アートリップ入門: 認知症のうつ・イライラを改善する対話型アート鑑賞プログラム

著者 :
  • 誠文堂新光社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784416520604

作品紹介・あらすじ

現在、アートが人々の健康や治療に与える好影響が、世界中の医療・介護の現場で注目されています。
各研究では、アート鑑賞が認知症の人の記憶、感性を呼び起こし、QOL向上にも効果があると証明されてきています。

ニューヨーク近代美術館(MoMA)では、「対話型アート鑑賞プログラム meet me」を開発、現在、全米100か所以上の美術館で行われているほか、ヨーロッパ、アジアの国々でも展開されています。

日本では、MoMAで同プログラムを学んだ林容子氏が代表をつとめるアーツアライブが、2011年より国立西洋美術館をはじめとした各地の美術館のほか、介護施設などで、日本向けにアレンジされたプログラム「アートリップ」を実施しています。
グループで作品を鑑賞し、進行役のアートコンダクターの質問に答えながら、参加者が感じたことや思ったことを発言します。
その会話が忘れていた感情を呼び起こし、認知症の方が生き生きと感想を述べたり、昔のことを話し始めたり。
同伴した家族からは、「昔のお母さんの顔に戻った」、「いつもイライラしている夫がおだやかになった」などといった意見が聞かれます。

林氏も参加した国立長寿医療センターの調査では、アートリップを体験した方の多くが、うつ症状が軽減、QOLが向上されたという結果が出ています。
さらに、世界10か国が参加している国際研究でも、「参加型アート」がウェルビーイング(幸福度)、QOL(生活の質)、さらに身体的健康も向上させることが証明されています。

本書は、MoMAではじまり、世界に広がりを見せている対話型アート鑑賞プログラムとはどのようなものなのか、また、日本のアートリップではどのような効果が出ているのかを紹介します。
高齢化が進む日本で、医療・介護現場においてアートが果たす役割に光を当てます。

感想・レビュー・書評

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  • 一般社団法人アーツアライブ代表理事林容子さんがアートリップ『対話型アート鑑賞プログラム』の魅力について語る。高齢者対象やビジネスパーソン対象にしたアートプログラムを企画運営。
    HP閲覧するとコロナ禍で活動は休止しているようだが、アートコンダクターの研修を受けてみたいと思った。私自身がアートリップに参加したい。
    「高齢者にとって個の表出がどれほど大事か、いくつになっても新しいことを体験する意欲があること、高齢者との一期一会のアート体験は量より質で彼らの残りの人生に影響を及ぼす」「アート作品を見て何かを感じること、アートとそれを見る人との間でコミュニケーションが成立して初めてその存在意義がある」
    アートリップでは「アートを知るだけでなく、一緒に絵を見ている人たちのこと、何より自分自身を知ることができる」
    参加者の「家族丸ごとハピネスお持ち帰りプログラム」というエピソードを添えた感想が素敵だと思った
    「鑑賞者と進行役との関係性」(ピーター・ホワイトハウス、クリープランドで科学者でもあり写真家)
    「アートは脳のチョコレート」(ジーン・コーエン博士、世界で初めて芸術が高齢者に与える影響を研究)

    • 青竹さん
      ベルガモットさん

      おはようございます。いつも、いいねをありがとうございます。

      私もこの本を読んで、講座を受講してしまいました。とても楽し...
      ベルガモットさん

      おはようございます。いつも、いいねをありがとうございます。

      私もこの本を読んで、講座を受講してしまいました。とても楽しいですよ。

      初級はオンラインの2日で終わるのですが、中級はコロナ禍でなかなか実習が組めないので、まだ修了(実地の最終試験が終われない)できていないのが現状です。

      講座を一緒に受けた仲間とオンラインで練習したり、無料でzoomを使用し一般の方向けに行なっています。

      もしご興味あれば講座や体験に参加してみてください。著者の林先生はとてもパワフルな方です。
      2022/11/24
    • ☆ベルガモット☆さん
      青竹さん 貴重な情報ありがとうございます!

      こちらこそいいねをありがとうございます。
      青竹さんは講座受講なさったんですね、楽しいとい...
      青竹さん 貴重な情報ありがとうございます!

      こちらこそいいねをありがとうございます。
      青竹さんは講座受講なさったんですね、楽しいということで俄然興味がわいてきました♪
      なんと、昨日今日開催されていたようでした。残念。
      定期的に開催されているようなので、申し込みたいです。
      体験もあるんですかね、オンラインで練習とか素敵☆
      2022/11/27
  • 絵画という情報は逃げていかないので,短期記憶に支障のある認知症患者には確かに補助にもなり,また認知能力を発動させるきっかけにもなるので,なかなかいい着眼点と応用だと思います。明確なエビデンスをどのように打ち出していくかが今後の課題でしょう。

  • 認知症の当事者が家族、介護者と共に、アートコンダクターとの対話をしながら1枚の絵を見る。認知機能が低下した人でも、絵を見て対話することで脳の活性化や気分の向上が期待できるというアートリップ。印象的だったのは、もし描かれている犬を認知症の人が「猫だ」と言っても、否定するのではなく「なぜそう思ったのですか?」と尋ねるというエピソード。そう問うことで、「昔買っていた猫と眼の色が同じだから」という、本人なりの理由が出てくる。「どう見たって犬だ」とか「何でそんなことわからないんだ」という否定的、悲観的な返答をするのではなく、なぜそう思ったのか、というところに視点を合わせることが重要だと感じる。絵を鑑賞するということは教養や知識がなければダメだという風潮がどこかにあるが、そんなこと気にせず、思ったことを言葉にして、そこから自分の記憶や思い出を「旅」するアートリップは、認知症のケアとしての効果だけでなく、より豊かな世界を含んでいるように思う。

  • 介助者と認知症者が「同じ目線」で楽しめるのがいいなぁと思いました。

  • アートを治療に活用するという発想から、もう一歩踏み込んだ示唆が得られると思っていたが残念。想定し得る内容のみで、物足りなかった。
    アートを用いた活動は子どもから大人まで分け隔てなく参加できる。認知症患者、と限定する必要もなく、多様な人たちが集まり、美術館でのコミュニケーションを楽しめる活動が浸透すべきだと思う。

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著者プロフィール

■林 容子(ハヤシ ヨウコ)
一般社団法人アーツアライブ代表理事。
国際基督教大学、米国デューク大学を経て、コロンビア大学大学院にて、芸術経営学で日本人初のMFA(芸術学修士)を取得。
帰国後はキュレーターとして国内外のアートプロジェクトの企画運営に携わったのち、一般社団法人アーツアライブを立ち上げ、認知症当事者を含む高齢者を対象としたアートプログラムや、ビジネスパーソンのためのアートを活用した企業研修を行う。
尚美学園大学大学院芸術情報研究科准教授。一橋大学大学院、武蔵野美術大学講師。

「2020年 『アートリップ入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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