ルポ 大学崩壊 (ちくま新書 1708)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480075390

作品紹介・あらすじ

教職員に罵声を浴びせて退職強要。寮に住む学生45人を提訴。突然の総長解任。パワハラ捏造。全国の大学で起きた信じ難い事件を取材し、大学崩壊の背景を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 今の大学、授業風景はどんな感じだろうか。
    崩壊という程、酷いのだろうか。大学の同窓会誌や会報を見る限り、そこに写るキャンパスライフは全く崩壊しているように見えない。本書を読むと破滅的な感じにも見えるが、一部の事象では無いのだろうか。バランスよく見る必要がある。

    しかし、共通するのは2004年の大学法人化。これが、失敗だったと大学関係者の多くが語る。法人化によって表向きは国による予算や組織等の規制は大幅に縮小され、大学の自律的な運営が確保されることが謳われたが、実際に行われたの予算の削減。

    2022年国際卓越研究大学法も評判が良くない。日本の研究力を強化し稼げる大学と言う触れ込みで、政府が創設した10兆円規模の大学ファンドの運用益によって支援する。政治家や経済界の主導で、大学の私物化や、大学での軍事研究が加速する可能性もあると。

    札幌国際大学の問題の背景には、2008年発表した留学生30万人計画がある。留学生を受け入れることで補助金が入ることから、不適切入試が行われた。

    若干偏っている気もするが。国の制度が振り回しているようにも思える。退職強要研修を行ったブレインアカデミーというのも初めて聞いた。一部かも知れないが、確かに異常事態は起こっているようだ。

  • 国立大学法人化から約20年。特に第二次安倍政権以降の10年で、政治と経済界の思惑通りに大学がどのように改革されていったか(壊れていったか)。何が起きているのか。実際に起きたいくつかの象徴的な事例を取り上げながら現在進行形で進む大学崩壊の現場のルポタージュ。
    ここで取り上げられている事例や、国立大学法人法等の改正などは大学関係者じゃないと良く分からないし、一般の大学教員などでも良く知らない人も多いと思う。本書では象徴的な事例や法改正、政治の動きが関連して紹介されていて、さらに最後の「おわりに」ではそれらを簡潔にまとめてくれているので、現在までの流れと現状を俯瞰して整理するのに役立つと思われる。
    学長による独裁体制、文科省職員の出向と天下り、私物化、ハラスメントの横行、雇用破壊の進行などなどの諸問題は、まさにそれを目指す人びとによって引き起こされていると言っても過言ではないのかもしれない。抵抗しても仕方がないと諦め受け入れる人々と、最初からその状況しか知らないう若手が増加していく現場で何をすべきか。本書のような情報源を手に取って状況を知ることがまずは大事だろう。

  • 様々な大学の不祥事が列挙されているが、その背景にあるのが法改正による政財界や大学経営者の権力強化であるとしている。今大学で何か起きているのかを知るにはよくまとまっていて有益である。
    確かに昔に比べると大学には自由はなくなったようにも思えるが、他方教員と学生との関係はフラットにはなりつつあるようには思える。問題は、その上の政財界や経営サイドからの締め付けが、教員や学生への圧力となっているということだろう。ただし、訴訟が頻発しているというのは、問題が表面化しているということでもあるので、これはこれで「正常化」とも言えるのかもしれない。良くも悪くも、大学も一般企業化してきたということなんだと思う。
    大学には膨大な税金が使われているにも拘らず、自分や子供が卒業してしまえば関係はなくなるので、社会的な関心が低くなりがちではあるが、国全体の課題として国民がもっと関心を持つべき問題である。

