幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」
- ダイヤモンド社 (2017年6月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478102480
感想・レビュー・書評
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この本が残酷な所は、これから、個人が、
「好きなことで生きていく」「得意なことで生きていく」ことが、
「正しい生き方」であると、言っている点だと思います。
少し前の、日本では、それらの価値観は、「正しくない生き方」とされ、
全否定されていました。
強者以外は、それらの言葉を口にはできませんでした。
「そんな人生甘くないよ」、「もっと現実をみろ!」というのが、
その価値観を否定する、もっともスタンダードな反応です。
しかし、ここ十数年で、
日本と日本人を取り巻く環境がガラリと変わってしまいました。
相変わらず、政府は、経済成長、経済成長と言っていますが、
成長できる資源は、日本は、どんどん減少しています。
多くの識者が指摘していますが、日本の国際競争力は、
もはやかなりの分野で、失われています。
これから、競争力をつけるといっても、その担い手である、
人材の絶対数が著しく減少するので、
今の状態を維持するのも、やっとだと思います。
また、上場企業が倒産することは、珍しくなくなりました。
リストラは今や当たり前となり、組織に依存して生きるというのが、
かなりリスクな生き方になりました。
日本は、超高齢化社会+人口減少社会+少子化+労働者数の減少という
未曽有の社会に突入し、社会の様々なシステムが機能しなくなっています。
橘氏の一連の著作は、個人が経済的合理的に生きるには、
どうすればいいか、個人が国家や組織に依存せずに、
どう生きればいいかという視点で書かれたものが多いですが、
この著作では、個人の生き方をリスクヘッジする上での
最適化する「生き方」を述べています。
それが、自分の持っている資源(人間関係、能力、資産等)を、
「好きなこと生きていく」、
「得意なことで生きていく」へ投入するというやり方です。
これが、最も個人を最適化できる生き方です。
何かに依存することでしか安定を感じられない、そうでなければ、
不安になるというのが、
多くの日本人のメンタリティーです。
以前は、会社が豊かになれば、個人が豊かになりました。
今は、全くそうではありません。
それは、世帯収入を見ると、はっきりします。
94年比較で、2割以上収入が低くなっています。一方GDPは増加しています。
一生懸命努力してきましたが多くの日本人は、貧しくなりました。
今後は、もっとこの傾向が顕著に出てきます。
以前まで美徳とされていた人生観や労働観が、全く役に立たなくなっています。
それを認識する上で、橘氏の著作が一定の指示を受けるのは、非常に頷けます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幸福のインフラが、金融資産、社会資本、人的資本の3つで構成され、その構成割合で8つのタイプ(リア充、プア充、、、)と分けるのは極めてシンプルだが、その通り。各種専門家の研究内容をエビデンスとして採り上げるので、説得力あり。
主張はシンプルで合理的。しかし、それを実現するためには政治による意思決定が必要。そこが一番の問題。すっきりした読後感とは裏腹に、一種絶望的な気分になる。 -
日本人は幸福になろうと「強いつながり」を求めるが、その結果、(個人でなく)「間人」として人間関係の中に埋め込まれ、身動きが取れなくなる。そして長時間労働や過労死、過労自殺。
日本は「自分の人生をどの程度自由に動かすことができるか」の国際比較で57カ国中最下位。
人生の土台となる3つの資本=資産。
「金融資産」自由、
「人的資本」自己実現、
「社会資本」共同体、人間関係、繋がり
幸福の製造装置(ブラックボックス)
資本を一つしか持ってないとちょっとしたきっかけで貧困や孤独に陥る。
「自由」とは「誰にも、何者にも隷属しない状態」のこと。そのためにはお金が必要。
テレビ局の番組の政策方針。粉飾決算。不正燃費データ。。生活を会社に依存するサラリーマンであれば、会社の方針に従うのは(隷属するのは)当然かも。ただそれを「自由」とは言わないだけ。
幸福の話をするには「限界効用の逓減」に触れなければならない。暑い日のビールの美味しさ(効用=幸福度)は1杯目が最高で、2杯3杯と追加していくと減っていく(効用の変化=限界効用)。これはお金にも当てはまる。日本では年収800万円(世帯年収1500万円)を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなる。お金がありすぎるてお金のことを考えすぎると不幸になる。
