タブーの謎を解く: 食と性の文化学 (ちくま新書 91)

著者 :
  • 筑摩書房
3.14
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480056917

作品紹介・あらすじ

タブーとは何だろうか。およそ人類史上、タブーのない社会は古今東西どこにも存在しなかった。未開社会だけではない。現代都市の若者のあいだでもタブーはひそかに息づいている。なぜ人間は、古来から近親婚を禁じたり、イスラム教が豚肉、ヒンドゥ教が牛肉、あるいは仏教が肉食一般を禁止したように、性や食の禁制を社会のなかに仕掛けておかなければならなかったのか。人間の原思考が生み出した奇怪な文化装置であるタブーの謎にスリリングに迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 世界各地の食のタブー、性のタブーなどを通して、なぜタブーがあるのが、タブーがどのような役割を果たしているのか、そして人がタブーを作り出す理由を述べている。



    原初の混沌、まだ意味未分化なものに対して、一本の線をいれることで、そのものと、それいがいのもの、私と他人、神と人、人間と動物、動物と植物などに分類することができるが、そうやって世界を分類していくとそのあいだにはそれら二つのどちらにも属さない境界線上のものがたち現れてくる。この境界線上のものは分類された世界を脅かすものとして忌避され、それがタブーになっていったというリーチの文化記号論はなるほど!と膝を打つ思いだった。



    後半ではこのリーチの暗号格子を用いて世界各地のタブーに対して、どのような理由からそれらがタブーとされているのかをみていっているが、いずれも明快に説明づけられている。 興味深かったのは日本の婚礼にまつわる様々なタブーに関わる話で、花嫁が家を出るときの分離儀礼から、花嫁道中の移行儀礼、そして婚家にはいるときの統合儀礼として、伝統的に行われてきた儀礼に対して、そこにどのような意味の境界があり、なぜそのように対応されてきたのかということが明快に示されている。 今となっては結婚式の儀礼もいろいろと寂れてしまっているだろうが、それぞれの儀礼にはそのような意味があったのだというのはとても興味深い。

  • タブー周辺の概観が長く、やっと「謎を解く」が始まったと思ったらリーチ=ダグラス理論の紹介だったりする。どこからが山内先生の理論なんだか、よくわからない。正にリーメンに存在するそれはタブーなのかも。物知りなのはわかるが、細かい知識がウザい。

  • 禁忌、タブーの正体に挑む。

    といっても、食と性のタブーに絞り込まれている。食のタブーと性のタブー、民族や宗教によってもその設定が異なったり、あるいは共通の部分を見出す事ができる。自らの心理の事で、確かに、何故だろうと思う事もあるテーマだけに、興味深い。

    しかし、本著を読んだ感想としては、結論、機能や慣習上の禁忌を無理解に踏襲し、それがある種、インプットされる事により、生理的反応にまで及ぶ事もあるかもしれないが、結局、人間は自由な存在である。先天的なタブーなど、ほとんど皆無。目的を持ち、我々自身がタブー視してしまっているのではないだろうか。

  • カテゴリ境界にあるものが忌避される、と言う主張だと思う。
    カテゴリ境界にある刺激が忌避されると解釈できる心理物理研究もあったりするので、
    この本の主張はそんなに変なことは言ってないとは思うけど、
    今まで忌避されていたものがうまくカテゴリ境界にくるように
    カテゴリを決めればうまく説明できてしまうという問題もあって
    この本もまさにそうだと思う。
    何らかの形で実証研究できたりすると面白いと思うんですが。

  • 人類学の観点から、性や食についてのタブーの謎に迫っている。

    著者は、インセスト・タブーに関するレヴィ=ストロースの説を紹介したあと、彼の説明では性についてのタブーが近親相姦だけでなく獣姦、同性愛、姦通、私通などに渡っていることが謎のまま残されると指摘する。

    その上で著者は、人間の文化が世界を差異化する役割を持っていることに着目して、境界を侵犯するようなものを排除するためにタブーが生じたという、リーチの文化記号論の観点から、さまざまなタブーの説明が可能になることを紹介している。

    また、性や食など、いくつものタブーがネットワークを結ぶことで、人間社会の文化が築き上げられていることや、ハレとケのダイナミズムによって動的に文化が維持されていることにも説き及んでいる。

  • なるほど、これは面白いものだ。大学生の時に読みたかったな。
    あ、出版されてた・・・
    でもその反面で、ここまで精緻なこの理論が何の役に立つんだろう、って気がしないでもない。学問は役に立つとかたたないとかそういうことではないのは分かってはいるけど・・・

  • セックスと食べ物のはなし

  • 人は人であるために、選ぶ。
    自分を確立するために、別れてく。

    食べていいのか、悪いのか。
    やっていいのか、まずいのか、って。

  • [ 内容 ]
    タブーとは何だろうか。
    およそ人類史上、タブーのない社会は古今東西どこにも存在しなかった。
    未開社会だけではない。
    現代都市の若者のあいだでもタブーはひそかに息づいている。
    なぜ人間は、古来から近親婚を禁じたり、イスラム教が豚肉、ヒンドゥ教が牛肉、あるいは仏教が肉食一般を禁止したように、性や食の禁制を社会のなかに仕掛けておかなければならなかったのか。
    人間の原思考が生み出した奇怪な文化装置であるタブーの謎にスリリングに迫る。

    [ 目次 ]
    第1章 奇妙奇天烈な文化装置
    第2章 その肉を食うな
    第3章 その人とセックスするな
    第4章 タブーの文化象徴論
    第5章 タブーの暗号解読
    第6章 タブーの弁証法

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • なぜペットを食べてはいけないのか?
    なぜ近親者と結婚してはならないのか?
    誰もが無意識のうちに「タブー」としている風習は、
    果たしてどうやって形成されてきたのかを文化人類学の視点から紐解く一冊。

    読後、境界とは何かを意識するようになった。

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著者プロフィール

1929年東京生まれ。京都大学仏文学科卒業。同大学院(旧制)修了後、パリ大学高等研究院に留学。元・大手前大学教授、甲南大学名誉教授。著書:『食具』、『もののけ Ⅰ・Ⅱ』(ものと人間の文化史)、『ロマンの誕生』、『現代フランスの文学と思想』、『経済人類学への招待』、『タブーの謎を解く』。訳書:マンデル『カール・マルクス』、マレ『労働者権力』、サーリンズ『人類学と文化記号論』『人類学と文化記号論』、ゴドリエ『人類学の地平と針路』『観念と物質』『贈与の謎』、プィヨン編『経済人類学の現在』、ロダンソン『イスラームと資本主義』、トマス『人間と自然界』、アタリ『所有の歴史』、テスタール『新不平等起源論』ほか。2006年死去。

「2014年 『贈与の謎 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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