  • 旧態依然たる大学は改革が必要!という思いと、

    そうはいっても最近の大学は学生にいろいろな試みをしている!という思いと、

    両方を持ちながらこの新書を読む。

    「利益が出る大学」を目指せと、大学改革を推奨し、学校経営に首を突っ込む国、

    地方自治体。

    それはそれで双方言い分もあろう、が、、、

    読むにつれ、反吐が出てきた。

    中には真に大学を変え、世の中の役に立つ人材を輩出させたい、という思いの人も

    いるかもしれないが、このルポに出てくる学校トップはクズばかり。

    民間人なら私腹を肥やすため、首長や官僚なら、天下りをするため。

    結局私腹を肥やすためだ。せこいクズばかり。それをいかにも合法的にやる。

    大義名分を勝手に作って。あるいは捏造して。あの京都大学ですら。



    ・・・官僚の天下りポスト作り。

    これが今の日本の諸悪の根源になっている、という思いが高まっている。

    日本の財政破綻だって、1000兆の赤字というけれど、財団法人やらなにやらに

    資産はどんどん流れている。

    オリンピックやら万博やらカジノやら明治神宮再開発やら、

    日本を壊す新しい事業を起こし、法人を作り、そのポストに官僚OBが天下っている。そして高給を食み個室をあてがわれ、、、

    それが至る所に出てきている。



    都市部受験勉強偏差値エリート官僚は、せこくてずるい。

    自分のことしか考えない。

    地方でもまれ地頭で東大に入って官僚になるような輩はもういないのか。



    本来そういう馬鹿を止めるのが政治家の役目だが、

    世襲のボンボンたちはそんなことはどうでもいい。というか考えられない。

    神輿に担がれれば気持ちいい。

    彼らの多くも選挙区は地方だが、出身は都内中高一貫エリート校だったりする。

    今の、そして前の前の首相みたいに超一流大には入れない世襲もいるが。



    こうして日本はどんどん衰退していく、、、

    何も知らんサラリーマン、特に若者は、わずかな給料から税金、社会保険料を

    吸い上げられる。消費税をとられる。国は赤字だから我慢せいと。



    それでも黙っている一般市民ではいけない。



    大学崩壊も根っこは一緒だ。

  • 大学はここ10年で壊れてしまったと嘆く声が聞こえる。耳を疑うような事件の頻発、一部の人間による「独裁化」と「私物化」。大学だけでなく、世の中の仕組みそのものの限界を感じる。

  • 怖いもの見たさで出版前から楽しみにしていたのだが、某先生から大した内容ではないと聞かされたことでバイアスがかかったのかなるほどとそんな気もしてしまった。ここ数年起きた様々な事例がまとまっているのは評価できるが、取り上げられているのが少し偏っているのかなという印象が否めない。このあたりは、大学関係者とそうでない人とでは大きく評価が分かれるのではとも思う。著者の「正義」が見え隠れして、なんとなくネット警察みたいなことが感じられるところも少し目につく。
    いずれにいしても、某先生の影響が評価に及んでしまった(大した内容ではないと聞かされなかったら私自身の評価が異なるものだったかも知れない)ことが良かったのか、悪かったのかは微妙である。

  • 【書誌情報】
    『ルポ 大学崩壊』
    著者:田中 圭太郎
    シリーズ:ちくま新書
    定価:990円(税込)
    Cコード:0237
    整理番号:1708
    刊行日:2023/02/07
    判型:新書判
    ページ数:288
    ISBN:978-4-480-07539-0
    JANコード:9784480075390

     教職員に罵声を浴びせて退職強要。寮に住む学生ら四五人を提訴。突然の総長解任。パワハラの捏造。ここ一〇年ほど、日本全国の大学で、耳を疑うような事件が頻発している。こうした事件の取材を始めた著者のもとには、全国の大学教員や学生から、悲鳴にも似た訴えが続々と寄せられるようになった。二〇〇〇年代以降に行われた国立大学の法人化や国の法改正により、政財界や大学経営者の権力が強化され、教職員や学生の立場は弱くなり続けている。疲弊する現場の声を集め、大学崩壊の背景を探る。
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480075390/

  • 高橋新書ガイドから。話し合いで聞く耳を持たれなかったり、そもそも話し合いすら行われないとなると、最終的には法的手段に頼らざるを得ない状況にもなり、本作で挙げられる案件でも、訴訟に至った例が多い。でもその案件は、構造的に、どうしてもスラップ訴訟の様相を呈するものが大半となる。すなわち、雇う側と雇われる側、大きな大学組織とちっぽけな個人、みたいな風に。でも、皆が皆、声を上げる機会を持てる訳もなく、その理不尽に耐えられる訳もない。きっと本書は氷山の一角で、あちこちで崩壊が進行している。とはいえ、範となるべき国が今の体たらくでは、崩壊を食い止めるのも大変な難事業であろうことは想像に難くなく…。さて。

  • 第1章 破壊される国公立大学
    第2章 私物化される私立大学
    第3章 ハラスメントが止まらない
    第4章 大学は雇用破壊の最先端
    第5章 大学に巣食う天下り

  • さすがに閉鎖社会。凄すぎる。

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著者プロフィール

田中 圭太郎(たなか・けいたろう):1973年生まれ、大分県出身。ジャーナリスト、ライター。1997年、早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年からフリーランスとして独立。雑誌やWebメディアで大学の雇用崩壊、ガバナンス問題、アカハラ・パワハラなどの原稿を多数執筆する。著書に『パラリンピックと日本――知られざる60年史』(集英社)がある。

「2023年 『ルポ 大学崩壊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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