イノベーションはなぜ途絶えたか: 科学立国日本の危機 (ちくま新書1222)
- 筑摩書房 (2016年12月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480069320
感想・レビュー・書評
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今後の日本の技術衰退(予想)が具体的にどこに問題があって起こりうるのか、非常に興味深く読むことができた。
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SBIR制度の話を聞いて,米国の税金の使い方が巧みであることが分かったが,日本で同様な制度を構築するのは各方面からの抵抗が大きいと予測される.特に大企業から.馬の骨のような奴に国の予算を配分するといった芸当はできないだろう.官僚たちの天下り先がなくなるのだから.やる気のある若者がサイエンス型ベンチャー企業を起こすのを横目で見ながら,足を引っ張るのが官僚のやり口だ.イノベーション・ソムリエの育成についても,理系文系の枠を取り払う強い声がないと実現できないだろう.でも米国で出来たのだから,真似の上手な我が国でやれないことはないと思うが,どうだろう.
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久しぶりにいい本と出会った。みんなも読むべき。日本の課題が明確に書かれている。
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塚本壽 リチウム電池開発 ベンチャー
バインド電池
http://www.connexxsys.com/
山登りのワナ
ある山に登ってしまったら、他に高い山があることを見なくなり、たとえ見えたとしても、登る行為自体がワナとなって下りれなくなる現象をさす。
鉱物性燃料(石油など)を除いて、日本経済の足をづっと引っ張っている産業はなにかといえば、医薬品である
2000年以降相転移 そこまで6000億 2015 30000億 発見する薬からデザインする薬へと創薬の方法論が変容したことによる
90年AT&Tベル研究所 科学研究から撤退 91年IBM 基礎研究から撤退 その後ゼロックスのPARC(パロアウト研究所)がなくなり、HPも縮小
基礎研究を世界に先駆けて縮小したにもかかわらず、米国では科学や技術企業が日本のように凋落するどころか、どんどん勢いを増していった。
山中教授 利根川進の講演会で、一つの研究分野に腰を落ち着けずに次々と専門領域を買える自分の将来に底知れぬ不安を覚え質問した
「研究の継続性が大事だなんて、誰がそんなんいうたんや。面白かったら自由にやったらええやんか。」
臨床整形外科→薬理学→分子生物学→がんの研究→ES細胞の研究とさまざま分野を遍歴
iPS細胞の発見は回遊をしたはての創発である -
科学者が、日本の技術の衰退の原因を説く。シャープのこと、原発のこともこういう科学者の視点でみればよく分かる。
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日本発信の科学技術のイノベーションが少なくなって久しい。その理由を最近のシャープなどの事例や科学技術がどのようにして発展するかの持論を展開している本。
1章では、中央研究所崩壊からイノベーションをするような場が日本から消えてしまった、「目利き」の存在がいないことを理由としている。
2章では、元はイノベーション企業だったシャープの例から、危機は分かっていても「山登りのわな」から逃げられなくなったことを研究面でも事務面でもインタビューから明らかにしている。
3章では、米国のイノベーションは、SBIRの仕組みにあり、日本はその仕組みの本質的な理解をせずに失敗してしまったとしている。
4章では、イノベーションが生まれる仕組みを「昼の科学」と「夜の科学」、共鳴と回遊が必要だとしている。
5章では、トランスサイエンスの必要性を訴え、それができなかった、JR福知山線転覆事故、原発事故について、まとめている。
6章では、これまでのまとめとして、リスクに挑戦し、イノベーションソムリエの存在を作ること、科学者としての在り方をまとめている。
多岐にわたっているが、いろいろと示唆に富むことも多い。著者の本を読んでみたいと思った。 -
日本のイノベーションの衰退の原因を多面的に取り上げています。
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市民科学者社会の実現には深く同意する。非常に興味深く勉強になった新書であった。