ドラッカー名著集8 ポスト資本主義社会 (ドラッカー名著集 8)

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478002100

感想・レビュー・書評

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  • 1993年作と著者の著作の中では比較的最近のものになります。その頃はといえば、自分はまだ学生時代でバブルの時代を経て、バブルの崩壊もぴんとこないまま、ぼんやりと無自覚に楽しく生きていた時代です。世界では、共産圏が崩壊して少し後ですね。

    そこで『ポスト資本主義社会 (Post-capitalist Society)』です。
    この前後数十年を歴史の転換期と位置づけ、様々な視点で時代を論述しています。構成は大きく、I部:社会、II部:政治、III部:知識、と整理しています。その中で、年金や社会格差など最近でも大きな話題になっている問題も取り上げられています。かなり以前から強調していた、新しい形の"コミュニティ"の重要性や、"知識社会"の到来とその意義を論じられています。相変わらず面白いですね。

    日本についても多くの言葉を裂き、バブル崩壊後にも関わらず基本的には日本に対して高い評価を与えています。それに応えるだけのものを実現しているか、失望させてはいないか、気にかかるところです。

  • 2017年に本書を初めて読みましたが、とても感銘を受けました。1993年に発刊された本とは思えませんでした。ドラッカーは本書の中でポスト資本主義の世界は知識人と組織人の時代だと述べていますが、本書で度々登場する「組織」を「ネットワーク」に置き換えて広義に解釈すると、2017年でも十分に説得力があると思います。ドラッカー自身が「日本語版への序文」で述べているように、本書を通じで日本びいきの表現がかなり多いのは気になりましたが、まだバブル崩壊直後で、日本がそれなりに評価されていた時期だったということでしょう。

    逆に言えば、2017年の日本の状況をもとに本書を読むと、日本がドラッカー氏の主張する知識社会に移行しているのかは大きな疑問を感じました。つまりドラッカー氏の期待に日本は応えられていないということです。そしてその大きな理由は社会人教育がうまくいっていないことだと思うのですが、これは教える方(教育機関)が悪いわけではなく、むしろ我々日本人(社会人)がスマホゲームやSNSなど教養を蓄積するのとは程遠い生活を日々送っていること、読書などよりよっぽど楽しいアクティビティに満ち溢れているということで、しかしドラッカー氏の言うようにそんな誘惑に囲まれていても教養を蓄積し、現実社会に生かす人物がこれからの知識社会での中心人物になるのだとは思います。本書とても興味深く読みました。

  • 『LIFESHIFT』に書かれてたことも、『ホモデウス』に書かれていたことも『ティール組織』に書かれていたことも『学習する組織』に書かれていたことも既に、この一冊に書かれていた。圧倒的先見性。必読です。
    一方で
    ポスト、といえるのだろうか。資本主義社会の資本の中身が変わってきたよね、レベルの話?? 広井良典さんの定常型社会、緑の福祉国家や『資本主義の終焉』のほうがよっぽどしっかり論じられているような、、、
    とも感じました。
    また、『マネジメント』、『非営利組織の経営』、『プロフェッショナルの原点』を読んでいたら、新しく得られるものが少ないかもしれません。

  • ドラッカー名著集〈8〉

  • またしても自分には難しすぎたわけだが。

    90年代までが労働者と資本家に分かれた資本主義で、現代がポスト資本主義で知識社会、って感じの話だった。
    今が資本主義で、その後何が起こるかの話だと思ってたけど違った。

    知識あるいは知力それ自体が労働力そのものとなることは今日極めて常識的だが、90年代でさえ一般的ではなかったとのこと。

  • 数世紀続いた資本主義が終わりつつあるのではないか、という気分の今日この頃、冷戦終結後、つまり「共産主義」後の93年に書かれたドラッカーの「資本主義」後の社会論を読んでみる。

    が、驚くべきことが書いてある訳ではなく、これからの社会では、「資本」ではなく「知識」が中心となる、という、今となっては、常識に属する事かな?

