山田風太郎明治小説全集 (12) (ちくま文庫 や 22-12)
- 筑摩書房 (1997年10月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480033529
作品紹介・あらすじ
万朝報の売上げを伸ばすため仕掛けた暗号とは(表題作)。漱石の文体模写をした『牢屋の坊っちゃん』、牛鍋屋チェーンの木村荘平が始めた火葬場のこけら落としは誰に(『いろは大王の火葬場』)。幸徳秋水を四分割して描いた『四分割秋水伝』の4篇を収めた短篇集。『明治暗黒星』併収。
感想・レビュー・書評
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面白いなぁ。今年はどうやら、山田風太郎に出会った年、ということになりそうだ。
読んでいて、エンタメを読む幸せを感じる。ただ「面白い」、それが持つ未来への展望や希望といったものが、むくむくと湧いてくる。
誰が言っていたのかは忘れたが、「面白い本は、その存在だけで人を生かす。来週はあの本の続きが出るから、それまでは生きていよう、と思う」というようなことを言っていたけれど、まさしくそれだ。面白い、ということは、それだけで希望なのだ。
山田風太郎の本が読めて、私はとても幸せだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々の風太郎。どの中編も素晴らしいけど、「四分割秋水伝」と「明治暗黒星」が良い。風太郎の描く明治が明治そのものに思えてきてヤバイ。
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ネタバレ/下有劇情
【8.5/10】
「明治バベルの塔」★★★★
黒岩涙香為了促銷万朝報的銷量,出了懸賞猜謎,讀者要把36個字自由排列得出藏寶地點。甚至黑岩設計出一個謎題兩個正解,用這個揭發醜聞,但最後被自己的員工幸徳秋水擺了一道,揭發黑岩自己的醜聞。
「牢屋のぼっちゃん」★★★★
李鴻章襲撃犯的牢中手記。作者說是模仿夏目漱石「ぼっちゃん」的文體所寫,不過因為我還沒讀過,所以無法評論。
「いろは大王の火葬場」★★★★★
伏見出身講著一口神奇的關西薩摩腔的木村荘平,從川路特許他經營屠宰業,之後進軍開設牛鍋連鎖店「いろは牛肉店」,所有分店都任命他的各個妻妾當店長。這次他進軍火葬場業,但是由於價錢太貴一直沒有人來用,因此荘平一聲令下要求每個店努力做業績去拉知名人士來當第一個客人。這個故事大概就是日後發展成人間臨終繪卷的吧,斎藤緑雨、岸田吟香(原來他兒子就是岸田劉生!)、福地桜痴等人陸續登場,故事也帶著一種風趣的喜劇性。荘平的野望一再失敗,後來第一個進自己的火葬場的就是自己本人。這篇真的是奇作,詼諧風趣。很想再讀荘平其他的事蹟。
「四分割秋水伝」★★★★
把秋水分成「上半身、下半身、背中、大脳旧皮質」四種不同角度來描寫秋水,除了社會主義的巨魁以外,但也只是一個兒子,一個單純被魔性的女人魅惑的男人。
「明治暗黒星」★★★★
伊庭八郎的弟弟想太郎vs出入自己家的貧窮左官家兒子浜吉(後來的星亨)。想太郎其實一直瞧不起浜吉,浜吉卻在進入開成校之後一路往上爬改名星亨甚至搖身一變變成政治家、代言人。某日想太郎在路上發現和一起搭乘人力車的盡是哥哥以前的情人お貞,就去找星亨談判硬把お貞搶來(還解除自己本來與塌塌米店女兒綱子的婚約)。後來居然又發現星亨跟即將綱子結婚,覺得是往自己臉上殺球,衝進綱子家說教,其實就是無法跨過內心士族瞧不起貧窮左官家兒子那個障礙。數十年過去,星亨最後甚至高升到駐美大使,想太郎最終則是拔劍誅殺星亨自以為正義,然而卻發現星亨其實一生清貧只有藏書,也從未納妾。人的複雜多面,在這個故事亦可窺見。 -
「明治バベルの塔」
ひとからひとへと伝えられる言葉。そこには秘められた想いが、言外の意味がこめられている。――黒岩涙香、幸徳秋水、そして田中正造。彼らが明治期に実際に残したそんな言葉が今、天才山田風太郎によって再び命を吹きこまれる。
「牢屋の坊ちゃん」
東京から松山へ赴任中の英語教師・夏目金之助。一方、李鴻章を襲って下関から釧路へ移送中の重刑囚・小山六之助。このふたりが神戸駅の雑踏ですれちがった次の瞬間、――小山六之助は『坊ちゃん』のパスティーシュの世界に解放される。
「いろは大王の火葬場」
恐るべきは明治時代の強烈すぎる怪人たち、すなわち福地桜痴、岸田吟香、そして”いろは大王”こと木村荘平。……いやそれにしてもこれ、ほんとに実際あったことなのか!?
