東京の空間人類学 (ちくま学芸文庫 シ 2-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480080257

感想・レビュー・書評

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  • 東京という都市の空間・街並み・建物を読み解くために、その地形や江戸のまちづくりを丁寧に掘り下げて分析・考察した読み応えのある本。江戸という都市が原型となり明治から現代にいたる東京の空間形成を解き明かしている。街歩きや東京の案内に興味深い視点を与えてくれる一冊。

  • 東京の各地で再開発が行われていたり、計画中のところもあり、景色が変わっていく。




    古本まつりで偶然見つけて買った今回の本は、1985年に発行されたものだが、2023年に読んでも面白い。




    東京のベースは、江戸時代に作られたと言ってもいい。



    著者は次のように表現している。




    まず、初期の江戸は、城下町の明快な理念に基づき、〈計画された空間〉としての為政者の意図通りに形成された。だが、明暦大火後、とりわけ中期以降の江戸は、城下町としての枠組みを超え、豊かな自然をとりこんで周辺部に大きく発展し、山の手では「田園都市」(川添登『東京の原風景』NHKブックス)、下町では「水の都」という、いずれも〈生きられた空間〉としての都市の魅力を大いに高めたのである。




    明治以降、西欧を見本にしたが、江戸時代の枠を活用しながら、建物も西洋風でありながらどこか日本風という個性的なものができた。




    所々に古い地図や写真を引用している。




    浅草、東京、新橋、渋谷、新宿、池袋と浮かぶだけで、様々な顔を持つ東京。




    読んでいくといろいろなことが頭の中をよぎる。

  • 水の都=東京という視点は今日の歴史本では決して珍しくはない。だが、それを高度成長後にいち早く、かつ実証的に打ち出した本ということなのかな、と思った。革新的な議論が普及して、いつの間にか通説化したということなのだろうか。当時の読者がどのように受け止めたのかも知りたく思った。

  • 江戸から続く東京、という見方で空間の使われ方の特徴の変遷を見て、そこから時代の要請や生活習慣の変化に紐づけて「今のまちはこうやってできてきた」と都市の地層を探っていくような一冊。今見えている東京に奥行きが足されるような一冊で読んでいておもしろかったです。東京に住んでいて、知っている場所が多々出てくるからこそ楽しめるようなところはある内容でしたが、ヨーロッパの都市とのつくりの違いとか「そういうことか」と思うようなことがいくつもありました。東京が独特な都市だということがよくわかった、勉強になる一冊でした。

  • 大正・昭和初期のモダニズムが東京の都市整備の頂点だった、江戸時代初期の町づくりが東京の基底になっている、江戸は水運の町だった、という著者のポイントがよくわかる。
    違う論文を1冊にしているせいもあるが、もう少し簡潔に書けたのでないかとは思う。

  • 東京という世界有数の大都市の街並みがどのように形成されたのか、江戸の時代から順を追って、各時代での影響、周囲の環境への考慮の仕方などの変遷も交え、西欧の都市との違いを際立せつつ解説してくれます。自然と調和して生活を営んできたと言われる日本人ですが、都市化というプロセスにおいても、その片鱗が窺えるというのが新鮮でした。

    1985年に出版された本ですが、現代でも東京に対して、本書のような見方は少数派ではないと思います。
    「水の都」としての一面や、モダニズムの影響などにピックアップしています。

    区画の分け方の話や、景観を考慮した街路の形の話など、マニアックな話もありましたが、おもしろかったです。ただところどころ、近世の東京を表現するには似つかない横文字を混ぜてきたのが、よくわかりませんでしたが。モダニズムの話なんかを読んでも、この時代の、今とは異なる考えが表れているのかもしれません。

  •  東北新幹線の行き帰りで読了。

     陣内先生の東京ものは2冊目だが、今回の本は、山の手、そして水からの視点など、さらに進展している。

     いろいろ、手厳しいことを言っているが、それでも、まだ、東京は捨てたものではない、という陣内先生の姿勢が大事だと思う。

     高層ビルができて、昔の情緒がなくなった、とか言っても始まらないので、今の現状で、どういういいところがあるのか、大事な雰囲気がどこに残っているのか、をよく考えて、今後の都市計画に反映させていく必要がある。

     気にいったフレーズ

    (1)適度に狭くて視界がさえぎられ、その中に混沌とした人間の情感を流し込むことのできる猥雑で賑やかな町の空間こそ、日本の都市で、唯一生命感の張った場を形作っているようにみえるのである。(p195)

    (2)(震災復興時の)橋梁と橋詰め広場は行政内で部局が異なっていたのにかかわらず、橋の高r欄と広場の手すりが同じ意匠で統一されているのが目をひく。(p262)

    (3)大正末期から昭和初期につくられたもののなかには、それ(コンテクスチュアリズム)を先取りしたかのように、立地条件を巧みに読み込んで設計され、見事な都市空間を生み出すのに貢献しているすぐれた建築が多いのである。(p269)

     復興まちづくの造成計画、建築計画でも、是非、立地条件にうまくあわせて、設計をしてほしい。その意味でも、マスターアーキテクトが必要だと思う。

     今、市町村はそんな余裕はないが、全体として景観設計、あるいは、関東大震災の小学校と公園のように、公民合築の効率的で小規模な建築設計など、配慮する仕組みが必要。

     そのために、復興まちづくり会社が貢献できないか?

  • 都市について考えるのが好き。

    おもしろい街と退屈な街。
    おもしろいとは、商業建築にあふれていることではなく、有機的であるということ。

  • 都市の表面だけを見るのではなく、そこに隠された真相を読み取っていく内容です。東京のことはあまり詳しくないけど、なかなかどうして面白いっす。物事の真実をつかむって重要なことですね。

  • 江戸と東京には深いつながりがある。そういわれてもピンと来ない人にはぜひ読んで頂きたい一冊。「見えがくれする都市」と共通した視点を持ち、東京という街の魅力を江戸との連続性から解明している。読み物としても非常におもしろく読みやすい本であり、江戸から東京までの変化を追体験するような課題がでた時には持ってこいである。読み終わったときにはなぜ今の東京ができあがったのか、かなりの部分まで納得がつくであろう。

著者プロフィール

陣内秀信(Hidenobu Jinnai)1947年福岡県生まれ。東京大学大学院工学係研究科博士課程修了。イタリア政府給費留学生としてヴェネツィア建築大学に留学、ユネスコのローマ・センターで研修。専門はイタリア建築史・都市史。現在、法政大学特任教授。著書に『イタリア海洋都市の精神』(講談社)、『ヴェネツィア―都市のコンテクストを読む』(鹿島出版会)、『都市のルネサンス〈増補新装判〉』(古小烏舎)ほか多数。主な受賞にサントリー学芸賞、地中海学会賞、イタリア共和国功労勲章(ウッフィチャーレ章)、ローマ大学名誉学士号、アマルフィ名誉市民、ANCSAアルガン賞ほか。

「2022年 『トスカーナ・オルチャ渓谷のテリトーリオ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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