PTSDのための対人関係療法

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422117270

作品紹介・あらすじ

本書はPTSDに対する対人関係療法の本邦初の本格的な臨床マニュアルである。
対人関係療法とは、患者が抱える対人関係上の問題への取り組みを通して、情緒面の回復および社会的スキルの構築を図る精神療法のことで、20世紀にアメリカで開発されて以降、うつ病や摂食障害などを対象に研究が重ねられてきた。それをPTSD治療へ適用しようと試みたのが本書の著者らであり、本書はPTSD治療に新たな選択肢を示すものだ。
というのも、従来のPTSD治療においては、病気の原因となった過去のトラウマに患者が向き合うことでその克服を試みる認知行動療法が主流とされている。それは有効な治療法ではあるものの、患者の心をさらに傷つけ容態を悪化させる危険性も孕んでいるため、治療自体を敬遠する患者がいるのもまた事実だ。しかし本書で取り上げる対人関係療法は、あくまでも「現在」の人間関係に焦点を当てた治療法であり、過去のトラウマへの言及は最小限に留める。また、治療コースが短期間(10数週間程度)に設定されていることからも、患者に与える負担が比較的少ない治療法だと言える。これは重篤なトラウマを抱える患者にとっても、従来の治療法に限界を感じていた治療者にとっても、画期的なアプローチとなるだろう。
本書では、膨大なデータと厳選されたケーススタディを用いながら、PTSDに対する対人関係療法の概要や意義、実際の診療の流れを丁寧に解説していく。非常に実践的なマニュアルとしての役割を果たすと同時に、対人関係療法の入門書として読むこともでき、一般の医療関係者から専門家まで、幅広い層に開かれた内容となっている。
特に第7章以降に登場する複数の症例では、治療者と患者の会話が克明に記録されており、実際の診療の流れを追体験することができる。それは診療場面のシミュレーション素材として機能するだけではなく、対人関係療法の特徴とその有効性への具体的な理解を手助けしてくれることだろう。
PTSD治療や精神療法に関心のあるすべての読者に手に取ってもらいたい一冊だ。

感想・レビュー・書評

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  • 2023年9-10月期展示本です。
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    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00547939

  • 臨床家(専門家)向けの対人関係療法の手引書。

     図書館で借りたため、よく考えずに「対人関係療法」というキーワードだけで引っ張ってくるという愚かなことをしてしまったため、一般人が読むべき本ではないものを手に取ったことはわかっていましたが、折角借りたのだからと読み始めたら、結局一冊読んでしまいました。

     専門知識がないながらに読んでみて、分かったことを書いておこうと思います(間違っているかもしれませんが、今後、別の対人関係療法の本を読んで補完するつもりでいます)。

    ------------------------------------------
    感情は大きくても害になることはない(と知ること)
          ↓
    感情を見定めて名前を付ける、ラベリングする
          ↓
    そこでその感情を抱くのは理にかなっているか?(と考える)
          ↓
    相手との関係を終わらせる前に、何か他にできることはないか?(と選択肢をさぐる)
    ------------------------------------------

     こういったプロセスを踏むことで、正当なところで怒りを出せない人が、自分の意見を申し立てることに成功するということに驚きました。
    また、
     「怒りというのは、相手が自分を不当に扱っているということのサイン」
    という(旨の)こともとても腑に落ちました。

     これらについては、主に7章~9章の具体例を読んで感じたことです。

     この対人関係療法というものが、トラウマから来る対人関係のみに焦点を絞っていて、トラウマの再体験に重点を置いていないところも、(患者側として考えたとき)魅力的だなと思いました。

     以上、全く専門知識がないながらに読んでみた感想でした。素人の放言と思って見ていただければと思います。

  • 9月新着
    東京大学医学図書館の所蔵情報
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_search/?amode=2&kywd=4311475034

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