- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480064288
作品紹介・あらすじ
国際金融はリアリズムの世界である。そこでは国家の思惑がぶつかりあい、さまざまな「力学」が交差する。大航海時代の15世紀も、ロスチャイルド家が活躍した18世紀も、人民元やオイルマネーが跋扈する21世紀も、その構図はさして変わらない。むしろ、サブプライム禍以後、市場では国家の役割がいっそう大きくなりつつある。もはや金融は、国家プロジェクトなのである-。国家はどのように金融に関わってきたのか。規制と自由はいかにバランスされてきたのか。歴史を振り返り、日本の金融のあるべき姿を考える。
感想・レビュー・書評
-
国際金融の争い→主に西大西洋上において起こる。
最初はイギリス(大英帝国)。未だに為替取引市場ではロンドン市場が首位である。
金融=政治は密接に結びついている。
→メディチ家とイタリア諸国。
→アメリカの外交政策
経済力と金融力は必ずしも一致しない
pp.110
「財務省とFRBとの間で1951年に成立したのが「アコード」と呼ばれる協定である。これによって、FRBは国債の買い支えではなく独自の金融政策による政策運営を獲得することになり、さらに公開市場操作は短期債のみに限定されることになった。財務省は国債管理政策を担当することとなり、ここに財務省とFRBの「棲み分け」が規定されることにもなったのである。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
金融や経済について書かれた本は多くありますが、金融の歴史について書かれた本に出合えたのは数少ない体験でした。国家と金融の歴史は密接にかかわってきていると思いますが、その内容について読むことができたのは貴重でした。
ドルが基軸通貨になってから久しく経過します、米国の貿易・財政赤字が恒常化しているために、近い将来に基軸通貨の役割を終えてしまうだろうという考えが出ている中で、この本を読んでよかったと思いました。特に、基軸通貨の座を米国に譲った英国が、いまだに多くの資金を集めて、米国・カリブ・英国でお金のやりとりがされているという事実(p71)には驚きました。
以下は気になったポイントです。
・基軸通貨を持つ米国にとって、金融力は軍事力に劣らぬ、あるいは核兵器よりも威力を発揮しえる力である(p17)
・日露戦争時に日本は、ロンドン・ニューヨーク・パリ等の市場において、総額8200万ポンド(戦費の40%)の資金調達を行った(p19)
・ローマ教会は、為替手形による取引は為替リスクをとった商いであり、高利貸しではないとの判断を下した、これにより銀行と協会との距離感が緊密にさせた(p47)
・海運王国のオランダに挑戦した英国が次の覇者になったのは、英蘭戦争で勝利したことも一因であるが、交易構造の変化(香料からコーヒー、綿織物)もある(p51)
・スタンダード石油は、オハイオ州に設立したトラスト(企業グループ)が違法であると指摘を受けると、それが合法になっているニュージャージー州に拠点を移した(p64)
・資金の流れで断然大きいのは、英国から米国への流れ(1970億ドル)であり、続いて米国からカリブ(1140)である(p71)
・20世紀に金融覇権を奪取する米国も、19世紀半ばまでは、メキシコ銀貨・英国ソブリン金貨・ブラジル金貨等の多くの通貨が流通していた、ドルが法定通貨になったのは、1861年である(p78)
・世界銀行(IBRD)、国際通貨基金(IMF)を始めとして多くの機関において米国は圧倒的な議決権を保有しており、金融市場が「ドル離れ」を起こしても、制度的に離れられない仕組みになっている(p114)
・外貨準備とは、対内債務の増加(政府短期証券は2006年末で100兆円)と引き換えに対外債権を増やしているに過ぎない(p132)
・1929年の米国での株価が急落するまでは、米国がドイツに資金を投じて、その資金で英仏に支払いを行い、英仏はその資金で米国への負債の返済をしていた、急落により米国資本の逆流が起きて、その循環が停止した(p145)
・デラウェア州は、州内で事業を行わない限り、州の所得税が課せられない、支払うのはフランチャイズ・タックスと呼ばれる定額税金のみ、上場企業の4割は本拠地をデラウェア州においている(p189)
・清国から得た当時の一般会計歳出4年分に相当する3800万ポンドという巨額賠償を得て、横浜正金銀行のロンドン支店がその扱いを委託される、その資産を継承したのが東京銀行である(p204)
・2007年に発覚した欧米銀行による証券化商品運用スキーム(サブプライムローン関連)は、BIS規制の抜け穴を利用したものであり、実質的には、BIS規制は骨抜きになっていた(p221) -
タイトルと内容はまったく一致していませんが満足のいく充実の内容です
内容と一致させるのならば仮に「日本と世界の金融史」サブタイトルに「過去・現在から国内金融の未来を模索する」ってところでしょうか?
