空間の日本文化 (ちくま学芸文庫 ヘ 1-2)

  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480081230

感想・レビュー・書評

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  • 原著の初版は1984年だけど、いろいろ今のことと重なって興味深い。
    その一例。
    〈以下要約〉1970年の農業白書で灌漑施設を持たない市町村はわずか7パーセントに過ぎなかった。落差による自然灌流を主とした日本の農業水利は大規模な集団工事、厳格な社会組織が必要になる。この際、共同体が負う役割が他のアジア諸国に比べて格段に大きかった。他国ではこうした水利施設の開発や管理を日本よりも遙かに中央政府に依存してきたからである。
    長い年月をかけて積み重ねられた力関係は、もはや力関係としては認識されず、自然の一部となる。また、村は水利共同体そのものである。水がなければ、稲田には何の価値もない。こうした「水利組合」の内部では、それを構成する家々、ひいては個々人の完全な従属が強要された。こうした個人の否定、一つ上の細胞への完全な同一化が、日本の農業を発展させた。p226
    〈要約終わり〉
    このあたり、現代の「自己責任論」を照らして考えると興味深い。

    また、アナロジーが横滑りしてそのまま因果関係になってしまうってのにはなるほどと思った。日本語は非論理的とか未だに言われてたりするけど、これ、言語の問題っていうより、こういう「説明」を何となく受け入れてしまう我々のどちらかというと論理的というより呪術的な思考の習慣のせいじゃないかと思える。

  • 日本における空間の本質とは何なのか、ということを、なんと日本語と他言語(主にフランス語)の文法表現の違いという観点も踏まえて解釈している。これはまさに目からうろこ。日本人ではあたりまえの感覚であるから気が付かない、主体と客体と同質化とか、間のとり方とか、うちとそとの関係とか、確かに日本独自の文化であるという主張は説得力がある。

  • 社会学や都市工学だけでなく建築学から日本語学、心理学、農学までを用い日本の物理的、社会的空間を解き明かした書物。

    この本一冊読んだらかなりの日本通になれます。たとえ日本人であっても。

    だって

  • ★6つがあったら、も1つ、つけたいくらい面白かった。
    やっぱり、1つの物事を検証するのは、他を知った人が適任。
    でも、その対象が「文化」とかでっかくなっちゃうと、
    自分が属する文化以外を語れる程に知って理解することって困難だと思うのに
    この人、出来ちゃうんだね…。
    やっぱり、外からの視点って解り易い。本当に面白い。

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著者プロフィール

オギュスタン・ベルクAugustin Berque:フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)名誉教授。1942年モロッコ生まれ。1969年に初来日し、以降、北海道大学講師、宮城大学教授などを歴任し、通算数十年日本に滞在する。和辻哲郎の著作『風土』から大きな影響を受け、自然にも主体性があるという「自然の主体性論」を提唱。2018年コスモス国際賞授賞。

「2021年 『BIOCITY ビオシティ 88号 ガイアの危機と生命圏(BIO)デザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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