- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480068552
感想・レビュー・書評
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人のこころ。心理学のなかでも、議論となる名著を厳選して解説。動物界の一員としてのヒトの研究、ひとの心理学は意味を構成しながら人生を歩んでいくひとの研究、人の心理学は社会を作り、そのあり方を問う。
音や数字に色がついて見える。認知の多様性。デカルトの我思う故に我あり、心身二元論。
正義は断じるもの、倫理は抱え続けるもの、道徳はしつけられたもの。正義の反対はもう1つの正義となる。悪では無い点には注意。逆から見たらすぐに分かる。主体として考え、行動することが大切だ。
ブルーナーのコインの実験。裕福な子と貧困の子で同じコインを見ても、貧困の子の方がコインが大きく見えているという。価値、意味がひとによって異なるという実証である。
そして、マズローの心理学。生理的、安全、所属と愛、承認、自己実現という五段階の欲求があり、高い精神的な欲求に進んでいく過程をピラミッドで表した。
カルトについてはフィスティンガーの研究、ノストラダムスの予言は外れたが、むしろのめり込んだ人の多くは財をつぎ込んでいて、都合よく解釈する。カルト入信もまた、犠牲を伴う分都合よく解釈していった結果と。宗教なんて、まさにそれよと心理学では分析している。問題になるから、暗にだけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
心理学について知識が乏しかったので、この本によって心理学という学問がどんな変遷を辿っていったのか少しだけ理解できた気がした。
心理学は哲学みたいに学者によって色々悩みながら発展していったのだなとしてて興味深かった。 -
心理学の重要著作30冊を紹介している本です。
ジェイムズの『心理学について』やフロイトの『精神分析入門』などの古典的な著作から、ダマシオの『デカルトの誤り』やトマセロの『コミュニケーションの起源を探る』などのあたらしい本まで紹介されています。ただし、それらの本がただ羅列されているのではなく、「あとがき」で「それぞれの本の著者である心理学者の研究の背景がわかるように心理学史的な叙述を行った」と著者が述べているように、心理学の展開についての説明が比較的ていねいになされているところに、心理学史についての著作もある著者ならではの手腕が発揮されているように感じました。
著者は「はじめに」で、「動物界の一員としての「ヒト」の心理」「発達・成長する存在としての「ひと」の心理」「社会を作り、社会で生きていく「人」の心理」という、心理学があつかう三つの側面を区別し、それぞれが「認知・行動」「発達」「社会」という領域をかたちづくっていると述べています。さらにこの三つの領域にくわえて、「経済、文化、法への展開」を示す「展開」の領域を設けて、それぞれの代表的な著作を紹介することで、心理学の全体像を示そうとしています。
著者自身の心理学の見かたが反映された見取り図ではあるものの、心理学の全体像を概観することができるという意味で、本書は優れた心理学の入門書といってよいのではないかと思います。 -
心理学には名著が少ない(p.282)。そのなかでの30冊は以下の観点で選ばれている。
・本当の名著
・講演録や論文集
・心理学の学説史上,重要な論点を提出した心理学者の著書
この基準を用いると100冊弱は紹介することになってしまうらしいので,「ヒト」「ひと」「人」という3側面の心理についてそれぞれ10冊ずつ選定されている。
ヒトの心理とは動物界の一員としてのヒトの心理,ひとの心理とは発達・成長する存在としてのひとの心理,人の心理とは社会を作り,社会で生きていく人の心理である。
以上の方針に基づき30冊が選ばれた。ただし,本書は著書そのものを紹介するというよりも,著書(あるいは著者)にまつわる心理学の観点からみた歴史を紹介している。そのため,心理学についてある程度知識がないと楽しく読めないであろうと思われる。心理学についてある程度知っている人(大学生で言えば3年生〜4年生くらい)向けの本であろう。
ただ,まえがきで記される心理学の分類については初学者でも参考になる。その分類とは簡単に言えば,上記の3側面(「ヒト」「ひと」「人」)に,心理学の3つの志向性を掛け合わせた9分類で心理学を捉えようとするものである。詳細は本書にて確認してほしい。
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予想通り30冊をつまみ食いした本
