安全。でも、安心できない…: 信頼をめぐる心理学 (ちくま新書 746)
- 筑摩書房 (2008年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480064493
感想・レビュー・書評
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安全は管理と技術で提供できるが、安心は信頼関係によってもたらされる。
2008年初版だが、昨今の原発にまつわるさまざまな出来事が説明できてしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても分かりやすく読みやすい。心理学の予備知識がない人でも楽に読み進められると思う。2008年の本だが、今読んでもとても参考になる。著者の新作も読みたい。
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中谷内のリスク心理学の一連の新書である。グラフや尺度が掲載されている。
タイトルで、安心。と句点が入っているのを読点にしたらスマホではヒットしなかった。2008 の出版であるが、最新のものの方が分かりやすかった。
リスク心理学に興味がある場合は読んでみてもいいかもしれない。 -
社会
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図書館で借りて読みました。
メモ:
信頼を得るために必要な事
1.専門的・技術的な能力
2.誠実な姿勢で業務に取り組む高い動機づけ
3.価値を共有しているという主要価値類似性
1.は当然だけど、2.3.を積極的にアピールすることも時には必要。 -
某氏にいただく。スロヴィックの議論あり。
第一章は具体例が多くて逆にとっつきにくい印象があったが(事例が古くなっていることもあるのだろう)、二章以降はおもしろい。信頼の非対称性原理の話、感情ヒューリスティックの話が参考になった。 -
安全は安心とはイコールではない。科学的に安全が保障されていたとしても、また現実に被害が生じていなくても、一般の人を安心させることは必ずしも出来ないことを社会心理学の研究分野であるリスク認知の視点から書かれている。アカデミックでありながら、食賓偽装問題や建築偽装問題、東電柏刈羽発電所での事故、社会保険庁の年金問題など大きく報道された誰もが知っているであろう事例を交えて解説されており、非常に分りやすい。
安心をもたらす要素として、リスク管理者の能力、そしてそれに対して動機を持っていると"みなされる”事がまず二つの条件となる。さらに、別のフレームワークで、自分と同じ価値を共有しているかどうかがリスク認知に大きく影響を及ぼすというものが加わる。
また、犯罪の実際の発生件数と、被験者が想像する発生件数は、より危険性の高いものほど過大に見積もるのは、一次バイアスと呼ばれ、より好ましくないものを感情的によりリスキーと評価してしまう傾向があるという。
リスク管理に関わるものとして、テクニカルな側面だけを強化しても、一般の人たちの信頼を得ることができないことが、心理学面の理論によって明快に解説されている。 -
安全と安心の違いがわからないと、コンテンツ提供はできません。というか、しちゃダメです。
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安全と安心は、セットで使われる言葉で似ている言葉だが、似て非なるものである。人は、安全な状態だけでは安心を感じることはなく、安全を提供している人や組織を信頼できて初めて安心を感じることができるということが、具体例を挙げながら解説されている。安全、安心、信頼の関係性についてデータや事例を積み上げて書かれた良著である。
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(大学時代に書いた書評が出てきた)
現代の社会は高度に専門化・分業化が進んでいる。そうした社会にあって私たちは衣食住をはじめ生活におけるさまざまなものを他人に依存しながら生きていくことになる。他人に依存しながら生きていくということには必然的にリスクが伴い、そのリスクを考える際に重要なキーワードとなるのが本書のタイトルにも使われている「安心」と「安全」。
本書では近年多発した食品偽装の問題など身近な例を挙げながら、現代の日本で暮らす私たちが「安全」であることを理解しながらも、十分に「安心」はできていないということについて、心理学的な見地から解説を試みるものである。
「安全」と「安心」は別のものであり、「安全」であることが必ずしも「安心」につながるわけではない。例えば、食品偽装の問題では安全性が確保されても一度失われた信頼は回復しづらかったり、食品偽装に関する問題が繰り返し起こったことで安全性に問題のない件に関しても人は経験化された知識から安心できないと判断したりということが起こる。
人の「安心」や「信頼」といった感情がどのような仕組みで成り立っているのかが分かりやすく解説されている。本書の中で筆者も言っていたが、リスク管理に携わる人だけでなく、行政・政治に関わる人にも多く考えてもらいたいと思える本であった。