オリヴァー・トゥイスト 下 (ちくま文庫 て 2-11)

  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480025005

作品紹介・あらすじ

主人公の孤児オリヴァーの運命の星は、いっそう酷薄に、光を失ったままである。盗賊団の仲間ビル・サイクスに従って強盗に出かけた夜、オリヴァーは瀕死の重傷を負って仲間に置き捨てられる。かろうじて篤志なメイリー夫人に救われたオリヴァーの運命はしかし二転三転して…。『ピクウィック・クラブ』でユーモア作家として成功したディケンズが、ジャーナリト的立場をとって挑戦した初の社会小説。

感想・レビュー・書評

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  • ディケンズ大好き!と言っていながら、あまりにも有名なこれをまだ読んでいなかった。

    むーん。。ディケンズの中ではふつうだった。
    天使のようなオリヴァーと彼を守ろうとする善良な人たち、それに対する悪人たち、という単純な図式や、偶然の遭遇の繰り返しによる物語の展開がちょっとつまらない。
    荒んだ人生を送ってきた人の心の奥底から最後ににじみ出てくる温かい心とか情熱とか葛藤とか、そういうところにディケンズのすばらしさがあると私は思っているが、この物語からはあまり感じることができなかった。

    でもこれ、調べてみたらとても初期の作品なのだった。後期にいくほど『二都物語』とか『大いなる遺産』とかすごい作品が目白押し。やっぱディケンズってすごい。

    あと、訳(小池滋)がとてもよかった。数社の本と比べてみたが、味わい深くかつ読みやすい。(2008.1.18)

  • ❖物語前半部(上巻)は冗長を感じさせる緩さもあったけれど、後半(下巻・特に終盤〜大団円)は惹きこまれた。人物(心理)描写が巧みに描き込まれ(特にナンシーが自身のしがらみについてこぼす懊悩は出色)、登場人物たちがみな人間臭く引き立っていた。主人公よりも悪党たち(フェイギン、サイクス、モンクスの三悪人)が精彩を放ち、冴えた筆致で彼らの至る悲惨な末期までが追って描かれていた。拡げた話の都合よすぎる折りたみ方(強引と過剰)、大団円の幕の下ろし方については、これはこれで古きよき時代(スタイル)を感じさせて味がある。

  • ご都合主義だろうが、おもしろいものはおもしろい。反論があるならもっとおもしろいものを紹介してくださいな。

  • 大団円。正義がみんな勝って悪がみんな滅亡してしまった…。
    小池滋さんクラスの翻訳はぶれがなく本当に安心して読める。

  • 人の情に頑なまでに従って行動するナンシーが、一番印象的だった。

    引き止めるローズお嬢さんに告げる言葉。
    「みじめな暮らしを続けているうちに空っぽになってしまったこの胸のうちが、やっとその男のお陰でまた暖かく燃えそうになったとしたら、そんな愚かな女を、誰が正気に戻らせることができましょうか?お嬢さん、憐れんで下さい。・・女に残されたたった一つの情けに未練をかんじたために、それが神様の罰によって慰安や誇りの種とはならず、逆に乱暴と苦しみを増す種になってしまったことを、憐れんで下さい」

    ブラウンロー氏から、フェイギンを引き渡すよう言われるナンシーは、
    「あたしにとっては、悪魔よりひどいやつだけど、そんなことはしたくないわ」
    「あいつだって悪いことばかりして来たけど、あたしだって同じなのよ。
    一緒に同じようなことをして来た人間が大勢いるのよ。その人たちは悪いやつとは言いながら、もしその気になればあたしを売ることだってできた筈なのに、そんなことをしたのは一人もいなかったんだもの、あたしの方からあの人たちを売るのはいやよ」
    そして、代わりにナンシーとは、直接仲間ではないモンクスを引き渡した後、ナンシーの同意がなければフェイギンたちのことは絶対にしゃべらないというブラウンロー氏の答えを聞いて、
    「あたしは子供の頃から嘘つきだし、いつも嘘つきと一緒に暮らしていたけど・・・あんたの言葉は信じるわ」とナンシーが言う。

    TVドラマで見たら、全く好きになれない人物だと思うんだけど、
    彼女の感性には、人の普遍的な心情を感じるし、なんだか希望にさえ思えた。

  • 主人公の影が薄い後半戦。周りの方々の相関関係がメインです。

  • この小説の後半はオリヴァがどうこうするというより、また違う展開になって、オリヴァの周りの人々の記述がメインになっています。オリヴァの出生の秘密、つまりオリヴァとは何者か、という謎が解かれてこの小説は幕を閉じます。
    この作品を読んだらNortonの批評も是非読んでいただきたいです。批評が面白いものばかりです。

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著者プロフィール

Charles Dickens 1812-70
イギリスの国民的作家。24歳のときに書いた最初の長編小説『ピクウィック・クラブ』が大成功を収め、一躍流行作家になる。月刊分冊または月刊誌・週刊誌への連載で15編の長編小説を執筆する傍ら、雑誌の経営・編集、慈善事業への参加、アマチュア演劇の上演、自作の公開朗読など多面的・精力的に活動した。代表作に『オリヴァー・トゥイスト』、『クリスマス・キャロル』、『デイヴィッド・コパフィールド』、『荒涼館』、『二都物語』、『大いなる遺産』など。

「2019年 『ドクター・マリゴールド 朗読小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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