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無駄な文も多いが、フランクで読みやすい。心理学の各領域の分類、関連については、教科書よりも分かりやすい。
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去年読んだときはかなり難しく感じ、意図的に難しく書いているのでは?とさえ思ったが、今読むとそれが勘違いだったと分かる。これは心理学中級者向けの本だと思う。去年の秋に心理学検定1級を取得し、基本的な用語を理解した今では難なく読むことができ、さらにキーワード間の論理や物語を保管できたという点で有用だった。今後も読み返すと思う。
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心理学書の名作についての評論という感じか
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配置場所:2F新書書架
請求記号:ちくま新書 ; 1149
資料ID:C0037198 -
心理学における名著30冊を紹介。
古典だけでなく新しいものもかなり入っている。多岐に渡る分野からバランスよく選ばれ、心理学を学ぶ者は一度は目を通すべき本ばかり。 -
3(領域:認知・行動,発達,社会)×3(基本・臨床・発展)の9カテゴリで30冊を紹介。名前は知っているけど通読したことない本もたくさん。臨床のあたりは教科書のさらっとした記述だけ読んで上っ面しか見てなかったんだなーと気付かされること多々あり。専門の人間としては30冊ちゃんと全部読むべきところか。せめて社会領域は読んでおかないといかんかな。
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ちくま新書の〈30冊〉シリーズの中には、〔あくまでごく一部だが〕選書において「なんとなく、有名どころを30冊くらい選らんじゃおー」的な甘さが垣間見えるなか、本書は選択においてかなり真面目にバランスを実現しようと努力されていらっしゃる。
【メモ】
・96頁の書誌情報だけが日本語。もとが論文だからか。
・153頁は個人的に好み。脳みそ還元主義やトロッコ問題乱発に釘を刺している。
・187頁の書誌情報。
Erich Fromm, Escape From Freedom, 1941 (翻訳[新版]日高六郎訳、東京創元社、一九六六)
とあるが、わたし調べでは、邦訳は1965年のはず。
【目次】
目次 [003-006]
はじめに [007-011]
第1章 認知・行動領域――「ヒト」としての心理学 013
01 ジェームズ『心理学について』――近代心理学の土台となる思想 014
William James, Talks to Teachers on Psychology: and to Students on Some of Life’s ideals, 1989
哲学者西田幾多郎にも影響を与えた心理学者/意識は不断に流れている/心理学への様々な影響/『心理学原理』の余波/人間への飽くなき興味
02 ルリヤ『偉大な記憶力の物語』――記憶力が良ければ幸せか 023
А. Р. Лурия, Маленькая книжка о большой памяти (Ум мнемониста), 1968
同窓会でその当時に戻れるのはなぜ?/記憶の分類/特殊な記憶の持ち主/忘れることも立派な能力
03 スキナー『自由と尊厳を超えて』――新たな行動主義 030
Burrhus Frederic Skinner, Beyond Freedom and Dignity, 1971
行動を分類する/行動主義の誕生/罰に対して反対する/ジェームズからの影響/価値と文化の行動分析/死ぬという行動はオペラント行動
04 ノーマン『誰のためのデザイン?』――アフォーダンスの応用 039
Donald A. Norman, The Design of Everyday Things, 1988
ギブソンのアフォーダンス理論/デザインは記号の配置である/アフォーダンスをいかに応用するか/知覚の心理学を実社会で活かす/
05 セリグマン『オプテミスィトはなぜ成功するか』――無力感の研究から始まる楽観主義 046
Martin E. P. Seligman, Learned Optimism, 1990
無力感を学習するとは?/ポジティブ心理学の誕生/社会からも必要とされるポジティブ心理学
06 カバットジン『マインドフルネスを始めたいあなたへ』――自分らしく生きるための思考 054
