会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」

著者 :
  • ダイヤモンド社
3.97
  • (86)
  • (89)
  • (73)
  • (4)
  • (4)
本棚登録 : 683
感想 : 98
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478000700

作品紹介・あらすじ

真剣勝負で「負け」を経験した人をトップに任命せよ!産業再生の請負人が提言。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『挫折力』が面白かったので、遡って読んでみた。
    その昔、毎日のようにニュースで見た産業再生機構の4年間のドラマはすごく刺激になった。

    P132
    重要なことは、カネボウの意思決定者が、合理的な意思決定を下せるように、プラットフォームをすっきりしてあげることなのだ。

    P146
    経営というのは、基本的に自由裁量行為である。違法行為や反社会的行為は論外だが、何をするのかは経営に委ねられる。執行と監督を分離した取締役会なら、ビジネスジャッジメントの範囲である限り、そこで口出しはするべきではない。

    P152 (株主主権に関する記述)
    マルクスではないが、生産手段、付加価値の源泉は、再び「働き手」、人的資本の側に戻ってきたのである。そんな彼らにとって、納得感のない統治権など、現実には機能しない。観光客に選挙権を与えるような仕組みがあるなら、そこに住む住民は、たまったものではないだろう。

  • 端的でわかりやすい、冨山さんらしい本でした。

  • 確かにこの著者は経験・実績もあり、言ってることも筋が通っている。
    経営者をやるからにはそれなりの覚悟を持ち、私利私欲だけではなく、社会のために・・・ということだが、なにかしっくり腑に落ちないところもあった。
    だが、ところどころ良いことも書いてある。

    P118
    ・人間は安心したい生き物
    ・人間は、自分が見たい現実しか見ない生き物
    ・企業の再生は言い訳との戦い

  • 冨山氏の名著
    経営、人間ドラマのリアルが描かれており素晴らしい。
    自身も出向経験があるだけに共感できる部分なども一部あった。

    メモ
    ・ほとんどの人間は土壇場では各人自身の動機付けの構造と性格に正直にしか行動できないという現実。
    ・腹落ちするコミュニケーションの重要性
    ・余計なことを考えず、ひたすら何をやらなければならないのかを整理する。合理的に必要最低限の人間と的確な能力と動機付けを持つ人間を揃え、しかるべき役割ときて権能を名実ともに与えて、マネジメントできれば本部機能は少人数ですむ。
    ・一人の人間も集団としての組織も、インセンティブと性格の奴隷である。
    ・私たちの判断や行動は情理に支配されている。
    ・いかに組織の人間を組織目的、戦略目的に整合する方向で勇気つけ、動機づけるか。
    ・市場や競争状況は頻繁に変わるが基本的な経済構造は実はあまり変わらない。
    ・将来に向けた戦略は予測できない状況変化の察知能力、適応力、戦力の柔軟性。みたい現実でなく、ありのままの現実をみられるか。
    ・戦略的自由度を大きく変える意思決定が重要となる。店舗を出店するかどうかなど。
    ・情理は日常の小さなところから、実践していくしかない。
    ・ガバナンスとは究極的には人間に対するリアルな影響力。自らをリスクに晒さなければその統治力は現実の影響力にはならない。
    ・一部のエリートが計画的にものを考えよりも、それぞれが自由に考え、自由にお金と人が結びついた方が効率的。社会主義と資本主義経済で実証されている話。
    ・リーダーに必要なのは人間性✖️能力=人間力。そのベースにあるのは一人一人の市井に生きる人々の切ない動機づけや喜怒哀楽というものが理解できるか。

  • ”産業再生機構COOとして企業再生に関わってきた冨山和彦さんが「現場を活かすために、真の経営人材を鍛えあげるべき!」と提言した一冊。エピローグに込められた強い想いに共鳴した。同時に、リーダーやマネジメントへの厳しい要求にも背筋が伸びる想いがした。