資本主義ってなんだろう?資本主義=資本市場とは「株式会社によって自己組織化した複雑系のネットワーク」株式会社とは複数の株主が有限責任で事業に投資することでリスクを分散する仕組み。また株式会社の特徴は借金(融資など)で株主資本にレバレッジをかけること。
マイナス金利の世界では、賢い人は利潤を最大化するために金融資本よりも人的資本を有効活用する。すなわち「働く」こと。
お金持ちの倹約のルール「同じ結果を得られるのなら、安ければ安いほどいい」これで自然と倹約することになる。
収入は多ければ多いほどいい。でも同じ収入なら(あるいは多少少なくても)自己実現出来る仕事がいい。
「知識社会化 + グローバル化 + リベラル化」の三位一体は知能の高い人が大きなアドバンテージを持つ社会。そこから脱落した人の怒りは社会の保守化=右傾化を招き、トランプ現象となっている。
企業であれ、個人であれ、知識社会に適応できなければ脱落するだけ。
日本企業は本社採用と現地採用といった国籍差別や年功序列、終身雇用といった日本的雇用制度を取っている限り(グローバル化リベラル化に対応できず)負け続ける。
サラリーマンは日本だけ。
オンリーワンでナンバーワンの戦略。スペシャリストになるには、1)好きなことに人的資源の全てを投入する。2)好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。3)官僚化した組織との取引から収益を獲得する。
世の中になぜ会社があるのか?それは「分業した方が効率がいい」から。
「幸福」は社会資本からしか生まれない。
人間関係には「愛情空間~5」「友情空間、イツメン~30(政治空間~150)」「貨幣空間~∞」
日本の社会における「友だち」は厳密なルールがある。中学、高校の同じクラス。先輩、後輩とは違う。「友だち」は奇跡。
「統治の倫理」(権力争い、武士道、国盗り、天下平定、勝者総取り、嫉妬、憎悪、殺人、敵を殺すことでより大きな権力を獲得する、戦争に駆り立てる血なまぐさい世界)と「市場の倫理」(お金儲けゲーム、商人道、一番にならなくてもほぼ裕福になればハッピー、信頼関係、契約履行、他人と協力)
あなたは個人主義(欧米人型、かけがえのない自分)か間人主義(アジア人型、共同体の中の自分、他人の上から目線を不快に思う)か?
日本的経営はアメリカ企業をも変容させた。ボスではなく同僚・仲間によるチェック(チームワーク重視)。製造業、レストラン、介護などの労働現場での生産性を上げた。
「幸福な人生」の最適ポートフォリオは、大切な人との小さな愛情空間を核として、貨幣空間の弱いつながりで社会資本を構成することで実現できる。強いつながりを家族に最小化し、それ以外の関係は全て貨幣空間に置き換える。その上で一つの組織(伽藍)に生活を依存するのではなく、スペシャリストやクリエイターとして人的資本(専門知識)を活かし、プロジェクト単位で気に入った仲間と仕事をする。
本当の自分はどこにいるか。あなたの過去にいる。本当の自分は幼い頃に友達グループの中で選び取ったキャラなのかもしれない。大人になるということは子供時代のキャラを捨てることである。心の中に子供時代のキャラが残っていて、「見つけてよー」と訴え続けているのかも知れない。
幸福な人生とは。
①金融資産:「経済的独立」を実現すれば(金銭的不安から解放され)自由な人生を手にすることができる。
②人的資本:子供の頃のキャラを天職とすることで「ほんとうの自分」として自己実現できる。
③社会資本:政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる。
①金融資産は分散投資する。
②人的資本は好きなことに集中投資する。
③社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散する。 -
橘玲さんの本は、毎度世の中を今までにない視点で見ることを教えてくれる。しかも、裏付けをしっかりつけているので納得感も凄い。
今回は“生命誕生のプログラム遺伝子の目的”から始まった。まるで『アマデウス』のようだ。
この語りを細かに記憶にとどめるという姿勢はない(話しのネタとしては相変わらず宝庫)。頭の中を、刺激されながら通過したこの記憶さえあれば、そして橘さんのような囚われのない視界を持つ人たちの眺めている視線を借りて世の中を眺めることができれば、自分のが生きている世界が自ずと創られていく。それが本を読むことのひとつの目的なんだな。 -
橘玲氏の著作ということで読んだ本です。しかし、この本を読んでみると、以前読んだLIFE SHIFTの日本版という感じでした。しかも日本の社会を前提にしたこれからの生き方の指針を示しているので、アメリカ社会を前提にしたLIFE SHIFTより参考になりました。
