サマルカンド年代記: ルバイヤート秘本を求めて (ちくま学芸文庫 マ 18-2)

  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480086693

感想・レビュー・書評

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  • 手持ち単行本はリブロボート版で、その出版社はなくなりましたが、別の文庫に収録されててよかった。

    歴史や動乱に翻弄される、あるいは動乱を起こす側の人々の物語が、巻を措く能わずとなる勢いで語られます。 このおもしろさはどこかで味わったような、と思ったら塩野七生さんの地中海三部作ですね。 あの感じに似てます。しかも「ルパイヤート秘本を求めて」ですから、私がはまらないわけがない。 あるいは、アサシン教団の方に心惹かれる方もいると思います。

    ストーリーはもちろん、イスラムの文化が匂う語り言葉のかっこよさにも惹かれます。例えば
    ”ハイヤームは名を明かすのをためらい、口実を捜して空を仰いだ。うすい雲が三日月にかかったところだった。沈黙、そして深い息。思いにふけり、ひとつずつ星の名を挙げ、群衆から遠く離れているかのよう。一団は彼を取り巻いた。何本かの手が触れる。彼はわれに返った。
     「わたしはオマル。ニーシャープールのイブラーヒームの息子だ。では、そういうおまえは、いったいだれだ」”
     
     
    (ここからネタばれ)そうして翻弄されたあげく、痛ましいというほかないラストに至ります。 失われたものの大きさに胸が痛み、なんとか避けることはできなかったのかと本気で落ち込み、しばらくして、ああ、これは物語だったと思い出しました。 失われる以前に、"それ"はフィクションのはず。 なのに思い出してまた胸が痛む。 
    こんなに入れ込んだのはほんとに久し振りです。 しかも私の場合、喪失感の主因は人ではなくもうひとつの「もの」だ。

  • 『大西洋の底に一冊の本がある。その話をしよう』
    冒頭のこの一文で一気に引き込まれた。前半はオマル・ハイヤームの人生、後半はイランの民主化運動を中心に話が展開して、それぞれ趣が大きく異なる。史実と虚構を上手く取り混ぜていて、中東の歴史や政治に詳しくなくても面白く読めると思う。
    サマルカンド手稿本をめぐる話の割には手稿本そのものについてはあまり出てこないのが個人的にはちょっと残念。あと大好きなサマルカンドの街をもっと描写して欲しかった。全体的には満足。
    ちなみに私が持っているのはリブロポートのハードカバーだけど、もうこの出版社は存在しないことを最近知った…。

  • 十年以上ぶりの再読。「サマルカンド年代記 「ルバイヤート」秘本を求めて」というタイトルにある通り、前半は、11世紀ペルシア、オマル・ハイヤームを中心に、セルジュク朝の大宰相ニザーム=ル=ムルク、暗殺者教団をつくりあげたハサン=サッバーフが大きな役割を果たし。オマルと結婚した宮廷女官ジャハーンも生き生きと描かれ。しかし、その結末は…と。後半は19世紀末ペルシア。アメリカ人ルサージ・オマルが数奇な運命で、アフガーニー、シーリーン王女らの知己を得て、オマル・ハイヤーム自筆のルバイヤートを求めてペルシアへ。しかし、イラン立憲革命に身を投じることとなり…最後はシーリーンと自筆本とともにアメリカに渡ろうとするが、乗ってきたタイタニックは周知の最後を迎え、奇跡的に生き残った二人だが、その結末は…と。息をもつかせぬ展開、魅力的な人物たちに引き込まれ。そしてアフガーニーとイラン立憲革命についてはもう少し調べてみたい気持ちに。以下備忘録/どんな主義主張も、死と結びつけば正しくありません。/タブリーズは勝っていた タブリーズは死にかけていた/「夏と冬。あなたは遠ざかり、わたしに再会する。あなたは季節、歳月、あなたの人生、わたしの人生を、差しさわりもなく、自由に扱えると思っているのね。あなたはハイヤームから何も学ばなかったの?」

  • 歴史を学びながら、すごく面白いお話を読めて、とても充実した読後感です。

  • 予備知識がほぼ0だとちと重かったが面白い!!  一旦前半読んで力尽きたのは内緒←

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