「四分割秋水伝」
”上半身の秋水”………大逆事件を背景にした幸徳秋水を描く。「私は数年内に、病気で死なねば刑罰で死ぬ運命、と十分に覚悟しております」。
”下半身の秋水”………幸徳秋水の女性に対する驚くべきクズっぷりを描く。――結婚式当日の夜に吉原にいる秋水を見かけた新聞社の同僚が、なぜこんなところにいるんだと訊くと――「口直しにきたんだ」。
”背中の秋水”………幸徳秋水とその薄幸の母を描く。「許してくれ。もう浮世に心残りはみじんもない。(親)不孝の罪だけで、僕は万死に値するのだ。」
”大脳旧皮質の秋水”………幸徳秋水の運命をかくあらしめたその原動力を描く。「秋水はひっきょう須賀子の狂的情熱に抱擁せられ、心身ともに焚き尽くされしなり」
”ふたたび上半身の秋水”………絞首刑になんなんとする幸徳秋水がいたった境地を描く。「病死と横死と刑死を問わず、死すべきときのひとたび来らば、充分の安心と満足とをもってこれに就きたいと思う。今やすなわちその時である。これ私の運命である」。そして辞世の句「爆弾の飛ぶよと見てし初夢は 千代田の松の雪折れの音」
「明治暗黒星」
伊庭八郎………戊辰戦争で左手を切断されながらも戦いぬき、時を移さず函館戦争に参戦、そこで戦死した伝説の剣客。
伊庭想太郎………そんな伝説の剣客を兄に持つ伊庭家の次男(八郎死してのちは伊庭家当主)。かつ、空前絶後のカン違い野郎。
星亨………一般男性。 -
山田風太郎は、上手い。忍法帖、伝奇小説もいいのだが、明治物は知名度の割に面白いとおもう。意外な人物の取り合わせと、通説とは異なる視点が良い。
明治バベルの塔 萬朝報、黒岩涙香、幸徳秋水、田中正造
いろは大王の火葬場 木村荘平、福地桜痴、岸田吟香等
明治暗黒星 伊庭想太郎(伊庭八郎の弟)、星亨
など -
初、山田風太郎先生。
風太郎先生といえば忍者物というのは知っていたが、あまり食指が動かず未読だった。
が、明治物のおもしろいこと!
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明治の社会主義に代表される社会への民衆参加が、クセ強めの登場人物とありえなく見える実際の事件で奇才天才山田風太郎により書かれている
黒岩涙香の超人的な知の巨人ぶりが楽しく書かれています
管野スガをめぐる秋水の執着ですべてを失い、焦りから破滅へ向かう破滅の美学だな -
2016年4月25日読了。
短編の収録潤が完璧に意図的でニヤッとした。 -
面白い。山田風太郎の才能際立つ1冊です。
「明治バベルの塔」アナグラムの妙。
「牢屋の坊ちゃん」文体模写の妙。
「いろは大王の火葬場」娯楽小説の妙。
「四分割秋水伝」評伝の妙。
風太郎の明治物は現実の歴史と風太郎の想像する虚構とが交錯する、まるで言語ではなく歴史を扱ったアナグラムのようであり、現実の歴史の文体模写をしたような書き換えであり、娯楽であり、そこから歴史上の人物の四面(上半身、下半身、背中、大脳旧皮質)が浮かび上がる。まことに風太郎の真骨頂が詰め込まれた4作である。
その上、対象となる人物はみなその時代の弱者であり反逆者であり、そういった虐げられる者に対しての風太郎の愛ある悲しくも優しいまなざしが、いつだって泣ける。思想を語るような野暮なことはしないが、圧倒的な技術力から繰り出される文章の隙間からかいま見れる、言葉の奥底からにじみでる風太郎の情感こそが、彼を唯物論者に閉じ込めない、とかく人間臭い魅力であると、改めて思った。 -
『明治バベルの塔』『牢屋の坊っちゃん』『いろは大王の火葬場』『四分割秋水伝』『明治暗黒星』の5編を収めた短篇集。フィーチャーされている人物が非常に多岐に渡っており、またそれぞれの短編で挑戦している手法も異なるため、スマッシュヒットはないもののバラエティに富んだ楽しい1冊。