ことばの地理学: 方言はなぜそこにあるのか

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著者 : 大西拓一郎
  • 大修館書店 (2016年8月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469213607

ことばの地理学: 方言はなぜそこにあるのかの感想・レビュー・書評

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  • 柳田国男による「方言周圏論」(中央で発生した言葉が同心円状に広まる)と、東條操の「方言区画論」から話を起こし、各論をまわったあとでそこへ戻ってくる。著者の立場としては後者の立場だが、それでも「蛇の目」はあるというもの。言葉は江戸や京都だけで発生するものではなく、〈同じ場所が繰り返し言語変化の出発点となることは、きわめてまれ〉なものだという説明であり、たいへん妥当な考え方に思える。終章で著者は、〈これまでの言語地理学は、幾何学的志向に寄りすぎていた〉として、〈ことばと人間の諸側面との関係について地理空間を通して考え、人間とは何かという問題に接近することを目指す〉とより広く再定義している。

  •  言葉の根幹にあたる動詞の否定形に方言の東西差が明瞭に現れている。西日本では形容詞の連用形やワ行五段動詞がウ音便形になる。動詞や形容詞の不規則な活用は規則的な活用に飲み込まれる。動詞はラ行五段活用に染まり末尾のウ段の母音に引きつけられて変化する。連続する母音が融合して語幹が不安定になると安定した活用を取り戻すため訛った形を語幹にする。

    『そのような所(南アルプスは赤石山脈と呼ばれる急峻な山の連続体──引用者)であるから、美しいが、同時に厳しすぎる自然環境ゆえ、人は住まない。図1-1として掲げた言語地図の空白地帯は、そもそも住む人がいないこと、つまりことばを使う人間の暮らしがないことを示している。このように長野県のンと甲府盆地のンは一見連続しているように見えながら、深い山で分断されている。』29頁

  • 方言の分布と、傳播過程を推測する話。
    理由の接続助詞「サカイ」が傳播して行く経路で、受容を拒否した地域がある。その中に、順接確定と逆説確定の接続助詞が対応関係を持つ体系的構成になっているため、順接のサカイが拒否された、という推測が面白い。
    また、同じ交易に見えても、生活必需品の場合は言葉が傳播し、付加価値品の交易では傳播しない、という仮説も興味深い。
    活用形の統合では、終止形「起くる」否定形「起きらん」と言う地帯が九州の脊梁に分布しているそうで、その成立過程の推測が面白い。
    五箇山で太陽が擬人的に扱われている。同じ庄川流域でも、中下流では第三者として尊敬される存在だが、上流の五箇山では対者として尊敬されるというのが、大変興味深かった。「日様が昇らさった」

    柳田國男の蝸牛考の「同心円」に疑問を突きつけ、面白い本であった。

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