Jon Kabt-Zin, Wherever You Go, There You are: mind fullness Meditation in Everyday Life, 1994
行動療法その第三世代の波/自分を深く知り世界と調和するために/いまここを重視する
07 ラマチャンドラン『脳のなかの幽霊、ふたたび』――脳のなかの意識ではないもの 060
Vilayanur S. Ramachandran, The Emerging Mind, 2003
脳の中の混線と断線/数字に色がついて見える/ペンフィールドによる脳地図/言葉によって失った知覚
08 ダマシオ『デカルトの誤り』――身体と精神は別ではない 069
Antonio Damasio, Descarter’s Error/Emotion, Reason, and the Human Brain, 2005
「我思う故に我有り」は本当か?/神経心理学における有名な参加者たち/感情が欠落すること/有機体としての人間
09 トマセロ『コミュニケーションの起源を探る』――人は協力するために他人を理解する 078
Michel Tomasello, Origins of Human Communication, 2008
トルコと日本の協力関係/人は九カ月から社会の一員となる/子どもの心理学の歴史/「異なる視点」は人しかもたない
第2章 発達領域――「ひと」としての心理学 089
10 ビネ、シモン『知能の発達と評価』――教育のための適切な検査 090
(邦訳:中野善達・大沢正子訳、福村出版、一九八二)
知能検査と知能指数は違うもの/当時のフランスの状況/総合的判断を重視する知能検査/誤用される知能検査/検査することの権力性
11 フロイト『精神分析入門』――心理学と精神分析のつながり 097
Sigmund Freud, Vorlesungen zur Einfu hrüng in die Psychoanalyse, 1917
フロイトの前半期の総まとめ/独創的な発想/神経症の理解と治療/フロイト理論の魅力/新しい人間観としての精神分析
12 ユング『心理学的類型』――対立を乗り越えて 106
Carl Gustav Jung, Psychologische Typen, 1921
ユングとフロイトとの対立/フロイトとアドラーの違いから理論を見出す/タイプ論/単純であるがゆえに複雑なものを引き出す
13 ヴィゴーツキー『教育心理学講義』――心理学が教育にできること 116
Lev Vigotskiy, Educational Psychology, 1926
人間にのみある固有の機能/教育と心理学の関係/発達心理学者ピアジェ/手助けを借りながら学ぶ
14 ロジャーズ『カウンセリングと心理療法』――カウンセリングの可能性を開く 125
Carl Ransom Rogers, Counseling and Psychotherapy: Newer Concepts in Practice, 1942
誤解を受けやすいロジャーズ/児童相談所で多くの子どもと接する/あくまで援助するカウンセリング/グループワークを開発する
15 エリクソン『アイデンティティとライフサイクル』――人間の発達の可能性 134
Erik H. Erikson, Identity and the Life, 1959
エリクソンの不思議な生い立ち/児童分析が結実した『子ども期と社会』/「後漸成」という画期的な考え/「心理・社会的」発達の可能性
16 ギリガン『もうひとつの声』――他者への配慮の倫理 145
Carol Gilligan, In a Different Voice: Psychological Theory and Women's Development, 1982
道徳性心理学と発達心理学/ハインツのジレンマにいかに答えるか/ギリガンによる発想の転換/道徳的問題に対するジェンダーの違い/脳に還元せずに考える
17 ブルーナー『意味の復権』――意味から物語へ 156
Jerome Bruner, Acts of Meaning, 1990
認知革命の旗手/意味のない世界からの脱却/積極的に意味づけしていく存在としての「ひと」/ナラティブから文化へ/物語重視への転換(ナラティブ・ターン)の立役者
18 ハーマンス、ケンベン『対話的自己』――自己はたった一つではない 169
H. J. M Hermans. & H. J. G. Kempen, The Dialogical self: Meaning as Movement, 1993
自己とは自分のことではない/自己は複数存在する/箱庭療法とコンポジション・ワーク
