いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ―有効需要とイノベーションの経済学

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478008263

感想・レビュー・書評

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  • demand-creating innovationというアイデアの提案。やはり言いたい事は最後の「ケインズとシュンペーターをどう統合するか」だね、経済学説史の本というよりは。でも、僕のような能力値の低い院生には、英語でしかも経済物理系のマクロ動学論文なんてとても読めるはずもなく・・・。
    中身は普通に読み物としても面白い。

  • 同時代に生きたケインズとシュンペーターを比較論じたもの。
    丁寧に読めば、得るものが大きそうなんだが。。。

  • 『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ――有効需要とイノベーションの経済学』(吉川洋、2009年、ダイヤモンド社)

    有効需要政策を打ち出し、不況時には政府による公共投資を増やして失業率を下げ、マクロ的に新たな需要を生み出す必要性を説いたケインズ。これはディマンドサイドでみた経済学であり、戦後の成長の各国の経済政策に採用された。

    一方、ミクロで見た場合の個々の企業のイノベーション(新結合)が新たな発展の原動力とするシュンペーター。彼によれば、不況すらイノベーションには必要だという。

    本書は『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』という題であるが、お互いに相入れない二人の経済学の巨星の歴史をひもとくのが大部分を占めている。

    2007年秋のサブプライム問題以後、2008年の「100年に一度」ともいわれる経済危機に際して、ケインズ経済学が「世界中で復活した」という記述がある(p.252)。本書には1980年代以降の経済の流れは記述にないので、少し補う。

    ケインズ経済学は戦後、世界の多くの国で経済政策に取り入れられたのであるが、1970年台のスタグフレーション以後は衰退していった。その点、現代に至るまで興隆していったのが新古典派経済学である。いわゆる「ネオリベラリズム(新自由主義)」と呼ばれる政策パッケージであり、1980年以後は民営化や規制緩和が世界中で進められた。しかし、行き過ぎた規制緩和は不透明な投機マネーの流れを生み出し、その果てが今回のサブプライム問題とそれに付随する国際経済危機である。

    この国際経済危機に対して、ケインズ経済学が復活したという。例えば、2009年1月に就任したアメリカのオバマ大統領は、総額8250億ドルの財政出動を発表するなど、ケインズ経済学への回帰が見られるのだ。その中でもオバマ大統領が「グリーン・ニューディール」を打ち出しているところが興味深い。何故なら、「ニューディール」というのは1929年の大恐慌を克服するために打ち出されたケインズ経済政策だったからである。

    では、シュンペーターについてはどうか?

    思うに、今日の日本は少子高齢化に伴う人口減社会への突入、あらゆる面での国際化を迎え、内的・外的に大きな変革期にある。このような変革期において、日本は科学技術に重点的に投資していかなければならない。新技術を開発し(科学の成果)、それを産業・経済活動に活かすこと(技術の成果)、すなわちイノベーションが今日の日本には必要なのである。新しい需要を生み出すためのイノベーション。まさにシュンペーターが指摘したことが今日の日本にもあてはまるのである。

    (2009年6月19日)
    (2010年5月22日 大学院生)

  • ケインズとシュンペーターを比較しながら、二人の経済学を紹介。

    ちょっと難しかったり、面白くなかったりする部分もあるのですが、シュンペーターについてよく知ることができてよかったです。

    「(シュンペーターの挙げる『企業家の動機』)第一は『私的帝国』ないし『自己の王朝を建設しようとする夢想と意思』。第二は『勝利への意思』あるいは『成功を獲得しようとする意欲』。第三が『創造の喜び』である」

    「長期的にはわれわれはみな死んでしまう(In the long run, we are all dead.)」

    「ゾンバルトの議論の特徴は、『贅沢』の元をたどっていくと結局のところは女性の力がリードする『恋愛』こそが『贅沢』を生み出す源泉だった、という明快な結論にある」

    「賃金は『公正』『正義』の観念と切り離せないのである」

    「本当に存在するのは循環そのものなのだ(Real is only the cycle itself)」

    「現在では全ヘラス(ギリシア)にわたって子供のない者が多く、また総じて人口減少がみられる。そのため都市は荒廃し、土地の生産も減退した(中略)人口減少のわけは人間が見栄を張り、食欲と怠慢に陥った結果、結婚を欲せず、結婚しても生まれた子供を育てようともせず、子供を裕福にして残し、また放縦に育てるために、一般にせいぜい一人か二人きり育てぬことにあり、この弊害は知らぬ間に増大したのである」
    ↑紀元前二世紀半ば ポリビオス



    写していて気がついたのですが、誤字がやけに多い。








  • ケインズとシュンペーターは、実は同い年生まれ。マクロ経済学の発展に多大なる影響を与えた両者は、生前まったく交流がなく、相互に批判しあう関係であったという。

    ケインズ経済: 一時的な有効需要の不足を財政・金融政策で解消しようという“短期の理論”
    シュンペータ経済: 創造的破壊とイノベーションによって、経済成長を実現しようという“長期の理論”

    著書吉川洋教授は、この二人の理論を綜合する「需要創造を通じた経済成長理論」の主張者だが、本書ではその立場を封印し、それぞれの思想や理念を、初心者でも理解可能なように丁寧な説明がなされているという。

    少子高齢化が進展する中で、日本の経済成長に対する悲観論も多い中、マクロ経済を考え直すガイド役となる。

    日経新聞書評 千代田区立図書館蔵書

    アダム・スミスの見えざる手、この洞察は精緻な数学的分析に裏打ちされているのではない。彼が提示したのは経済についてのひとつのビジョンである。ケインズとシュンペーターも示したのはビジョン。

    一国経済全体の活動水準は生産性要素、技術水準などのサプライサイドではなく、需要の大きさで決まる。工場の稼働率低迷や失業が発生する理由を解明した。不況は需要不足から生まれるのだ。

    資本主義の本質は、企業家によるイノベーションに基づくダイナミズムにある。静態的な資本主義は、形容矛盾であり、動き・変化のない資本主義経済は存在しない。

  • 331.74:K52:Yo=Da

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