- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480017727
作品紹介・あらすじ
統一教会問題でも注目を集めている政治と宗教の関係の変遷を、近現代の様々な事例をもとに検証。信教の自由と政教分離の間で揺れ動く政教問題の本質に迫る。
感想・レビュー・書評
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東2法経図・6F開架:165A/O24n//K
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この本を読んでいる間、文科省が旧統一教会に過料を科す、というニュースが流れていました。その後、教会は裁判で徹底的に争うと記者会見していましたが、いよいよ解散請求も視野に入ってきたようです。非常にタイムリーな読書になりました。っていうか本書が2022年7月8日の安倍晋三元首相暗殺事件とそこから顕在化された政治と統一教会の関係をきっかけにまとめられたものです。また8月の太平洋戦争関係のテレビ番組では靖国神社の存在がクローズアップされたりりして,そういう意味でも考えさせられる本でした。明治以降の日本の政治と宗教の関係はタペストリーになっていること、その一本一本の糸はどうして生まれたのか、知らないことがいっぱいでした。それが戦後リセットされた気になっているとこが様々の問題を起こしているようにも思えます。実は著者が一番訴えたいことは、そういった日本の政教関係史の知見が現在、希薄になっていることなのです。となると、統一教会への解散請求は妥当なのかどうか…気分に流されている自分が怖くなりました。
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旧・統一教会と政治家の関係がスキャンダルになって、改めて日本の政治と宗教の関わりについて知りたいと思った。創価学会と公明党の関係とか、靖国神社の問題とか、憲法の信教の自由と政教分離の原則についてなど。
結果から言うと読む本を間違えた。「関係史」なんだから歴史の話であって、現代の話はほとんど出てこない。それはそれで興味深くはあったけれど、知りたいと思ったことは書いてなかった。これは著者のせいではない。失礼しました。 -
個別の事実関係は自分には消化不良で、かつ各章毎に既出論考の加筆再録なので必ずしも通史になっていないが、大きな流れを掴むよう努めた。
著者は、政府の戦前宗教政策の一貫した特徴は、宗教の利用と危険な宗教の排除だとする。一方で本書からは、政策が常に順調ではなかったことが分かる。神道国教化はならず、また宗教団体法成立までには長い期間を有した。ただ、本書にある神社の非宗教化、「国家の祭祀」としての管理、というのは戦後の感覚からは理解しにくい。
同時に政府の統制のみを見るのも適切ではない。激しい廃仏毀釈には明治政府が制限をかけたほどだ。内村鑑三不敬事件ではメディアからのバッシングが激しい。宗教界自体も、日清・日露戦争では好戦論が大勢だった。
ただ、政府への協力だけでなく、飢饉での救済を含めた宗教と社会問題の関わりにも着目する必要があるだろう。だからこそ政府は、利用又は排除しようとしたのだろうが。 -
明治にはじまる近代日本の「政治と宗教」の歩みについて、仏教とキリスト教、そして戦前の論理の上では「非宗教」とされた神道を中心として、時勢との関わりをもとに詳細で具体的な追跡がなされる。敗戦を機とした「政治と宗教」をめぐる論理の急激な変化、およびその局面においても維持された戦前との連続性が示され、現代まで続く戦後日本の二者の関係がいかなるものであるかが一貫した論証によってまとめあげられていく。
後半部では、戦前と戦後の問題系をつなぐ一種の架け橋としての靖国神社参拝問題にかなりの紙幅を割いており、それが現在のような形の論争になる以前から抱えていた火種について、すなわちその本質的な論点がどこに存在するのかについて、それまでの論証を踏まえて明瞭に示されている。