そんな地味なタイトルでは読者の眼に点きませんが・・・(汗)
日本はいままで米国追従の金融政策を採ってきたのと「日本らしさ」の独自路線をユラユラと・・・時には激しい論戦を交えながらも現在に至ってきた感がある
そして世界の金融は最先端を行く自分のまいた種「サブプライム問題」で大変な事態に陥っている
そこに新興国やオイルマネーはそれらの金融機関を買い漁っているが日本はそれほど大胆には参戦していない
バブルのツケの代償に手間取っていたので時代に取り残されたとも言えるし
取り残されたからこそサブプライムからは信じられないほど傷口が浅く済んだとも言える
それが実は文中にあるようにバブル崩壊からの教訓でリスクの対応が日本独自のやり方としてサブプライム危機から逃れたとも言えて何が正しくて何が正しくないのかはわからない
話をはじめに戻すと欧米化か日本独自化は今後もバランス良くユラユラと揺れ動くのが正しいのかは誰にもわからないが悪くはないとも思う
読み終えても正しい答えは在るようで無いような感想です -
しっかりとした本。
教養としてというのももちろんあるが、
そもそもこっち側にいる人間として、必ず持っていないといけない視点だと思う。 -
[ 内容 ]
国際金融はリアリズムの世界である。
そこでは国家の思惑がぶつかりあい、さまざまな「力学」が交差する。
大航海時代の15世紀も、ロスチャイルド家が活躍した18世紀も、人民元やオイルマネーが跋扈する21世紀も、その構図はさして変わらない。
むしろ、サブプライム禍以後、市場では国家の役割がいっそう大きくなりつつある。
もはや金融は、国家プロジェクトなのである-。
国家はどのように金融に関わってきたのか。
規制と自由はいかにバランスされてきたのか。
歴史を振り返り、日本の金融のあるべき姿を考える。
[ 目次 ]
第1章 金融力の競争時代-金融と国家の位相(軍事力と金融力 金融は有益な機能なのか ほか)
第2章 国際金融の力学-どのように発展してきたか(国際金融はどのように始まったのか 資金はどのように資本化されたか ほか)
第3章 金融の現代史-国家は推進力になりうるか(国際金融危機はどう切り抜けられたか 米国による金融の制度設計 ほか)
第4章 金融力拡大戦略-各国は金融をどう捉えているのか(日本の失敗から学ぶ中国 スイスはなぜ金融立国となったのか ほか)
第5章 日本の金融力再考-金融戦略に無関心な日本(「金融鈍感力」の大きな弊害 制度設計力の重要性 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
09年5月31日開始
09年6月13日読了
金融史というテーマも面白いかも。もっと掘り下げた本を読んでみたい。 -
国家の歴史の観点から金融の流れを説明した本。
はじめは、大航海時代やらヨーロッパの金融の発生からスタートし、徐々に現代に近づいていく。
そして中国の金融政策など現代史が書かれる。ここまで良く上手く書き連ねている本はなかなかないんじゃなかろうか。 -
「金融力」について。
あとがきより
「以前ロンドンで働いていたときに、ある英国系金融の幹部から、日本の銀行は経済学部卒ばかり採用しているのですね、と皮肉られたことがある。」
どういうことか?
「金融」の世界に限らず、現代の「日本システム」の特徴をも考えさせてくれます。
-
国際金融はリアリズムの世界である。そこでは国家の思惑がぶつかりあい,さまざまな「力学」が交差する。大航海時代の15世紀も,ロスチャイルド家が活躍した18世紀も,人民元やオイルマネーが跋扈する21世紀も,その構図はさして変わらない。むしろ,サブプライム禍以後,市場では国家の役割がいっそう大きくなりつつある。もはや金融は,国家プロジェクトなのである―。国家はどのように金融に関わってきたのか。規制と自由はいかにバランスされてきたのか。歴史を振り返り,日本の金融のあるべき姿を考える。(「BOOK」データベースより)