- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480065087
作品紹介・あらすじ
「現代思想」と聞くと、どうしても「ムズカシそう」というイメージを浮かべがちだ。けれども、差し出されているメッセージ自体はけっして難解なものではない。性、環境、心、コミュニケーション、民主主義…、その問題群は私たちのすぐそばにあることばかり。著者はその一つ一つをやさしく解きほぐしながら、新たなものの見方や発想へのきっかけをつくろうとする。この時代を生きるすべての人に届けたい入門書。
感想・レビュー・書評
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タイトルに偽りあり。中身はどうでもよくて(あえて言えば現代思想よりは哲学寄りだ)、初習者の立場に立てていないから。かろうじて配慮が感じられるのは「はじめに」と第一章くらいで、あとはこんな書き方ばっかり。
「「監視社会」を考えるとき、もう一つモデルになったのは、ベンサムが考察し、フーコーが有名にした「パノプティコン」ではないでしょうか。(p.62)
これ[ライシュの『暴走する資本主義』のネオリベに関する一節]を読めば、小泉元首相の時代に声高に叫ばれていた政策が、「新自由主義であることは明らかでしょう。(p.189)
ベンサムやフーコーがどういう人か、小泉は何をしたかといったことは、初習者にとって最低限必要な情報ではないか。少なくとも10年後の12歳なら「こいずみって誰~?」となるに違いない(現代思想というのは時代を問わず読まれるべきではなかろうか?)。
また文体も、もっと読者に語りかけるとか、「●●という××」のように言い換える姿勢が足りない。あとがきには「12歳「からの」だから対象年齢は大人までだ」という但し書きはあるものの、中学生でこれを読んで現代思想に興味を持つなんてことはほぼ皆無だろう。
身も蓋もない話だが、そもそも現代思想に興味を持つ中学生なんかいない。それでも、「これなら読んでもらえるかも!」という一縷の望みを感じさせるのが入門書(新書)の役割であって、この本からはそうした望みが見えてこないのである。なぜ教養新書として出すのか、その意味をもっと考えてほしかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この手の本は、哲学書をいろいろと限って読みあさり、何となくわかった人、もしくは、わかりたいと思う人向けなので、「現代思想」にまったく縁のなかった人には一読して「????」であることには変わりないと思う。しかしながら、どういうわけか、こうした、「現代思想を簡易に伝えようとする書物」が新書で毎年、発行されているので、それらを読み続ければ、そのなんとなくの輪郭を少しずつあらわしてくれると思う。
さて、この本では、特に医療科学の分野に結構な量をさいているように思う。現代思想と医療は、今後、心や脳、人間そのものを巡る議論を含めて、かなり大きな分野になりそうな印象を強く受けた。 -
久しぶりに読んだが、当たり前の思想が掘り下げるとそうでなかったり、常に当たり前について疑問を持たなくては行けないと思った
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思索
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文章は平易で読みやすいです。
どの内容も結論がふわふわしていますが、「考える」ことのきっかけとなることが主眼であれば、そのあたりは大したことないんかなと思いました。 -
こういう「12歳からの」という系は、本当に12歳から読んでわかるのか。
コピーやジェンダー、環境主義、民主主義など
様々なテーマにおいて代表的な思想家の考えが出てきており、
考え方が提示される。
概説書としては、確かに平易な文章では書かれているし、
若い人を配慮してそうな文章なんだけど、コビにも見える。
「XX歳のー」とか「中学生でもー」とかは、もう「簡単な文章を心がけてますよ」というシグナルなだけだと理解した方がいいのかもしれない。 -
20130410
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現代思想の諸問題の基本構図をわかりやすく解説した本。たとえば第1章では、大学生のレポートの「コピペ問題」を題材に、R・バルトのテクスト理論やボードリヤールのシミュラークルの解説をおこなっている。ただし、本当に12歳の読者が読むには少し難しいと思う。
上で言及したオリジナルとコピーにまつわる問題のほか、第2章ではドゥルーズ=ガタリの「n個の性」が、第3章ではフーコーの監視社会論が取り上げられ、そして第4章と第5章では、環境保護問題から語り起こして、自然と文化を対立させる構図への疑義へと読者を導いてゆく。
第6章は(狭い意味での「現代思想」からは少し離れると思われるが)心脳問題が扱われる。第7章のテーマは「コミュニケーション」だ。著者は理想的コミュニケーションを想定するハーバーマスの説への疑問を提出し、メタ・コミュニケーションによって固定化されたコミュニケーションを「ズラす」戦略が可能だと論じる。第8章は自由と平等をめぐる問題が取り上げられる。
哲学や思想に関心のある高校生や受験生に読ませるのにちょうどよいと思うが、個人的にはハーバーマスが理想的発話状況を批判の足場に据える意義をもう少しきちんと解説してほしかったという気がする。 -
本書は、古今東西の現代思想をごく一部を活用して12歳からでもなんとか太刀打ちできるように解説したガイドブックだ。全ての読者が本書を理解することは難しいかもしれないが、現代思想が存在して、かつそれは私たちの生活に密着していることを知るだけでも、読む価値があるといえる。
個人的に興味を持ったことは、誰とでもメタ・コミュニケーションが成立させるように努力しないといけないのか、ということと、ダブルバインド(二重拘束)に陥らないように、あえてコミュニケーションのプロセスの中でズラシ戦略をとることも能力の1つ、ということだ。双方の合意無くして「メタ・コミュニケーション」は成り立たないし、ビジネスの全ての場面で、それをとらないといけないわけではないと判断する力も必要なのかもしれない。