    冨山さんは、2007年4月に株式会社経営共創基盤(Industrial Growth Platform, Inc. (IGPI))を設立。社名に込めた想いは“より良い「経営」と「経営人材」をみなさまとともに創り出していくことを通じて、経済の持続的な成長を実現していくためのプラットフォームの一つとなる”。

    <読書メモ>
    ・組織は、人はなぜ動くのか。そもそも会社とは、企業とは何なのか。経営の基本原理とは。そしてなぜ会社は、人は、基本原則を踏み外すのか。これからの経営者に本当に求められる資質とは。(p.v)

    ・そこで私自身が今の時点で「考えている」重要な視点は何かというと、それは人間の弱さへの着眼である。(p.4)

    ・小ざかしい組織論やスキル論などよりも、人間集団を正しく動機づけることのほうが、いかに大きなインパクトを持つかを思い知らされた。そして企業組織の強さの根源が、よくわかった。それは、動機づけられた現場人材たちが、こまごまとした職務規定や指示命令なしに、自発的な創意工夫や相互補完で臨機応変に目的を達成していく力にある。(p.15)

    ・制度的なものだけでは個々人の個別性や状況の変化に対応することには、必ず限界がある。人間は一様ではない。人の気持ちも事業状況も一定ではない。現実は同期状態を常に狂わすように働く。そこにインフォーマルな働きかけ、非制度的な動機づけの重要性が生まれてくる。(p.31)

    ・このPDCAを回すというのは一見簡単に見えるかもしれないが、人間の本性と違うものを要求されているのだ。基本的に人間は弱いもので、見たい現実しか見たくない生き物なのである。(p.50)

    ★マネジメントやリーダーは、自分の仕事の責任の重さ、それも真の重さを認識しておかなければならない。なぜなら、それは他人の人生に影響を与えてしまう仕事だからである。部下が10人いたら、10の人生に責任を持たなければいけない。100人なら、100の人生がある。こういう役割は、誰でもできるような仕事ではないし、誰もがなれるような立場でもない。相当な覚悟、意志、鍛錬がなければ、立ってはいけない立場である。人の人生を背負おうという決心・覚悟のない人は、マネジメントをやらないほうがいい。
     (略)
     こういったものを背負いながら、リーダーは、情と理、人間的要素と算数的要素の中で、のたうち回っていくことになる。半永久的に矛盾がある構造の中で、苦しみ、もがきながら、自分の柱をつくっていくのだ。そうして「観」は出来上がる。人生観であり、価値観であり、世界観である。(p.213)
     #くぅ、ここは胸に響いた。

    ・最大の救いは、日本の現場を支えている人々の力、モラールは何とか世界のトップレベルを維持しているということです。(略)だから会社も日本も再生が可能なのです。「会社は頭から腐り、現場から再生する」のです。(p.219:エピローグ)
     #冨山さんが言いたかったのは「現場から再生する」の方なんだろうな。
    ★リーダー層の脆弱化が国の宝である現場人材を食いつぶす前に、私たちはしっかりしたリーダー、真の経営人材を真剣勝負の修羅場で鍛え、つくり直さなければならない。能力的な要素はもちろん、いやそれ以上に人間的な意味でしっかりとした信念の背骨を持ったタフなリーダーたちを、一人でもたくさんつくる努力、もちろん自分たち自身も少しでもそれに近づく真剣な努力を、ただちに始めようではありませんか。(p.219-220:エピローグ)

    ★経営において最終的に最も大事なものは、マネジメントする人の志です。経営の仕事は、社会や他人の人生に大きな影響を与えます。経営の単位が企業であれ、国家であれ、使命のために体を張る覚悟がなければ、引き受けるべきではありません。リーダーとは、そういう存在です。「後世への最大遺物は、勇ましい高尚なる生涯である」という内村鑑三の言葉を、私は最も愛しています。(p.222:エピローグ)


    <きっかけ>
     社内読書会 5月の課題本。社長からのオススメ。”

