- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480062710
作品紹介・あらすじ
いまや、数千億円ともいわれる「オタク」市場。経済界も一般メディアも、もはや無視できない存在となった「萌え」の世界。ではなぜ、オタク男たちは二次元のキャラクターに「萌え」るのか。そもそも「萌える」という行為にはどういう意味があるのか。「萌える」男に純愛を求める者が多いのはなぜなのか。こうした疑問に、現代社会論とジェンダー論、そして実存の観点から答える、本邦初の明快な解説書。
感想・レビュー・書評
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ライトノベル作家の著者が、「萌え」について考察をおこなっている本です。
たとえば著者は、次のような主張を展開しています。「萌えの世界では、恋愛関係は「強い女性側から降って湧いてくる」か、あるいは「微妙な日常の関係が、気がつけば恋愛関係へと発展し、かつ今までの関係も継続する」というものになる。これが萌えの世界における恋愛のルールで、「男が女を強引に口説く」というマッチョイズムは注意深く排除されている。萌えの世界の恋愛は、男女平等か、あるいは、女性上位なのである」。
ほかにも、「萌える男」は「受動的態度で女性に対して一種フェミニスト的」だとか、美少女ゲームの「メイドさん」は「御主人様」に奉仕することを至上の歓びとするが、「実際には御主人様の方がメイドさんの尻に敷かれて支配されている……という相互補完的関係になっているストーリーが多い」といった主張がありますが、どれも説得力に乏しいように思われます。
ファンタジーをあくまでファンタジーとして享受することは、(よい趣味か悪い趣味かは別として)なんら批判されるべきことではありません。著者が主張するように、恋愛資本主義のなかでワリを食う男が出てくることは必然的であり、「萌え」はそうした男たちが現実から飛躍した「脳内恋愛」によって「自己救済」することなのであれば、それ自体は非難されるべきことではありません。しかし、だからといって「萌える男は正しい」わけではないでしょう。著者は、オタク文化に対する風当たりが強いことを憂慮するあまり、オタク文化のポジティヴな可能性を前面に押し出そうとしていますが、支えるべき戦線を見誤っているように感じます。宇野常寛は、本書の議論を時代遅れのオタク=ニュータイプ論だと切って捨てていましたが、本書の立場は宇野の「レイプファンタジー批判」に対してまったく無力だといわざるをえません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
オタク論というより恋愛論として読んだほうがいいのかな。それにしたって暴論が多くて気になったけど……。
「萌え作品」の解釈は面白かったし、生身の人間に興味が持てない私は「人間に恋愛する義務はない」という言葉には少し救われた。 -
『電波男』の流れを引き継いでいてよかった
やはり女オタクの存在は今後重要な要素となってくる気がする -
萌え系は、オタクの総てではない。
そして、その市場はもやはニッチではない。
だからといって、ビジネス機構として納得し終わっていい話でもないので購読。
まずは『電波男』から引き続き、「恋愛資本主義システム」と純愛ブームについて。
そして恋愛の起源から恋愛結婚の起源に、信仰と恋愛の構造と機能を説く。
さらにレゾンデートルとルサンチマンとの対立では、様々な引用を繰り広げる。
映画「バッファロー'66」のビリーと「タクシードライバー」のトラヴィス。
宮沢賢治と津山三十人殺しの都井睦夫。
ほか漫画やアニメやロックまで引用し解析に迫る。
オタクは、引き蘢りで社会不適合で犯罪者予備軍との先入観をメディアによって刷り込まれた。
だが「萌え」るとは、精神活動としては健全であることを証明する為に編まれた一冊。
私は商品としての表層上の萌えには興味はないが、精神分析として非常に興味深い内容でした。 -
恋愛資本主義に取り込まれた、と批判している「電車男」の作者の本。関連本だったわけで、「萌え」の正当化を目指すための相関図の無理やり感もネタとして面白かった。5年たった今、完全に「萌え」資本主義が蔓延してる気がする。
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ゲームやアニメキャラに萌える男性は世間から迫害されがちだが、それは現実逃避でなく自己救済なので強いのだ、みたいな論説ですが・・・ まあ納得できない。恋愛至上主義なのはゲームも漫画も同じなのだから結局三次元でも恋愛してないのは駄目ということなのではと感じた。
単純に俺はこれが好きだ、と言っていればいいのに、変に論旨をくっつけてるから違和感だけが目立ってしまった作品といえましょう。
ONE,Kanon,CLANNAD(Airは自説と違うからか触れられてない)の考察は目新しかったけど・・・
自分では、鍵ゲがヒットしたのは自己投影できるからでなくて単純にとっつきやすかったからだと思います。 -
「恋愛資本主義の崩壊の結果、萌えオタクが増加した」や「萌えは現実逃避ではなく自己救済」という論理は納得が言ったものの、内容的には随分薄いように思う。同じことの繰り返しが多い。
それから、女性については恋愛至上主義の女性しかいないように書かれているけれども、女性だって萌えるしオタクもいるのにその辺は結局不可視化されているように思う。
そんな点からも、独りよがり感が否めない。 -
「萌え」による自己救済というのは、とても納得。現実逃避ではなく、自己救済。私は今その真っ最中・・・
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論自体はなるほどと思えるのに、何故か作者から負のオーラを感じずにはいられない不思議な読後感。銭ゲバのラスト好きなんだなぁ。
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あまり語られなかったオタクの考えと、なぜオタクが増加した理由を説明した本。
様々な事例が載っており、オタク的な人間が昔からいたこと、萌えが果たす役割など、見識を深めるために、オタクでない人間にもお勧めできると思った。
特に、電車男がなぜ流行ったかの説明や、純愛を求める精神が出てきたことに納得した。