白い死神 (アルファポリス文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434185939

作品紹介・あらすじ

ネットで超人気にもかかわらず詳細な資料が一切無く、これまで誰もその素顔を知りえなかった「天才」「英雄」「伝説」の狙撃手シモ・ヘイヘ。その伝記邦訳がついに文庫化!驚異的な射撃技術を獲得した生い立ち、暗殺任務を帯びた敵スナイパーとの狙撃対決、そしてコッラー川における死闘——第一次ソ連対フィンランド戦争、通称<冬戦争>で活躍した、フィンランドの“白い死神”の真実がいま明らかになる!

感想・レビュー・書評

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  • 伝説の狙撃手シモ・ヘイへの伝記。
    臨場感ある描写は面白かったけど、時系列が分かりにくい部分があるので、冬戦争について触りだけでも知識を入れておく事をおすすめします。
    大国に翻弄される小国の立場と意地が感じられます。
    とにかく登場する男達がカッコイイ。

  • ソ連兵狙撃手側から見たシーン描写がとても衝撃的だった。
    シモの方の描写では「暖かい服をしっかり着込み、朝ごはんをしっかりとって腹を満たし…」と準備万端な状況であるのに対し、
    ソ連側では、空腹に耐え、上官が無能で、兵士たちには「フィンランドは芋の国だからすぐに倒せる、2週間で占領が終わる」と適当な情報を与えられて物量だけで突撃していく様子が描かれる。

    ろくに訓練もしていない弱兵がウラーの掛け声とともに突撃していくとハチの巣にされ、その屍の上を後続の兵や戦車がまた乗り越えていく。

    ソ連側の兵士もまた欺瞞とプロパガンダにより偽りの正義を信じ込まされ、
    反抗できない状態で死地へ突撃させられていることを考えるとあまりにやるせない。
    そのソ連兵も、家族が帰郷を待っている。

    現実で今まさに起きているロシアによるウクライナ侵攻でも、この愚かで無残な争いがまた繰り返されている。

    主人公であるシモは確かにヒーローだが、自分と家族と祖国の平和のために、飾りも驕りもせず淡々と執務をこなしていく。

    極限状態では人はたやすく正気を失ってしまう。
    彼の強靭なメンタルはどのようにして育まれたのだろう。

    負けたり逃げたりしたら死ぬか、地獄の苦しみを受け入れることになるという悲惨な未来が目前に迫っているとき、人は戦うしかなく、勝つしかない。
    交渉や撤退や戦略的な降伏といった選択肢が取れれば良いが、それが選びようのない時。
    そんな状況に陥ってしまわないように、重々、よくよく、平和の道筋を選び取っていかねばならない。

  • 狙撃手シモ・ヘイヘの伝記。

  • 資料によって人数が若干異なるようですはあるが、500人以上である
    ことには変わりはない。ひとりの狙撃手が倒した敵兵の人数である。

    フィンランドの伝説的狙撃手シモ・ヘイヘ(実際はシモ・ハユハユと発音
    する方が近いらしい@在日フィンランド大使館)。上記の人数は狙撃銃
    によるも人数であり、サブマシンガンでのカウントは含まれていない。

    彼が活躍したのは冬戦争だ。第二次世界大戦勃発から3か月目に
    ソ連軍がフィンランドへ侵攻して始まった戦いだ。シモ・ヘイヘはその
    冬戦争の一部である「コッラの戦い」に参戦し、対するソ連軍から
    「白い死神」として恐れられた。

    本書は戦後、沈黙を保っていたヘイヘへのインタビューに成功した
    フィンランドの戦記作家による作品とのことなので期待した。

    だが、少々中途半端んな感じなんだな。話は勿論、ヘイヘを中心に
    して進んではいるものの、他の人物のエピソードを盛り込み過ぎて、
    ヘイヘの伝記にしたかったのか、コッラの戦いの戦記にしたかった
    のか焦点がぼけてしまっているのが残念だ。

    それでもやはりヘイヘは凄いわ。スコープなし・アイアンサイトのみで
    これでけの人数を狙撃している。しかも「冬戦争」の名の通り、時期は
    厳寒のフィンランドの冬である。平均気温は-20℃~-40℃の野外
    で、白の偽装服に身を包んで雪の中でじっと相手を狙うのだもの。

    元々、農家の育ちで農業の傍ら狩猟を行っていたので射撃の腕は
    狩猟で磨かれたようだ。その腕を買われて予備役兵長として招集
    され、祖国を守る為に雪中で敵兵を狙撃したんだよな。

    尚、ヘイヘも参戦したコッラの戦いは攻めるソ連側は4個師団に1個
    戦車旅団、対する守るフィンランド側は1個師団。ヘイヘの所属した
    部隊においては32人の陣容でソ連軍4000人を相手にし、戦線の
    後退を許さなかった。

    ヘイヘ以外にもフィンランドは第二次世界大戦で何人もの傑物を
    輩出しているのだよな。日本ではこの時期のフィンランドに関する
    作品が少ないのが寂しい。フィンランド語が読めたらいいのにな。

    尚、スオミの英雄は冬戦争終結間際に負傷して戦線離脱。その後、
    戦場に戻ることなく2002年に93歳でこの世を去った。

    ※「スオミ」とはフィンランドのフィンランド語読みである。

  • 読み終わってはじめて、これが本人のインタビューに基づいた記録だと分かると言うw
    ロシア人に撃たれて顔半分吹っ飛んだあと、病床で、もうそろそろ種まきシーズンだなと言う場面があるんだけど、自分も畑がんばろうとか思った。
    また一か月遅れだけどね^^

  • #ブクログ #レビュー 「約60年にも渡り沈黙を守ってきたシモ・ヘイヘのインタビューに成功」アルファポリス文庫の伝記邦訳「白い死神」を読み終わった!著者のあとがきにもあるように戦史としてもエンタメとしても読めるように配慮されているので臨場感ゆたかに当時の情勢を学べる。ヘイヘ自身のキャラクターも魅力的だが個人的にはヘイヘの上官である豪放磊落なユーティライネン中隊長がめちゃくちゃかっこいい。

  • ネット等では伝説のスナイパーとして評価され誇張されていたシモ•ヘイヘのノンフィクション。
    フィンランド?ってどこ?IKEA発祥の国?そりゃスウェーデン!てなぐらいの知識で購読。

    血塗られた殺人鬼ではなく、狩猟の経験、それを狙撃に生かす体力、生き延びるために慎重な精神力を持った、どちらかというと地味な農夫だということには、驚かされる。

    この作品で述べられているのだが、機械化•人海戦術のソ連に対してフィンランドが、不利な状況の中、気候、土地の利により、ソ連に完全占領されることを防いだことを始めて知った。

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著者プロフィール

1970年生まれ。ヘルシンキ大学卒(修士)。歴史の教師として教壇に立つ傍ら、戦場に生きた男たちの姿を描く作品を発表し続けている。1998年の夏、約60年にわたり沈黙を守ってきた伝説の狙撃手シモ・ヘイヘのインタビューに成功、これに基づいて執筆した原書はフィンランドで大きな反響を呼んだ。その他の作品に、マンネルヘイム十字章を受けた軍人ラウリ・テルニの伝記三部作(Kari Kallonen 共著、未邦訳)など。本書は著者の初めての邦訳作品。

「2013年 『白い死神』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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