- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480062628
作品紹介・あらすじ
おびただしい量の情報やモノに囲まれ、脳が悲鳴をあげている。現代人が、より賢明に清々しく生きるためには、脳をどのように使いこなせばよいだろうか?その鍵は、森羅万象とのかかわりのなかで直面する不確実な体験を整理し、新しい知恵を生み出す脳の働きにある。本書では、最新の科学的知見をベースに、「ひらめきを鍛える」「幸運をつかむ」「他人とうまくつき合う」「チャレンジする勇気をもつ」など切実な課題にも役立つ、脳の本質に即した「生きるヒント」をキッパリ教えます。
感想・レビュー・書評
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「脳」整理法、というタイトルを見て、その意味すあるところは知識をどう整理して記憶するか、について書かれた本? と思い、実をいうとときめいた。だって、脳の研究者が書いた本なら、すごいことが書いてありそう。でも、こちらのハウツー本的興味は、軽く裏切られて、科学的普遍的知識をさす「世界知」と、人が生活していく上で日常的な偶有性を帯びた出来事にいかに対応していくかという「生活知」がどのような関係にあってその人らしさをかたちつくるのか、というテーマのもとに、どうその人らしい脳ができあがるのだろうか、と、話題はうつっていきます。意識的な整理法とは違って、自然に脳のなかでできあがる対応能力を脳の能力と考える。無意識のうちに脳は、その整理をしていく。筆者は、そこで、世界知につらなるITのような世界の切り取りかたに、日本人の割りきりかたにつらなるある種のそぐわなさを思う。難しい専門用語はあまりでてきません。ただ、この本では、自然にしばられて必然的にこうなった、のではなく、もう少し変化に富んで、変えられるものと捉えられている。これからも。2005年9月10日第一刷。
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0.50
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2005/9/9 , 2008/5/12 read up
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脳をどう使えばよりよく生きることが可能なのかという問いに対して答えた本
目次
<blockquote>第1章 脳は体験を整理し、知を創造する
第2章 生きて死ぬ人間の知恵
第3章 不確実な時代こそ脳が生きる
第4章 偶有性が脳を鍛える
第5章 偶然の幸運をつかむ脳の使い方
第6章 「自分」を離れて世界を見つめる
第7章 「他人」との関係から脳が育むもの
第8章 主語を入れ替えて考える
第9章 脳に勇気を植えつける
第10章 「脳」整理法ふたたび
</blockquote>
いろいろなキーワードを出すために9章まで使い、10章で正に言いたかったことを述べる。そんな感じの文章です。
ビジネス書だと、ポイントを順に挙げていくというアプローチを取るのですが、この本ではほとんど読んでも意味の無い文章になっちゃってて、最後の10章で漸く主張がわかるのです。
うーん、そういうのが著者のやり方なのかなぁ……個人的には出口の見えない文章を読まされてる感じがするんだよね。最後にいくまでにかなりページをめくらされる。
ほんと……途中で程々にまとめてあれば一息つけるんですけど、この本ではなかなか出ない。キーワードとか、それっぽいのは出るんですけど、主張は全くでない。だから、全く最後まで読まないと、意味の無い本だったりします。途中まで読んでも何も言えねぇ……。
ちょっとそこのとこが辛かったですね。
著者の主張としては、<b>「世界知」と「生活知」</b>という言葉が出てきます。いや、わざわざ作らんでも、<b>「知識・情報」と「経験・思考」</b>ですがな……これ。
その違いは言わずもがな、省略しますけど、「世界知」としての象徴にIT技術を持ってきてるところは面白い。
そこに「偶有性」という言葉をくっつけていく。
この言葉は、要は偶然という要素そのもの。
そこから「セレンディピティ」というキーワードが出てくる。
<blockquote>セレンディピティ(英: serendipity)とは、何かを探している時に、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。
<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%94%E3%83%86%E3%82%A3" target="_blank">セレンディピティ - Wikipedia</a>
</blockquote>
まあ、そこから著者がよく言っている「アハ体験」につなげ、創造的であることと、偶然であることの接点を持たせてる。
とまあ、そんな感じだろうか。それがうかがい知れるのは、一番最後の章で、こう語ってるから。
<blockquote>人間の歴史を見ると、世界を自分の立場を離れてクールに見る「世界知」を忘れ、個人の体験に根ざした「生活知」に没入することは、きわめて危険なことだということを示す悲劇に事欠きません。
(中略)