    といっても、93年にこれが常識であったかというと、そうではないわけで、ドラッカーの慧眼に改めて感服する、ということなのだろう。

    だけど、今読んでも面白いなと思ったポイントは、
    ・ブローデルの見解などを踏まえつつ、数世紀にわたる資本主義の歴史的なパースペクティブのなかで議論されていること
    ・資本主義だけでなく、国民国家という政治体制についても、議論がおよび、ポスト国民国家というパースペクティブがあること
    ・そのなかで、マルクスやケインズ、そしてテイラー(ドラッカーによれば近代を作った人間の一人)などの思想家の位置づけがなされていること
    ・そして、社会論だけでなく、個人としてのあり方、教養のあり方について論じてあること
    などである。

    知識社会においては、当然、知識が中心なので、知識人、教養が大切。今日における教養とは、古典に関する知識ではない。専門的知識を除外しての教養とはありえない。なぜなら、社会において価値ある知識とは専門知識だから。

    が、専門知識それ自体は、教養ではない。教養とは、自分の専門知識以外の専門知識を理解する能力のことである。

    そして、そうした能力なしには、自分の専門知識それ自体もほとんど意味がなくなる。なぜなら、他の分野での新しい知識によって、自分の分野で革命的な変化が起こるということが、今日では、常態であるからだ。

    これまた、当たり前のことだが、そのとおりだと思う。

  • ポスト資本主義

  • 1993年初版のポスト資本主義を考察した著作。

    前書きに著者は「本著はいかなる国の読者よりも日本人にとって大きな意味がある」とし、バブル絶頂から転落しつつある日本に未来を示唆したい思いがあったようだ。

    著者最晩年に書かれた本のひとつであり、それまでの著者の総決算的な内容である。ドラッカーを読み込んでいる読者には今までの振り返りにちょどよい本で、初見の人にはドラッカーの考え方がよく分かるのではないか。

    ただ、本著を「預言書」だと勘違いしては肩透かしをくい、本質を見失う。

    この本は近代から現代史をその意味するところを解き明かし、足元を見据えることに主眼を置いている。そこから見えるポスト資本主義の社会や政治体制、知識そのものに関わる新しい課題を扱っている。

    著者は国民国家が揺らぎケインズ理論が破綻すると慧眼にも見据えていた。そしてグローバリズムが政治社会の趨勢になる一方で同進行的にリージョナリズムやトライバリズムが国民国家の基盤を揺るがしているとしている。

    時代をよく示唆した名著である。

    以下印象に残った文章。

    ・今日では、土地、労働、資本は主に制約条件として重要である。それらのものがなければ、知識といえども何も生み出せないし、経営管理者がマネジメントの仕事をすることもできない。だがすでに今日では、効果的なマネジメント、すなわち知識の知識への応用がなされれば、他の資源はいつでも手に入れられるようになっている。

    ・社会やコミュニティや家族は「存在」する。組織は「行動」する。

    ・成功する組織は、自らの内に、自らが行っていることすべてについて体系的廃棄を組み込んでいる。数年ごとに、あらゆる工程、製品、手続き、方針について検討することをみにつけている。

    ・先進国は、知識労働者とサービス労働者の生産性を向上させない限り、しかも急速に向上させない限り、経済の賃貸と社会の緊張に直面する。

    ・今日のトップマネジメントは、テニスのダブルス型チームである。これは情報化時代において必要となり、あるいは少なくとも可能になった試みである。

    ・生産性向上のための最善の方法は、人に教えさせることである。知識社会のいて生産性の工場を図るには、組織そのものが学ぶ組織、かつ教える組織とならなければならない。

    ・組織の中のあらゆるものが、「組織と組織の目的に対して、自らにできる最大の貢献は何か」を問い続けなければならないことを意味する。換言するならば、全員が責任ある意思決定者として行動しなければならない。全員が自らをエグゼクティブと見なければならない。