LIFE SHIFTでは個人が持つ資産/資本をあげ、それぞれの資本を生かした戦略を説いていましたが、この本でも「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本をあげ、その3つの資本から「幸福に生きるためのインフラストラクチャー」の設計を提案しています。
その3つの資本の構成によって、人生を8つのパターンに分けています。
プア充:社会資本;○、人的資本;×、金融資産;×
貧困: 社会資本;×、人的資本;×、金融資産;×
リア充:社会資本;○、人的資本;○、金融資産;×
超充: 社会資本;○、人的資本;○、金融資産;○
お金持ち(投資家):社会資本;×、人的資本;○、金融資産;○
旦那:社会資本;○、人的資本;×、金融資産;○
退職者:社会資本;×、人的資本;×、金融資産;○
ソロ充:社会資本;×、人的資本;○、金融資産;×
こんな感じでわかりやすく人生をパターン分けしているのですが、退職者や、ソロ充といった日本で特徴的な人物像についても言及しているので、自分がどのパターンに属しているのか想像しやすくなっています。
また、日本特有の雇用形態であるサラリーマン(正規雇用社員)を特権階級として、日本社会が差別社会であり、なんだかんだ言ってもサラリーマンは優遇されており、その身分に身を置くことのメリットを説いています。
ただし日本人は忖度など人間関係を重視し、欧米人は個人や論理を重視しますが、それを「間人」と「個人」と定義し(社会学者・浜口恵俊が提唱)、その性格から言語認識においても欧米人は「名詞」をアジア人は「動詞」を重視しています。
しかし、アメリカでは「日本化」が進んでおり、チームワークを重視することによって労働力を搾取しているようです。
そして最後に、幸福な人生への最適戦略を次のように要約しています。
①金融資産:「経済的独立」を実現できれば、金銭的な不安から解放され、自由な人生を手にすることができる。
②人的資本:子どもの頃のキャラを天職とすることで、「ほんとうの自分」として自己実現できる。
③社会資本:政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる
そして幸福の統一理論を次のようにまとめています。
①金融資産は分散投資する
②人的資本は好きなことに集中投資する
③社会資本は小さな愛情空間(家族)と大きな貨幣空間(ゆるい繋がり)に分散する。
この本は自分にとって少なからず、これからの人生を生きる指針になった本です。 -
久しぶりの楽しい読書。
言われなくても80歳まで働くつもりでいたが、金融資本、人的資本、社会資本という概念で整理され、低金利時代の今、資産運用には期待できなのだから、働いて人的資本を労働市場に投入すべき、とズバッと書いてあって、とてもすっきりした。なるほど、そうだよね、それでいいんだよね、と。好きなことに人的資本を集中投下する、ということも、言われなくても分かっているつもりだし、そうしたいと思っていたけれども、改めていろいろな根拠をもとに説明されるとこのままではだめだ、という気持ちが強くなった。うじうじ悩んでないでアクションを起こさねば、と背中を押される。
そして、これまで自分がサラリーマンとして、いったい、何に苦労をしてきたのか、その背景が的確に表現されていた。私はマックジョブを正社員という立場でやってきたわけで、それは常に間人としてであり、チームのことを考えて自分の休みを調整したり、やりたくない仕事も「ない袖は振れない」と上司に言われ、チームのために引き受け、人権侵害を感じながらも、我慢してやってきた。こんな生活をしていては決して幸せにはなれない。もう若くはなく、既に手遅れかもしれないけれど、今すぐ動くべきなのかもしれない。
この本のメインターゲットは私のような読者なのだろう。きっとマーケティングは抜かりなくやられているはずだ。そのマーケティング戦略にまんまとはまってしまった。たくさんの読者に受け入れられ、書籍の売上を伸ばすことも想定して書かれたのだとしたら、私のようなサラリーマンは多い、ということだろうか。著者の意見に反論はなく、100%agreeだが、きっとそうではない読者もいるはずで、逆にそういう人たちの意見を聞いてみたいと思う。 -
幸せになるためには何をすればいいのか?
僕の結論は好きなことで稼いでそこで出会った人達と繋がることだなと思います。
何度も読み返していきます。 -
幸福に必要な3つの資本=資産の揃え方、ポートフォリオを示してくれたマインドの面で実用的な本だと思う。
3つ各々の要素に関する説明や例も分かりやすく理解しやすい。
一部このご時世に公務員の幸福度は高いという部分には疑問を感じたがほんの一部分なので無視できる。