第3章 社会領域――「人」としての心理学 177
19 フロム『自由からの逃走』――人間の本質とは何か 178
Erich Fromm, Escape From Freedom, 1941 (翻訳[新版]日高六郎訳、東京創元社、一九六六)
悪についての洞察/近代における人間とは/社会的性格という新たな概念/権威主義的パーソナリティの本質/自由とは何か
20 フランクル『夜と霧』――人生の意味を問いなおす 188
Viktor Emil Frankl, Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager, in trotzdem Ja zum Leben sagen, 1977
圧倒的な価値の源泉/人生の意味を見出す力/「私にしかできない何か」を問う/旧版と新版の違い
21 レヴィン『社会科学における場の理論』――ゲシタルト心理学の流れ 194
Kurt Lewin, Field Theory in Social Science, 1951
ゲシタルトの概念を取り入れる/動きのゲシタルト:なぜ光が動いて見えるのか/ゲシタルト心理学の展開/子どもには場の構造をとらえるのが難しい
22 マズロー『人間性の心理学』――動機づけを与えるために 204
A. H. Maslow, Motivation and Personality, 1954
よりよい生活を送るためのヒント/ピラミッド型の欲求段階/自己実現/心理学における手段と目的の取り違え
23 フェスティンガー、リーケン、シャクター『予言がはずれるとき』――人は都合よく出来事を解釈する 210
Leon Festinger, henry W. Recken and Stanley Schacher, When Prophecy fails, 1956
終末予言と認知的不協和理論/社会心理学者の奇妙な人生
24 ミルグラム『服従の心理』――誰もが悪になりうる 217
Stanley Milgram, Obedience to Authority An Experimental View, 1974
アッシュの集団圧力の実験/人は致死量の電気ショックを与えるのか?/悪の凡庸さを実験によって証明する/倫理的問いを抱える
25 チャルディーニ『影響力の武器』――ダマされやすい心理学者による提案 225
Robert Cialdini, Influence; Science and Practice, 1988
心理学は役に立つ?/勧誘のプロを研究する/心理学は悪用できるか?/どれだけ真剣に読めるか
26 ラザルス『ストレスと情動の心理学』――単純な因果関係を乗り越える 231
Richard S. Lazarus, Stress and Emotion: A New Synthesis, 1999
生理学からはじまる/各方面から研究されるストレス/ストレスとトラウマ/物語(ナラティブ)アプローチによるストレス理解/
27 ミシェル『マシュマロ・テスト』――性格は個人の中には無い 240
Walter Mischel, The Marshmallow Test: Mastering Self-Control, 2014
性格および性格を知るということ/性格理論が訴えることをひっくり返す/マシュマロ・テストとは何か/ホットシステムとクールシステム
第4章 心理学の展開 251
28 ロフタス『目撃者の証言』――記憶はどこまで信用できるか 252
Elizabeth F. Loftus, Eyewitness Testimony, 1979
目撃者の証言はどれくらい使えるか/記憶はいつも不安定/心理学の応用は法の現場からはじまった/記憶による証言をどこまであてにするか
29 ヴァルシナー『新しい文化心理学の構築』――普遍と個別を架橋する概念としての文化 262
Jaan Valsiner, Culture in Minds and Societies, 2007 (邦訳:サトウタツヤ監訳、新曜社、二〇一三)
文化と心理学の関係とは/「比較」文化心理学/「一般」文化心理学から見た文化/ディスコミュニケーションと自己の三層モデル/文化を扱うことの困難さ/複線経路等至性アプローチ
30 カーネマン『ファスト&スロー』――行動経済学の基本にある心理学的考え 272
Daniel Kahneman, Thinking, Fast and Slow, 2011
経済学者か心理学者か/分かりやすさを重視した二項対立/速考としてのヒューリスティックの発見/プロスペクト理論/ファスト思考(速考)も合理的な判断/自己・人生・物語・幸福
あとがき [282-286]