの共通点、などなど、いろいろな情報は得ることができたけど、結局、何がどう同じで違うのか、専門ではない私には、最終的にはわからなかった。
私が「野の医者」に救いを求めようとしたことがないから、実感として考えられないのかもしれない。私は、東畑先生が「野の医者」と呼ぶ方たちのことを、どちらかというと「人を騙してお金を稼ぐ人たち」というふうに考えていたフシもあるので、
「傷ついた治療者」
という面を知ることができたのは収穫だった。
難しかったけど、文章や構成がとてもうまくて、するする読めたし、面白い情報がたくさんあったので、難しかったけど、いい本だったと思うので★4つ! -
傷と祈りは不可分である。だれかを癒すとは、自分を癒すこと。沖縄の怪しげなスピリチュアリズムの深淵に、ひとりの臨床心理士が分け入っていく冒険記。心の治療に正解はない。
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臨床心理士である筆者が、沖縄で出会った「野の医者」=スピリチュアルな治療者に調査する中で、「心の治療とは何か」「臨床心理学とは何か」を問う。
そういえば、大学時代に宗教社会学のゼミでもスピリチュアルについて学んだなぁ、と思い出してなつかしくなりました。
スピリチュアルとかニューエイジとか、あやしいなぁと感じつつも何がひっかかるのだろうとずっと思ってたのですが、この本を読んでやっとわかった気がします。つまりは金と思い込みの世界なんだ、と。
本当のところはどうなんだ?と問い続けながら、調査対象となる方々の中に入っていき、調査していく。これってまさに社会学!
とっても面白かったです。
じゃあ、キリスト教はどうなのか?
スピリチュアル的なところにとどまらない、思い込みの世界が現実だなんていう上っ面の慰めなんかではない、
確かに存在して、この世界の初めから終わりまで生きて働き続ける神様を伝えられているだろうか。真理に堅く立っているだろうか。
確かに、中には、スピリチュアルと何ら変わりないようなアピールがなされているとこもあるよな、とも思いつつ。
私たちはポストモダンの時代に生きている。
自分の外側にある、確かで揺るがないもの、を受け入れるのがむずかしい、時代の子。
でも、確かで揺るがないものは、確かにある。
愚かに見えても、スピリチュアルやほかの宗教とたいして変わらないように見えても、
真理を伝える者でありたいなぁと思いました。 -
2021/10/22予約 3
P130
治療者の見立ては、クライエントの生き方に方向性を与える。
P263
この世界では、精神医学がいう軽い躁状態を、一番元気な状態だと見る。だからニュートラルではない、軽い躁状態を、よくなるという。
そもそも何が治癒なのかが治療法によって違うのだ。癒しは一つではない。
心療内科に長らく通っていた私にも、いろいろ考えさせられる本。
ドクターとの相性次第だと思うので。
カウンセラーが突然辞めてしまったことで、自分は置いてかれた気がした。きちんと納得のいかないまま終わったので、今でもモヤモヤする。
仕方ないので、本で学ぶことにしていて、この東畑氏の本は読みやすくわかりやすく、好きです。 -
4つ星だけど、4.5。
とにかく面白かった。
筆者が体験した数々のセラピーも、話の中で展開される臨床心理学にまつわる思考や概念も、そして最終的に筆者が到達した結論も、とにかく読み応えがあって、同時に同業者として自分の臨床に対する考え方も改めて見つめ直させられた。
一緒にその思考の経緯を巡るかのような心の旅がそこにはあった。
心を癒す方法は数多くあり、それで癒される人がいるならきっと方法はなんだっていい。
だけれど、私は臨床心理学を選んだ。
臨床心理士を選んだ。
そのことの意味、そしてこれから目指したいもの、
そういうものが浮かんでは消え、消えては浮かび、
臨床心理学という学問が持つ危うさや揺るぎ、魅力、その懐の大きさが改めて好き。
なんて曖昧で、時代に簡単に左右され、おもしろいものなんだろう。 -
普通に生きてたら知ることができない世界の話しが本になっており、臨床心理士と野の医者(科学では説明出来ない力を持つとされるヒーラーetc...)の違いについて解き明かされて行く。
野の医者又はそれに近い人たちに出会ったことは何度かあるが、考えを無理に押し付けられたりしたことは無かったように思う。本の中には、野の医者の共通点についても書かれているが、確かにと思う箇所はいくつもあった。
この本を読むことで、野の医者とは何なのかという疑問を自分の中で整理できるようになるように思う。 -
・ありあわせのもので目的を遂行する、プリコラージュ
自分の仕事、生き方もまさにそうだと思った。というか、人間誰しも与えられた環境で勝負するしかないのでは。
・誰かを癒やすことで、自分自身が癒される
これも普遍性があるように感じる。自分自身も医師として、患者さんの力になれたと感じる時に喜びを感じるが、それも似たようなものだろう。
・心の治療は時代によって変わる
・心の治療は生き方を与える
・治療法によって目指すべきゴール(治癒)が違う
自分自身を振り返ると、例えば辛いことがあってもなくても日々の振り返りが習慣になっている。辛いことがあったときには、「なぜ、自分は辛いと感じるのか?」「なぜ、そういう出来事が起きたのか?」と深堀りしている。こういった分析的な思考をしている。それは生き方にも影響を与えていると思う。