物質である脳からクオリアに満ちた意識が生み出されることの掛け値なしの不思議にかかわる問題です。そして、それは、理由もわからずこの世に生を受け、さまざまな歓びや哀しみを体験しながら、やがて死んでいく運命にある、私たちの生の割り切れなさに関わる問題です。
</blockquote>
……うーん、矛盾してるよなぁ。まあ、言いたいことがなんとなくは伝わるんだけれども、言葉足らずというか、うまく説明しきる前に終わっちゃった感じ。
誤解を恐れずにさっくり取り出すと、「セレンディピティ&アハ体験」で十分かな……。
しかし、そこから先はまだ答えが出きってない。セレンディピティに対して、動いてみて、そこから何かをひらめく必要があり、そしてその結果に納得すると……。
うーん、言葉ではフローを言えるかもしれないが、そのひらめき、そして結果を常に受け入れられるかどうかという点は難しい。どれだけ普段から考えているかが大事な気がする。
とまあ、そんなこんなで、本としての価値は微妙。人によっては読みきれないと思う。
それは、言っていることに価値があるのかもしれないけど、伝え方がイマイチなので。 -
一見「整理」ということについて書かれた本かと思われるが、そうではなく、私たちが人生を生き抜くためのヒントのようなことが書かれているように思える。「世界知」と「生活知」の話から始まり、偶有性、セレンディピティとその分野は多岐に渡る。その中でも一本筋が通っているものとして不確実性の大切さが訴えられている。「科学離れ日本」を憂う作者が脳科学というパースペクテヴから書いた作品であった。
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学びは以下。
• 今、マーケットにおいて最も高く評価されるのは、他人とコミュニケーションをとったり、新しいものを創造したりする能力です。コミュニケーションも創造性も、今のところコンピューターでは実現できない能力なのです。
• 「行動」「気付き」「受容」が、「偶然を必然にする」セレンディピティを高めるために必要なのです。
• 人間の脳の創造性は、「aha!」体験と呼ばれる短い時間の中におこる出来事によって支えられています。こういった瞬時の創造的体験は、脳が環境との相互作用の中で偶有的関係性を整理していく、ゆっくりとしたプロセスの末に起こるものと考えられます。
• 科学的世界観とは、理想的にはあたかも「神の視点」に立ったかのように、自らの立場を離れて世界を見ることによって成り立っています。そのことを、科学者たちは、「デタッチメント」をもって対象を観察する、と表現します。
• Detachmentをもって世界を眺めるということは、1つの生活知でもあります。「何が何でも私が」というむき出しの自己主張をお互いにぶつけ合うのでは、上手く生きることはできないのです。ディタッチメントを生活の中にほんの少し処方するだけで、静かで美しいライフスタイルを見出すことも可能であることを、私はケンブリッジの科学者たちを見ていて学びました。
• 「神の視点」は、ミラーシステム、つまり「私」の心と「他者」の心に対する「気づき」が、発達の過程で鏡に映したように同時に出現してくるプロセスで重要な意味を持ってきた「他者の視点」、及び、それがミラーシステムを通して変換された「自己の視点」からのアナロジーによって成立している、というのが、脳科学、認知科学の現時点での知見に基づく仮説です。
• 自我の形成過程で、他者と相互作用をしながら、「私」も「他者」もその中に含む、「公共的」な概念が作りだされていくのです。
• 社会、国、ネットワーク、さらには世界、宇宙、といった公共的概念は、それが大きなものであればあるほど、偶有的存在から離れて、確固とした全てのものを包み込むような存在に変わっていきます。
• 大きな公共概念が私たちの認識の中で偶有性を帯び、柔軟かつダイナミックに存在し続けることが、それらに対して私たちが真摯な関心を持ち続けるために、そしてまた、私たちの人生が阻害されないために、とても大切な用件となっています。
• 様々な人工物や情報が増加したため、自分の人生の中で行きかうそれらのものから受ける体験について、整理し、その偶有的な関係から様々なことを学ぶ必要に迫られています。
• 感情というものが自律的なものであることに着目すると、「根拠のない自信」をもつことが、偶有的な世界と渡り合うために、案外大切であることがわかります。 -
350円購入2006-04-01
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この本のキーワードは、「遇有性」。本来の意味が分からない人はぜひ辞書で調べてください。茂木氏のこの言葉は一般的な意味とは違い、「正確に予測できる性質」と「完全に予測不可能な性質」の中間の性質を現している。この遇有性が脳に与える影響や、脳がこの遇有性をどのように扱うかに言及しているのであるが、科学的視点よりも人文的、社会学的な視点で語られており、「脳整理法」というよりも「茂木の思想」という感じ。また、おそらく編集者の問題であると思うが意味の把握が困難でとても読みづらい。とても投資対効果の悪い本であるといえる。ただし、セレンディプティに対しての記述は面白い(面白いというだけで、結論は平凡)。
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挫折
図書館