  • これは買いですね。12年前の本とは思えません。

  • ・性悪説でも性善説でもなく性弱説で見ると見えてくる
    ・相互安全保障を目的とした会議や根回しの業務量は人と人の組み合わせの数に応じて増えていく
    ・組織のハコをいじっても、成果主義を導入しても、それらが現実に仕事をする人間の根源的な動機付けに響き、シンクロしていないならば絶対に機能しない。
    ・戦略が仮説にすぎないことを本質的に理解し、やってみて、検証することに精力を注いでいる会社こそ、経営戦略が実践されていると言える。
    ・79 四つたして4で割る
    ・管理職の地位で付加価値を生むには相当の能力が必要
    ・ストレス社会というが硫黄島決戦に投入された兵隊たちを超えるストレスが現代に存在するだろうか。
    ・クビになることを厭わないような人間を育てる。周りに上司が誰もおらず、自分が決めなければいけない状況に追い込む。
    ・人間のインセンティブの中には非経済的なものがたくさんある。過去からの思いやメンツ、自分の得意なことをしたい、新しいことはやりたくない、といった気持ちが次々に折り重なって人は仕事に向かう
    ・観の目つよく、見の目よわく 宮本武蔵

  • 2018年(平成30年)11月、カルロス・ゴーン逮捕により、永らく読みかけのまま本棚に積んであった本書の存在を思い返し、最初から読み直した。

    企業再生を生業とした著者の実体験を元に、経営を行う人々の劣化について警鐘を鳴らした書である。

    読み進める中、著者は現在のゴーンの姿を想像していたのだろうか、何を感じ、未来に向けて更にどんな警鐘を鳴らす必要があるのだろうか、あるいは現在の社会を俯瞰して、本書から何を削り、何を書き加える必要があるのだろうか、ふと疑問に感じた。

    警鐘を鳴らしていたのに、カルロス・ゴーンは、結局、瀕死の企業をV字回復させた経営者であるのと同時に、インセンティブの奴隷でもあった。

    残念なことに、製造業の製品品質に関わる社会的な問題が顕在化している。
    しかし、品質は、製品を評価するモノサシのみにあらず、経営を評価するツールとしても利用されなければならない。
    「経営品質」という言葉があったな…
    と、「品質月間」である11月に、読了し感じた事である。

  • 2015.03.12 朝活読書サロンで紹介を受ける。
    2015.03.15 読まない書評を書いた。
    http://naokis.doorblog.jp/archives/bookreview_without_reading.html『会社は頭から腐る』(読まない書評)

  •  著者は、産業再生機構の元COO。この組織の運営を引き受け、倒産した起業の経営及び再生に従事してきた。この経験からの提言だけに非常に迫力があり、最近メディアで人気になっている経済アナリストや、経済学者、元大臣だった作家などとは、まったく重みが違う。 特に、「ゲマインシャフト(地縁や血縁で深く結びついた伝統的社会形態。日本的)」と「ゲゼルシャフト(利害関係に基づいて人為的に作られた社会。アメリカに代表される。)」との対比からの日本の進むべき方向や優位性に対する言及は、マネージメントの端くれである自分にとっても非常に重要な示唆であった。この話から思い出すのは、「民族は、それを偉大にした特性により滅びる」との塩野七生の言葉である。確かに今の日本企業、特に大企業は、「和(悪く言えば、シガラミ)」によってがんじがらめ。残念ながら、我が社もその例に漏れず、日々社内調整に莫大な時間が浪費される。このような悩みをお持ちのビジネスマン諸氏よ、この本を読み、あなたの組織を変えよう。

全98件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

冨山 和彦(トヤマ カズヒコ)
株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長
1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストン コンサルティング グループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長、パナソニック社外取締役、経済同友会政策審議委員会委員長。財務省財政制度等審議会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生会議有識者、国土交通省インフラメンテナンス国民会議議長、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員などを務める。主な著書に『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)、『コロナショック・サバイバル』『コーポレート・トランスフォーメーション』(いずれも文藝春秋)などがある。

「2022年 『両利きの経営(増補改訂版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

冨山和彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×