  • 読了—APR 6,2012
    【概要】 
     第一部では『社会』について、太古から現代に渡り、知識への認識の劇的な変化がいかに社会的変革をもたらし、歴史を形成して来たかを説明する。今や、知識にテクネー(技術)が含まれないという共通理解が崩れた。マネジメント革命と呼ぶ1945年~90年に至るまでには、知識を知識に応用する行為がみられ、知識はその効用を行為によって証明せねばならないものと解される。そのようなポスト資本主義社会を知識を第一義的な資源とする社会である知識社会と定義し、同時に労働者は組織を通じてのみ自らの能力を発揮出来ると言う意味で組織社会と解す。
     ドラッカーは、ポスト資本主義社会で生まれる新たな階層である、知識労働者とサービス労働者の統合こそが、今日的課題であると考えている—その統合の観点から教養の大事が第三部で展開される。第一部『社会』では、そのような今日的「階級闘争」を防ぐために、経済的生産性向上とサービス労働者の社会的尊厳がどう達成されうるのかを知識、組織、生産性、アウトソーシングなどの語句から説明する。
     第二部は『政治』についての考察であり、メガステイトという概念を基に議論を展開する。全体主義国家としてのメガステイトは冷戦終焉で崩壊し、また西側のメガステイト崩壊も不可避とする。というのも、国民国家が国民の生命財産を守るという本来の役割を超えているからだ。経済と社会の主人(政府自ら徴税国家として国民経済を管理し、福祉国家として社会領域の実行者へ)となる過程を描き、それが所期の目的を果たせないどころか、ばらまき国家へと堕し、政府機能と市民性を阻害していることを主張。このため、政府の再建の必要性と市民性回復の核としての社会セクター(NPO)が不可欠であるとする。政府はあくまで供給者として振る舞い、政府からアウトソーシングされた社会セクターは、宿命ではなく、意志と思いやりに基づくコミュニティ構築の実行者として振る舞い、これによる生産性向上を主張する。
     第三部は『知識』についてそれが経済に与える影響を考慮し、知識の経済学の必要性を説き、またマネジメントの責任として知識の生産性を上げる処方を展開する。知識の生産性が先進国の競争力に資するとの観点から、知識の結合の必要性を説き、既存の知識を利用し未知を切り開く方法論の必要性から教育と学校を問い直し、さらに専門知識を一般知識に転ずる「知識を預る存在」としての教養ある人間について論を進める。

    【感想】
     本書は、1993年に書かれたもので、すでに20年前のものである。ドラッカーの洞察を現在の観点から答え合わせをするように読んだ。幾つかの疑問、問題として、例えば…
     
     ①アウトソーシングを国内だけの概念で用いている点。実際は海外へのコールセンターの外注及び海外からの安い看護士の受け入れなど、まさに国内サービス労働者の機会と尊厳を奪っているのではないかという点。アウトソーシングによる生産性向上が知識労働者とサービス労働者の統合を阻害しているともいえドラッカーの意図とは逆に進んでいるのではないか。
     ②、企業など今日の組織はロビーイングをするだけであり…成功した経済人は製品、市場に関心があり、政治権力に感心は持たなかった(p132-3)。組織の(人事権や価格決定権など)社会的力は政治権力によって規制されなければならない(p134-5)とあるが、献金など政治過程を通して、自らに成果をもたらす環境を形成するならば、企業の社会的権力の抑制を企業自ら政治的力を左右することで不可能に出来るのではないか?つまり大口献金先=大企業に配慮した政治が結果的に、労働者の尊厳を奪うような政策を打ち出しているのではないか?
     
     尤も、ポスト資本主義社会は次の時代、未来を作る時代で流動的で「産みの苦しみ」を生じさせるという認識は広く共有出来る。また、第一章は、「知識」を軸に資本主義や産業革命を介する歴史観は非常に興味深く、さらに年金資本主義として人口構造から生じるであろう、年金を巡る議論も、今日の日本でまさに生じているところで20年前の洞察力は凄い。
     本書をまとめつつながら感じるのは、ドラッカーのつかみ所のなさ。例えば、教育の自由化やアウトソーシングの力説、さらに政府による所得再配分の否定はシカゴ学派やサプライサイド経済学のように思わせる。一方で今日の会社統治に関し、知識労働者の意欲と献身が生産性向上に大事とし、彼らを疎外するものとして株主主権論を排し(p101)、またサプライサイド経済学の正しさは実証されていない(p212)と述べ、サッチャーなど反行政的政策は失敗したなど、必ずしもそうでない。これらのカテゴリーに入らないのは、組織で働く人間への眼差しと社会に与える影響を捉えているからだろうし、筆者の言うように既存の学問分野からは距離をとっているからだろう。それが自分の中でのとらえどころのなさの原因であると思う。ドラッカーを理解出来るまでにもう少し時間がかかりそうだ。ドラッカーとは何者か…

  • ドラッカー名著作集8巻
    資本主義社会と言われている世の中から、社会がどのように変わっていくかを、明確に提示している本著作。それだけでなく、働く上のでの取り組みから、教育機関が今後どうあるべきか提唱している。
    言うまでもなく名作です。

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