- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480066343
作品紹介・あらすじ
日本が西洋諸国と伍していくための国家戦略として明治期に制定された「民法」。企業間の取引から日常的な売買にいたるまで、われわれの経済活動の最も基本的なルールを定めたこの法律が、いま百年余りの時を経て抜本改正されようとしている。なぜ現在、こうしたルールの変更が求められているのか。具体的に何がどう改正され、それによって私たちの生活にどんな影響がもたらされようとしているのか。市場の世界化を見据えた契約法モデル策定の最新動向を、第一人者が平明に説く。
感想・レビュー・書評
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仕事のための読書。
木村草太先生が、『キヨミズ准教授の法学入門』で、民法の入門書としてすすめていた本書。
民法についての知識といえば、大学生のころに受けた短い授業のおぼろげな記憶のみという自分が、いきなり改正についての本を読んで大丈夫なんだろうか……という心配しつつ、読み始める。
結論から言えば、その心配は杞憂に終わりました。
いま国会で検討されている、民法の契約に関する部分の改正を糸口に、民法の扱っている内容、市民が日常生活の中でいかに民法と関わっているか、
明治時代に日本で民法が成立した経緯、世界の経済情勢の中での立ち位置などが、順を追って説明されるので、まったく予備知識がなく読んでも、おおよそ民法というものが何のためにあり、世の中でどう機能しているのか、その全体像がつかめるようになると思います。
やや専門的な言葉や考え方が出るたびに、簡単な説明が付されているのも好印象。
こういう読み手への気遣いって、実際に本を書いているときには、なかなか難しかったりすると思うんだけど。
すごいなあ。
個人的に好きなのは、第4章「日本民法の生い立ち」。
いつもなら立法の歴史なんて難しいしと読み流してしまいそうなところなのですが、すっかり予想を裏切られる面白さ!
著者の筆の力なのか、早く諸外国に追いつかなければという明治政府の焦り、集められた精鋭陣の若さと挑戦、解釈論の激しいぶつかり合いや挫折などがまるでドラマのようで、夢中になって読んでしまいました。
この部分、我妻栄を主人公に、大河ドラマにしたらいいのになあ……などと妄想も膨らみます。
今まで、改正法案が通るか、通らないか、という視点でみていたニュース。
本書を読んだことで、本書が刊行された2011年の後の経過も含めて、どのような改正になって、社会がどう変わるのかという点に、今よりも少しだけ自分なりの興味を持って接することができるように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
民法の歴史について、わかりやすく興味深い説明が!!
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民法、それは私たちの日々の生活にかかわる法律の中で最も基本的なものと言える。それが、実に100年以上前に作られてから変わっていないのだそうです、ビックリ。世の中は大きく変わった。特にここ10年はネットにかかわることが大きく変化してきた。世界中の人々とかかわることも多くなってきた。そんな中、本書では民法改正の必要性が説かれています。内容的に大して理解はしていないけれど、大震災があった後などに契約をどうするのがいいのか、期限を変えるなど臨機応変に対応できるようにしていかないといけないのでしょう。日本から世界に通用する民法が発信できることを期待しています。だれのための民法なのか、わかりやすく、使いやすいものになればいいと思います。
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2011年11月の週刊東洋経済、特集「さらば!スキルアップ教」の中で、瀧本哲史氏が薦めていたので、読んでみました。
まず、タイトルが少し誤解を与えてしまうかなという印象。民法は現在でも拘束力を持つ日本の法律の中でもかなり古い方に位置しており、現状にそぐわなくなってしまっている。そこで、著者を含めたチームが改編作業を行っている。つまり、タイトルが意味しているような改正は、まだということだと思います。
そこにあるのは、裁判員制度やADRと言った制度により、日本人の法に対する意識の変化が生じており、それらに応える為にも改正が必要ということ。
初学者でいきなりこの本を読むのは、かなり分かりやすく書かれてはいるが、ちょっと大変かもしれません。 -
現在、法務省において1896年に制定された日本の民法を100年ぶりに改正しようという動きがあります。
著者は東京大学法学部教授から法務省参与に転職してこの活動に参加している人物で、本書は民法改正の必要性と諸外国における民法改正の現状、そして民法をどの様に改正するべきかと言った改正の方向性などを読者にわかりやすく解説している本です。
全7章からなり、それぞれ
1章:100年ぶりの改正
日本における改正プロセスの現状等を解説
2章:民法とは?契約法とは?
