- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480015228
作品紹介・あらすじ
現代社会は利己主義がはびこっているように見える。しかし人は、しばしば自分の身を危険にさらしても他人を助けようとし、困っている人を助けたいと願う。この利他的な感情はどこから生まれてきたのだろうか。ヒトを利他行動に駆り立てるものは、本能なのか学習なのか。共感、信頼、情愛はどうすれば育てられるのか-。脳科学、遺伝学、分子生物学の最新知見を交え、ヒトという生物、ヒト社会の本質に迫る。
感想・レビュー・書評
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第1章 人の性格を読む
第2章 本能か学習か
第3章 行動と脳
第4章 ヒトを変える脳内物質
第5章 信頼と愛情を生みだすホルモン
第6章 人はなぜキレるのか
第7章 三歳児神話はほんとうか
第8章 利他性はどこからくるか
第9章 利他的な遺伝子詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
凶悪犯人の構えるピストルの前に自ら犠牲になると申し出て、多くの子どもたちの命の身代わりとなった少女のエピソードから本書は始まる。なぜ人には利他的な行動があり、それを美徳と考える傾向にあるのか。本書はそれを脳科学の問題として説明する。
脳が様々な身体作用の一つとして機能し、精神もまたその上に形成されるものであるという例がいくつも示された上で、凶悪な行動にも遺伝子的な要因もあると述べられている。ただしそれは環境によって発動せずに終わることも可能であるとも述べられる。
利他的な行動は人間以外の脳が発達した動物にも見られるという。転落した少女を救った動物園のゴリラや、津波被害から通りすがりの人を救った象の例が挙げられている。脳が発達した動物には利己的な行動とともに利他的な行動も見られ、いずれも本能が働いているというのだ。利他的な本能は発生的には新しくより快感を感じる傾向にあると述べられている。
性善説という倫理学の用語がこれとどう絡むのか気になってきた。私たちが道徳と呼んでいるものが何に由来しているのか。本書は再考するきっかけを与えてくれる。 -
前半は脳の構造の話、後半は人間の利己性や利他性の話。
結局脳のこうした機能は社会性にあるって事を言いたいのかな。 -
利他的な遺伝子 ヒトにモラルはあるか。柳澤喜一郎先生の著書。世の中の多くの問題はヒトが利己的で自分第一主義であることが原因。遺伝子で見るとヒトは利己的で自分第一主義であるのが定説だけれど、柳澤喜一郎先生のご主張によるとヒトには利他的な行動や感情を呼び起こす何かが潜んでいる。利己的ではなくて利他的なヒトが増えれば、人間同士の争いが減って、外交問題や紛争問題、地球環境問題も解決に向かうと思えました。
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8月新着
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3,4歳の他人と自分の違いが判断できる頃に利他の本能が目覚める。
母と子の信頼感が前提である。いつもそばにいる特定の人が必要である。という・・・・子育ての大切さを感じました。 -
利他的に生命を投げ出したアーミッシュの話ではじまります。人に(そして動物にも稀に)ある利他の根源を探ろうとする本。
タイトルには、「利己的な遺伝子」へのアンチテーゼであろう「遺伝子」がついていますが、あんまり「遺伝子」という印象が残りませんでした。
利他が本能で、利己を科学的に証明することは、後ろめたさの隠蔽だといいます。僕は逆かな、なんて思うのだけど。
利己と利他、どちらもなければ生きていけない。面倒な生き物にうまれちゃったなあと感じる一冊。 -
今年の抱負②:通勤読書の11冊目を読み終わりました。
人には、誰かの役に立ちたいとかいった感情がある、という考察です。プロローグで、アメリカのアーミッシュの村で起こった、銃立てこもり事件について、筆者の印象が書かれていて、非常に興味をそそられたのですが、内容的にはセロトニンとかドーパミンとかいった脳の話がメインだったのかな? -
ヒトを利他行動に駆り立てるのは本能である。脳科学、遺伝子、分子生物学と聞くと難しそうだが、そうでもない。教育に関心があるなら読むとおもしろい。胎児の細胞が母親の脳にも入り込み、細胞の修復などをしている、など、科学的な発見についてもとてもおもしろい。
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性格や感情についての遺伝子やホルモンのことが、専門的ながらも個人のエピソードを交えながら書かれていて、素人が読んでも勉強になり、また楽しめる内容でした。