日本語を活かした英語授業のすすめ (英語教育21世紀叢書 13)

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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469244847

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  •  「コミュニカティブ・アプローチ」とは何かということを説明し、その中で日本語による指導がどのような学習者に対してどのような場面で活かされるべきかが述べられたもの。前半は、カミンズのBICS, CALP、Krashenの理解可能なインプット、ヴィゴツキーの発達の最近接領域という3つの言語習得や心理学の理論を援用しながら、日本語使用の有用性が説明されている。後半は具体的な授業例の紹介で、「言いたいこと」を日本語から英語に直すにはどうすればよいかということを教える方法が載っている。
     前半は面白かった。まず「コミュニカティブ・アプローチ」=コミュニケーション重視=コミュニケーションをしながら学ぶ=授業も英語でコミュニケーションしてなんぼ、という図式が安易なものであることを示してくれる。そもそも「approach(アプローチ)とは、一種の『考え方』、『哲学』であり、具体的な教授法ではない」(p.7)ということに対する理解が足りなかった。つまり「approachの上にdesign, procedureがあって3つでmethodology」というのがなるほどという感じだった。
     また、「教室外で英語を使う機会がないからこそ教室の中くらいは英語だけの環境にすべきだ」という批判を聞いたことがあるが、外国語学習に対する動機づけが低いEFL環境において単に量的に英語に接する機会を増やすだけではだめで、質的に向上させるために日本語を有効に使用する、というのが著者の主張だった。著者の吉田研作という人は、今おれの学校で使っている教科書の著者だが、その教科書は全てが英語で難易度も高く、なのに「日本語を使おう」という主張をしているのが意外だ。けれどそれだけに説得力がある。
     一方、後半の方はいわゆる英作文の授業のようになっていて、中身は田尻悟郎や田地野彰といった人たちによる語順指導と似ているだけで、物足りなさを感じた。(13/01/28)

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著者プロフィール

 上智大学外国語学部教授、上智大学一般外国語教育センター長、上智大学国際言語情報研究所所長。英語教育、バイリンガリズム、異文化コミュニケーション教育の第一人者。文部科学省中等教育局SELHi企画評価委員会委員、中央教育審議会外国語専門部会委員、文部科学省高等教育局現代的教育ニーズ取組選定委員、日本学術振興会大学院教育改革支援プログラム委員会専門委員、国土交通省航空局英語能力証明審査会会長、The International Research Foundation for English Language Education 理事、(NPO)小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)理事など、実践的なコミュニケーションのための「使える英語」を養成する英語教育の推進に向けて多方面で活躍。また、元NHKテレビ「英語会話Ⅰ」監修者・ライター・講師、元NHKテレビ「3か月トピック英会話」監修者、元日本衛星放送Practice for the TOFEL Test 解説者ほか。
 著書には、『外国研究の現在と未来』(編、Sophia University Press、2010)、『21年度から取り組む小学校英語─全面実施までにこれだけは』(編著、教育開発研究所、2008)、『「英語が使える日本人」の育成のための英語教員研修ガイドブック』(共著、文部科学省、2004)、『日本語を活かした英語の授業』(共著、大修館、2003)、『新しい英語教育へのチャレンジ』(くもん出版、2003)ほか多数。

「2012年 『your world 国際理解教育テキスト 教師用 CD-ROM』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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