民法、特に契約について解説。
契約法が市場毎(国毎)に違うと取引にとってハードルとなる
3章:市場と民法
フランス、ドイツ、アメリカ、ロシア、中国、ベトナム、カンボジアの民法成立の経緯。
国際取引の増加に伴い、契約法(民法の一部)を各国で共通化して取引の障害を取り除こうとする動きが現れ、現在EU加盟国で契約法統一の動きがある。
日本は、民法の国際化の流れに乗り遅れており、このままだといずれ外国が制定した国際ルールをそのまま導入せざるを得なくなる可能性がある。
4章:日本民法の生い立ち
明治時代、欧米列強との間で結ばれた不平等条約改正交渉の為、民法の制定が急がれた。
その為、細かな条文を全部落として原則だけシンプルに書くという¨突貫工事¨で民法原案を作成。
その結果、民法に足りない部分を解釈で補うという、日本独自の風習が生まれるとともに民法を読んでも(専門家の解釈無しには)何を言っているのか分からない状態に。
5章:国民にわかりやすい民法
現状民法の問題点を実際の裁判を例にあげながら解説
6章:民法の現代化
民法をどの様に改正すべきか、実際の裁判を例にあげながら解説。
7章:市民のための民法をめざして
国際取引における法務コストや契約法の国際統一化の動き、日本発の国際契約法のメリットなどを指摘しながら民法改正の必要性を解説。
また民法改正の動きに対する拙速との批判に対して、契約法以外にも担保法、不法行為法なども含めて改正しようとすると20年以上かかることを指摘し、また日本に比べて圧倒的に速い諸外国の改正の動き(ドイツ:1年、フランス:その気になれば即時、韓国:4年で完了予定)も踏まえて決して拙速ではないと反論。
最終章の7章で著者は、制定当時のフランス民法とドイツ民法、そして日本の解釈論の3つの要素が合わさって専門家以外には分からなくなった日本民法の現状を、中世ヨーロッパで聖職者が聖書の知識を独占していた事に例えながら、民法をわかりやすくする必要性を訴えていました。
私は以前、「法律はみんなが守る事を求められているのに、専門家の助けを借りなければ法律に何が書かれているか分からない。法律の内容が分からなければこれを守りようがない」と言った主旨の考えを抱いたことがあります。
本書はこの様な考えに沿って民法改正を進めている著者のような人々の存在を知らせてくれるとともに、国際取引における共通ルール(国際統一された契約法)の必要性と言う観点からも民法の現代化、改正の必要性を指摘しており、その点、目から鱗な内容でした。
100年前の民法制定の突貫工事は、当時の日本の国際社会における立場によって必要とされたもの。
現在、その同じ国際社会からの必要性によって民法の改正が強く求められているのだなと思いながら読了。
本書は論点が明確で、民法改正の必要性が理解しやすい内容となっています。
現在、著者らが取り組んでいる100年ぶりの制度改正に興味をお感じになられればおすすめな一冊でした。
私たちの生活に密着している民法の改正をテーマにした解説本。
お時間のある時にでも一読されてみては如何でしょうか。 -
民法改正を強引に進めたい元学者によるプロパガンダ本であり、悪書である(その理由は後述)。しかし、著者が、債権法改正において力を有していること自体は間違いないと思われるので、そういう立場にある者の主張を知っておくという意味で、読んでも良い。
まず、本書とは離れるが、本書のレビューの前提として必要なので、いわゆる内田民法について言及する。同シリーズを読んだことがある良識ある実務家・学者なら分かる通り、内田民法は何も書いていない。言い換えれば、既知の論点についての言及しかなく、今後生じ得る問題点の指摘や、それに対して著者がどのように考えるかの言及がない。この点で、梅、鳩山、我妻の書籍のような、現在でも法律実務において参照できる書籍と内田民法は根本的に質が異なる。
梅と言えば言わずと知れた民法起草者であり、鳩山も批判ももちろんあるがドイツの解釈に範をとった精緻な解釈を定着させた学者であり現在でもその影響は大きく、我妻は鳩山から出て鳩山を越え現在の民法解釈の通説を確立した学者である。これらの学者が法改正の必要性を訴えたのであれば、なるほど然りと納得できよう。
これに対し、本書の著者は、実務において全く参照に値しない書籍を著すことしかしていない。なお、念のため付言すると、著者が学者として平均より劣っているというつもりはなく、比較対照たる梅、鳩山、我妻があまり巨頭なのである。
しかし、平均より優れていようが、内田民法がいかに学生に人気があろうが、「民法改正」を一人で主導していくことはさすがに無理がある。著者は、平成の梅、鳩山、我妻になりたいのかもしれないが、そのような著者の思い込みや野望によって基本法たる債権法の改正が進められてはたまらない。この本は、かかる著者が、自らの野望を実現すべく結論ありきで書いた本であり、さも改正が必須であるかのように喧伝しており、それゆえ、悪書である。
一例を挙げるなら、日本法を外国企業との契約において準拠法とするには、日本の債権法をグローバルスタンダードに合わせる必要がある、それゆえ改正が必要であるという主張である。国際取引の現場にいる者であれば誰でも知っている通り、準拠法は、当事者間の力関係により決まり、著者が主張するような要素によって決まるものではない。また、日本法が準拠法として指定された場合、債権法のみならず、他の法律についても日本法が適用されるので、債権法のみを改正すればすむという話でもない(もちろん、契約の準拠法である以上、債権法の比重が大きいのはそのとおりであるが)。 -
何もかもが市民目線になっていく。これはどういう結果をもたらすんだろう。
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今更だが比較法的な視点で書かれていて面白かった