誰のための金融再生か: 不良債権処理の非常識 (ちくま新書 352)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480059529

作品紹介・あらすじ

「不良債権がビンの栓のようになっているから、これを取り除けば貸し渋りは解消される」-こんな言説が跋扈している。しかし実際には、不良債権処理が進めば進むほど、自己資本比率が悪化するので、金融機関は貸し渋り・貸し剥がしをせざるを得ない。さらに、ペイオフ凍結解除を錦の御旗に、金融庁が中小金融機関をいくつも破たんに追い込むなど、金融政策は迷走を続けるばかりだ。バブルのツケを中小金融機関・中小企業に負わせるいまのやり方を変えさせる手立てはないのか。金融迷走の実態を明らかにし、「金融アセスメント法」など、経済再生のための具体的手立てを提唱する。

感想・レビュー・書評

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  • 不良債権の処理は疑う余地も無く良いことなのか?中小企業の目線から不良債権問題に光を当てた本。不良債権処理が短期的に銀行の自己資本比率を悪化させることから、財務状況の厳しい中小企業への貸し渋り等が起こる。また不良債権処理はあくまでも処理であって、利益を生む訳ではないので、銀行の体力が回復する訳でもない。不良債権処理は、終わりではなく、新たな経済問題の始まりにすぎない。自分の不良債権処理に対する認識不足がよく分かった。

  • 少なくとも国民のためではない金融再生。官僚とアメリカのためだろうな。

  • 授業で読まされたが、勉強にはなった。

  • 日本経済の長期低迷の責任は日本銀行にあると主張する人もいますが・・・それは本当なのか。そもそも不良債権処理は経済政策の範疇なのだろうか。

  • 国際決済銀行(BIS)が国際業務を行う銀行にとって必要な自己資本比率を取り決めてる。このBIS規制をクリアするための不良債権処理の加速が、自己資本比率を悪くすることが、分かりやすく述べられている。自己資本/資産を自己資本率というのだが、BIS規制は8%で、海外での取引をすることが出来る。また、自国での取引きは、4%でも行えるという国際決済銀行(BIS)の取り決めである。■この取り決めによって、銀行の「安全性」のひとつの指標となっているのだが、不良債権の処理によって、この8%が守られにくかった時期(2002年頃)がある。「不良」債権は、資産勘定であり分母にあるのだが、2005年12月の時点では、分子の自己資本を構成する株価の上昇によって、この規制はクリアしていることになる。■自己資本には、過去に稼いだ利益を配当にまわすことなく、内部留保も含む。よって、不良債権の処理によって、それは丸ごと損失になる。つまり不良債権の処理によって、分母の総資産も経ると同時に、分子の自己資本も減ってしまうことになる。このこれが非常に問題だった時期もあったのである。■三井住友、東京三菱UFJ銀行など大手は、国債を80兆ほど保有しているとされるが、国際決済銀行は、国債について、額面評価でなく、評価方法をリスクによって変える新BIS規制が2006年末に施行される予定である。この新BIS規制によって、株価上昇期、景気回復期の今どのような評価を受けるのだろうかが見ものでもある。

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