知的創造の条件:AI的思考を超えるヒント (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016966

作品紹介・あらすじ

個人が知的創造を実現するための方法論はもとより、大学や図書館など知的コモンズの未来像を示し、AI的思考の限界を突破するための条件を論じた、画期的な書!

感想・レビュー・書評

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  • 第3章をかいつまんで読む機会があり、面白かったので購入した。

    本とインターネットの作者性と構造性の違いという部分で、情報と知識の違いを分かりやすく説明している。

    私たちが物事を論じるとき、そこには、その物事が今までいかに認識され、論じられてきたかという意味で、下地に通時的な理解が必要となる。
    その上で、現代において、それを論じる意味合いや関係性といった、共時的な理解もまた必要になる。

    こうした、縦横に貼られたコンテクストを踏まえることで、点である情報は体系化され、知識の樹となる。
    けれど、私たちはインターネットによって、単なる情報をあまりに早く手に入れることが出来てしまえるが故に、浅い理解に止まり、その楽さから動けずにいるようにも思う。

    「フィルターバブルは、異なる立場の対話の可能性を開くという初期のインターネットがもたらした可能性を反転させます。インターネットは対話のメディアではなく、むしろ諸個人が自分の価値観に閉じこもり、異なる意見の他者を排除する傾向を促進するメディアとなっていったのです」

    「このような意味で書くという行為には、すでに読むという行為が内挿されています。逆に言えば、多数の本を読んでいく際、そこに書く行為を並行させていないと、興味の赴くまま読み散らかして、結局、考えがまとまらないままという結果になりかねません」

    「そしてAIは、機械が人間的な対話をあたかも代行するかのように振る舞って、私たちが何かに「賭けて」対話する力を弱めているのかもしれません」

  • AIは連続的な出来事に関する予測は得意だが、非連続の事態には無力である。例えば、大災害・戦争・感染症など。
    非連続に立ち向かう力こそが知的創造力で、それは人間にしかできない。この先AIがどんなに発展しても。。。
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    逆に言えば知的創造力を必要としない職業は全部AIがとって変わるだろう。遠くない将来、世の中の大半が失業者になるだろう。(私は元々ニートなので高みの見物をさせていただこう/(^o^)\)

  • 知的創造の条件、方法について述べられているけど、AI社会が加速していくなか、我々は世界をどのような視点で眺め、その中でどのように物事を考えるべきなのかを考えさせられた。
    シンギュラリティは来ないはずなのだけど、実質的にAIが人を超える状態を作り出さないためにも我々は関係、対話、身体性を大切にして行かなければと思う。

  • 知力の大切さ、知力で働き、知力で生きていくことの大切さを痛感します。
    それは今まで生きてきて、自分以外の一切すべてのどんなところとでも知力で生きて、コミュニケーションしていくことの大切さがわかるようになりました。

    自分自身みたいな精神的にも身体的にも到らない、おかしい人達であればあるほどに、余計に少しでも知力を養って、知力で働き、生きていけるようにしていく以外にはなかったです。

    知力を養っていく方法とやり方として、自分自身では、少しでも〈記錄〉として、どんなことでも接していくようにしています。
    「記錄」として接していくようにしていけば、少しでも余計なことを抱え込まないですみますから。自分が加害者や被害者にもならないためにも。
    ニュースを読んだり、見たり、聞いたり、本を読んだり、社会や他人と接するときでもです。


    はじめにー知的創造の条件とは何か

    第1章
    はじまりの一歩

    第2章
    知的バトルのススメ

    第3章
    ポスト真実と記錄知/集合知
    インターネットは人をかならずしも賢くはしない。
    主体性や判断力を備えていかなくては、惑わされたり、思い込んだり、余計なことを抱え込んだりしてしまう。

    第4章
    Ai社会と知的創造の人間学
    この国の人々は「失敗から学ぶ」ことがほとんどできないまま、新しいブームに飛び込み続けるのです。

    おわりにー知的創造の歴史的主体とは誰か
    知的創造の時間は、惹かれたり、出会いのあった方々たちとの、今までの共通の思考、同じ方向を向いていました。そして自分自身、すでに六〇歳を過ぎ、人生の未来よりも過去のほうがずっと大きな割合を閉めています。
    しかし、こうした次元とは別、というかこうした人生の時間に対して垂直に屹立しています。
    知的創造の時間は、条件が整えられるならば、様々な地域、世代の人々が、時代の危機に直面するなかで、挑戦として編み出していくものです。その条件とは、本書で論じてきたような意味での出会いや対話、信頼を醸成する条件です。ある時は、それは小中学校での授業のクオリティであったり、子どもたちが享受できる自由の時間であったりするでしょうし、あるときには図書館やミュージアムから都市の中の劇場、広場、開かれた様々な文化的有知(コモンズ)の存在かもしれません。またあるときは、インターネットのなかで多様性や対話、過去の遺産の敬称や活用を可能にする仕組みでしょう。これらすべては、二一世紀的危機の時代の中での知的創造の条件として機能します。つまりそれらは、知的創造の主体としての〈われわれ〉が生まれる続けるために基盤なのです。

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著者プロフィール

吉見 俊哉(よしみ・しゅんや):1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論などを主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫)、『大学とは何か』(岩波新書)、『知的創造の条件』(筑摩選書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『東京裏返し』(集英社新書)、『東京復興ならず』(中公新書)ほか多数。

「2023年 『敗者としての東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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